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Do it Your Selfの国その2〜粗大ゴミを捨てに行く

中沢あき2017.04.28

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 前回に引き続き、まだ引っ越し前の作業で大わらわの我が家である。今度の引っ越しは単にキッチンの造り付けだけじゃなくて、部屋の改造、つまりはリノベまで手を付けてしまったので、エラいことになっている。こちらの家は台所が居間や客間ときっちり分けられて独立している間取りが多いのだが、それが気に入らなくて、じゃ、壁取っ払おうよという私の提案でプロの友人が壁を見事に壊してくれたのはいいが、当然ここで壊した壁材、すなわち瓦礫の山ができ上がる。赤やブルーの華やかな花柄の壁紙も、残念ながら我が家の趣味ではなかったので剥がしたら、そこから大量の壁紙の山ができあがった。そして剥がした床のラミナート材も積み上げられ、と、新居どころか埃まみれの廃墟になった引っ越し先…。本当にここに数週間後に住めるんだろうか、といささか不安になるが、慣れている友人はケロリと、じゃ、ゴミを片づけなきゃね、コンテナ注文する?それとも自分たちで運ぶ?と訊いてきた。普通ゴミ扱いの壁紙以外は指定ゴミなので、廃棄場まで運んでくれるコンテナ業者を注文するか、または自分で捨てに行くかだという。自分で捨てに行くだと??
 不要になった家具だとか電化製品などの粗大ゴミは、市指定の収集会社に予約をし、指定された回収日に家の前に出すのは知っていた。そしてこういう建設廃材が盛られたコンテナが通りにどーんと置いてあるのも見たことはあるので、注文を受ける業者がいるのもわかる。が、自分で運んで捨てに行ってもいいというのは初めて知った。大量に出た壁のコンクリ片やレンガは、業者に電話で注文してコンテナで運んでもらうことにした。約1立方メートルのサイズで1万円程。1週間内に連絡してまた引き取りに来てもらうのだが、今回はすぐに一杯になったので、2日後に引き取ってもらった。残りのレンガや砂やラミナート材はどうするか。これは夫のワゴン車でも何回かに分けて運べそうな量なので、自分たちで捨てに行くことになった。バケツやゴミ袋に一杯になった廃材を車の後部に一杯に詰め込むと、車内に埃がもうもうと立ちこめたが、自分たちも既に埃だらけなのでもうお構いなし。重さできしむ車に乗って、郊外の廃棄場へと出発!
 この廃棄場、壊れた電化製品を夫が捨てに行った話は以前聞いていたのでその存在は知っていたが、まさか建設廃材まで自分たちで捨てることができるとは思わなかった。車を走らせること15分弱で着いたその郊外の廃棄場。誘導サインに沿ってゆっくりと車を進めて入っていくと、そこは数十台分くらいの広さの駐車場のような場所で、ゴミの区分ごとに番号が振られ、その各番号の標識の下に数台ずつ駐車スペースがある。そしてそのスペースの先に、策越しにゴミを放り込めるコンテナがあり、いかにも恐ろしげな刃の付いた巨大なローラーがゴミを押しつぶしている。そこに車を停めて降り立つ人たちの中には、仕事帰りのジャケット姿の人もいる。おそらく友人同士や夫婦や親子など、普段着の人たちが、バリバリと音を立ててゴミを潰していくローラーに向かって、後部座席から下ろした椅子やら木材やら大きなぬいぐるみやら皮の鞄やら、とにかくいろいろなゴミを次々に自ら放り込んでいくその様子に圧倒されて一瞬たじろいだが、いやいや、我が家も捨てなければならないものがたくさんあるんだった。  さっそく車を停めて後部座席から廃材を引きずり出し、コンテナめがけて放り込むと、ローラーがすさまじい音を立ててそれを潰す。ちょっとした全身運動になるこのゴミの放り投げ、これがなかなか爽快で、けっこういいストレス解消になるかも。調子に乗って、ほいさほいさと廃材を投げ込んでいく。オレンジ色の作業服を着た係員も歩いているが、彼等は捨て方の安全性とかゴミの区分が正しいかを確認しているだけで、私たちを手伝うことはない。ラミナート材は粗大ゴミとして捨てることができたが、コンクリ片は料金を払って別のコーナーに捨てろというので、今度は車をそちらまで移動させると、係員がやってきて、目視で大雑把にゴミの量を見てから料金額を言ってくる。  この量だと16ユーロだね。えっ、電話で問い合わせたときは、バケツ8個までは8ユーロって聞きましたけど、これ8〜9個くらいの量ですよ、と夫が食い下がると、うーん、ギリギリのところだけど、じゃ、8ユーロでいいよ、とのこと。このユルさ、さすが交渉文化の国である…。ちなみにドイツのゴミの捨て方も日本と同じく各自治体によって違うのだそうで、ケルン市は一部を除いて無料でゴミを捨てることができるため、こっそり他の町から捨てにくる人もいるんだとか。どこで見分けるのかと聞くと、車のナンバーでケルン市以外の登録になっているものは追い返すんだよ、と係員のおじさん。
 我が家のゴミを捨て終わって周りをあらためて見回すと、ゴミの区分は他にもあることに気がついた。いわゆる粗大ゴミの他、グリーンごみ、とあるのは、例えば庭木などを剪定した後に出る草木のゴミ。電化製品のコーナーや、古着のコーナーもある。これらのゴミはどうなるのか?その場の係員曰く、どのゴミも可能な限りはリサイクルされるのだそうだ。例えば建設廃材のコンクリ片などは道路建設に、電化製品は解体されてリサイクル可能な金属部分などと可燃物、不燃物と分けられる。その他のゴミも可能な限りはリサイクル、可燃、不燃と分けられる。ふーん、うちの壁が公共道路になったりするのか。
 皆、いろいろな物を放り投げてはさっさと帰っていき、するとまた新しい車が入ってきて、とその流れが途切れることがない。レンタカーで来る人たちも結構いて、きっと引っ越しやら何やらの事情で捨てる物がごっそり出てきたんだろう。断捨離した不要物を自分たちで運び出して片づける、最後まで自分たちの手で始末をつける様子は、ゴミの収集は全てやってもらえるもの、と思っていた私の目には新鮮だった。
 さて帰り際、ゴミもたっぷり捨てたし、さっぱりした気分でさあ帰ろうか、と振り返って気がついた。茂みに隠れてあまり見えなかったのだが、実はその向こう、道路を一本越えた先にはIKEAや家具のディスカウントセンターが並ぶ一角があるのだ。粗大ゴミの廃棄場の向かいで安い家具がどんどん売られているって、なんかものすごいコントラストというか、皮肉や矛盾も入り混じる、ちょっぴり複雑な気持ちになって苦笑いしてしまったのだった。
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© Aki Nakazawa
ここがその廃棄場。この世の果て、のような寂寥感たっぷりの場所を想像していましたが、ジョークたっぷり気さくな係員に普段着の人たちと、なんだかフレンドリーな雰囲気さえ感じてしまいます。
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© Aki Nakazawa
運んできたゴミを下ろして選り分け、
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© Aki Nakazawa
捨てる!
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© Aki Nakazawa
どんどん捨てる!
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© Aki Nakazawa
ここはグリーンゴミのコーナー。庭の手入れなどで出たゴミでしょうか。
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© Aki Nakazawa
ゴミを捨て、また新しい物を買う。向かいの家具のディスカウントセンターといい、いかに自分が大量消費社会の中に生きているかを感じたひとときでした。
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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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