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シュールなインテリアで暮らしにアクセントを

中沢あき2016.01.28

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日本は大寒波の到来で、どこも雪や記録的な寒さに襲われているとか…。ドイツも1月の半ば頃は寒波がやって来て、日中も零下になるような日が何日か続いていた。12月が気味の悪いくらいの暖冬だったことを思えば、やっといつもの冬が来たということで、皆どこかホッとしているような気さえする。雪や雨の寒い日に暖かい部屋でのんびりするのは至福の時だったりするわけで、大してインテリアに関心のない私でも明るい色の花を買ってきてみたりと、居心地のいい空間を心がけてみたりするわけだが、ちょうどこの時期、ここケルンでは国際家具見本市imm(アイ•エム•エム)が開催されるのに伴って、国内最大のインテリアデザインイベントPassagen(パサージェン)が開催されている。
immが各国の大手家具メーカーの展示が中心なのに対して、Passagenの参加者は若手や地元のデザイナーが中心で、見本市の商売気はほとんどなく、遊びが一杯で個性的な展示が多くて、どちらかといえばアートの展覧会に近い雰囲気。正直(これ売るの?)と思うような物も並べられていて、まあそこは若手や小規模のデザイナーならではの尖ったチャレンジが垣間見えると思えばよし。
デザインに疎い私でも見ているうちに、こんなアイディアがあるのねえ、とか、物ってこういう使い方があるのねえ、とか色々目を開かされることも多い。デザインセンターやデザインミュージアムといった場所からインテリア関連のお店やフリースペースまで、市内のあちこちに展覧会場はあるのだが、たまたまうちの近所がこのイベントのメッカとなる一帯で、散歩の楽しみにと出かけてみた。

最終日の夕方でしかも雨だというのに、なかなかの人出。デートがてらのカップルや小さい子連れの家族も居て、アットホームな雰囲気の中、斬新なデザインの椅子と共に写真作品がコラボ展示されていたり、こだわりのありそうなアンティークの家具のコレクションが並べられていたりと、そこまではインテリアショップでもよく見かけそうな展示だが、これぞ作り手のチャレンジ、と思えるような展示に出会えるのがこのPassagenの面白いところ。

とある展示品は、私が普段通う朝市場が立つ広場に実はあった。そういえば1週間前、広場の隅に常設の空き瓶収集コンテナの他に、広場のど真ん中に巨大なプリンカップを幾つも重ねたようなオブジェが突然登場して、何かと思えばこれもガラス瓶の収集コンテナと書いてあるので、なぜ2つもコンテナが?と不可解に思っていたら、これが実は展示物だった。10年程前まで使われていたタイプの収集コンテナを不思議な形に繋げ合わせ、真ん中は大人一人が腰を屈めて通れるくらいの通り穴が空いているという、つまりコンテナの役目+遊具にもなるよ、という提案だったらしい。最終日にはちゃんと解体され始めていたのを見て、なぜかホッとした私…。

全体として印象に残ったのは、数年前から続くエコロジー志向。リサイクルをテーマにした展示品が増えてきているようだが、今年は単なるRe-cycleではなくて、Up-cycleというキーワードを見つけた。つまり、単に古くなったもの、使わない又は使えなくなったものを再生する、だけではなく、アップグレードする、という意味が込められていそうで、例えば、廃車から集められたシートベルトを編んでつくったソファのシートやカーペット。中古の家具を解体したものを素材とし、新しくソファや椅子などの家具を手作りするアイディアなど。
元が廃棄品や中古品とはいえ、出来上がるものは全くの新品同様、かつ色やデザインもなかなかシックで洒落ている。私が気に入ったのは、慈善団体に寄付された中古品のステンレスのカトラリーを集め、それを素材にまた別の新しいカトラリーを鋳造したカトラリーシリーズ。各種スプーンやフォーク、ナイフ、ケーキサーバーやおたまなども揃っているが、それぞれ黒、ホワイトにカーキのエナメルが塗ってあって、普通の形のカトラリーもそのエナメルの色でなかなか洒落て見える。
訊けば、耐高温ではないけれど、40度程の食洗機の熱くらいは問題ないとのこと。私たちも実際に使ってるし、と若いスタッフの女の子の笑顔に誘われて、一瞬、欲しいかも、と思った私。いやいや、でもうちの食卓には合わないし、必要ないし、と思い直してその場を去った。

そう、実は必要ないんだよね、私みたいにインテリアにあまり関心のない人には、としみじみ思いながら向かいの会場に入って出会ったのは、まさにユニークというか、衝撃の展示品だった12枚のお皿。オランダのデルフト陶器風の白地に青で絵が描かれたクラシックなスタイルの皿なのだが、よく見るとその絵柄はなんと、ドイツ国内に在る原発の風景画!のどかな風景の中に煙をなびかせてそびえ立つ原発が優しいタッチで描かれた皿のなんとシュールなこと…。12枚の皿の隣には、これら原発の分布図を示した地図が貼ってあってそのタイトルもAtomteller(原発の皿)。うーん、これを食卓に載せたいとは思わないが、単なるデザインを超えた風刺アートの域に入る面白さだ。ウェブサイト(www.atomteller.de)には実際にケーキを載せたり窓際に飾ったりしている写真があって、なるほど、生活の中に意外と馴染むもんなんだなあと。ただよくよく絵を見れば原発、という何とも言えない微かな不気味さも感じるのだけれども…。このお皿、ウェブサイトから購入出来るようですが、暮らしのアクセントにいかがですか?原発問題に揺れる日本のインテリアにも案外合うかも。


写真解説

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これがそのAtomteller(原発の皿)シリーズの一部。込められているテーマと美しくのどかな情景のコントラストはなかなかの凄みがあります。

© Jan Verbeek


nakazawa20160128-1.jpg
これはUp-cycleのカトラリーシリーズ。フックに掛けられる穴が空いていて、ちょっとアウトドアな雰囲気も。www.tubadesign.comにはオンラインショップも。

© Aki Nakazawa

 

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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