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色彩あふれる夏のお祭り

中沢あき2017.07.24

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 夏も真っ盛り。北国とはいえ、日も伸びて明るく気温も高い日々が続けば、気分は上がるというもの。となったら、祭りだ!となるのは世界どこも共通のようで、ドイツも夏は祭りの季節です。音楽フェスみたいな大きなイベントも多いけど、いわゆる町内のお祭りというのもある。
 ストリートフェスというと、日本では市や地区が主催するなかなか大掛かりなイベントになるが、それに比べるとドイツのストリートフェス、ドイツ語でストラッセンフェストと呼ばれるこのイベントは、もっとローカルで自主的なお祭りがほとんどだ。
 その名の通り、町のあちこちの通りで代わる代わる7月〜8月の週末にこのストラッセンフェストが行われ、親子連れが多いファミリー向けのものから、若者向けにコンサートやクラブイベント、お洒落なフードトラックが並んだりするトレンド感満載のものなど、その様子も各通りで少しずつ違うのは、おそらくその通りや近辺に住んでいる人たちのライフスタイルや思想も影響しているからだろう。

 7月半ばの週末に行われた近所のストラッセンフェストはその中でも際立って人気があるお祭り。集まる年齢層は子供から中高年までと幅広く、近隣の住民だけじゃなくて、なんでも市外や州外からもはるばる来る人もいるんだとか。
 そもそもこの通りにはアーティストやデザイナーたちがアトリエや住居を構えていることもあり、普段からクリエイティブかつインディペンデントな雰囲気がただよい、お洒落な雑貨店やカフェなどもポツポツと並ぶ一方で移民や難民を支援する団体の事務所があることもあって、アフリカやアラブ系を始めとした外国人の姿も常にある、マルチカルチャーの雰囲気も加わる。そんなこともあってこの十数年で若者憧れのお洒落地区として注目を集めるようになったこの通り、週末にはカメラを提げた人たちまで訪れるようになるという人気スポットになり、私は密かに「ケルンの代官山」と呼んでいる。

 そんな所で1998年に始まったこのお祭りは、まさにそのクリエイティビティ、マルチカルチャーそしてサスティナビリティやヒッピー精神に溢れるもので、とある新聞記事いわくストラッセンフェストのお手本、だとか。異なる文化を繋ぎ、体験できる場、ということらしい。運営はこの通りの自主団体が手がけ、屋台を出したい希望者は最初の会合で簡単なプランを出し、出展料15ユーロを払う。運営費は例えば交通止めをする申請だとか、ゴミの片付けだとか、諸々の名目に使われるそうだが、他の大掛かりなイベントでの出展料が100ユーロを超えることを思えば激安。つまり、営利目的ではないってことだ。

 今年のフェスはどんな感じだろ、と足を踏み入れれば、まだ始まって2時間程なのに例年通りの人混みっぷり。一方通行の狭い道の両脇にはいろんな屋台が並ぶ。お祭りの屋台といえば日本なら金魚すくいや射的、そして綿アメとかたこ焼きの屋台なんかが並ぶところだが、ドイツの屋台の定番はワッフルやソーセージやポテトパンケーキ、そして射的はドイツでもお馴染みだけども、天然石のアクセサリーとか革製品の店だとか、あまり真冬のクリスマスマーケットと変わらなくて季節感がない…。
 でもここのストラッセンフェストのものは屋台といってもひと味違う。人混みをかき分けて進んでいけば、そこに並ぶ屋台のまあ多彩さなこと。屋台といってもテーブルを並べ、手書きの看板や値札や紙細工で飾られた簡単なものばかりだが、マフィンやパウンドケーキが並ぶテーブル、キッシュなどの食事ものやアイスクリームやスムージー、カクテルの屋台なんかもあって、皆それぞれ工夫を凝らした変わりものフレーバーの名前が並ぶ。その間に中東風のサラダや焼き菓子を並べるスカーフを被った女性たちもいれば、アフリカンの衣装でスパイシーな揚げ物などを並べる屋台もあり、そして今年は友人が日本のたい焼き屋台を出していたりと、エキゾチックこのうえないバラエティで、訪れる人たちは皆、新しい体験とばかりにあちこちで買い食いして楽しそうだ。

 たいていの出展者はその屋台の後ろのアパートの住民やその友人などで、家の前にテーブルを出し、家のキッチンで作ってきたものを出しているのでそのどれもがホームメイドだ。
 ドイツではお馴染みフリーマーケットもガレージや中庭といったスペースに開催。がたいのいい黒人のお兄さんたちが通りがかった子供たちを引き入れてアクロバティックなダンスを一緒に踊っていたり、ロマンティックな花輪を作るワークショップなんていうのもある。タイムテーブルに沿って代わる代わるDJやらバンド演奏があったりとか、全長500m程度の小さな通りにイッツ•ア•スモール•ワールドが現れたみたい。この通り、基本的にはアパートが並ぶ住宅街で、商店街ではない。だから各屋台の周りでは、家から持ち出した椅子やソファでそのアパートの住民やらその友達やらがまったりとくつろいでいたりするのだが、とあるラップデュオのスタンドライブの真上ではなんと、カクテル片手に窓に腰掛けてライブを楽しんでいる女の子たちがいて、なんだか不思議な様相だった。

 たった1日とはいえ、これだけの大騒ぎが朝から晩まで続くことも全ての住民に許容されているわけで、そのコミュニティの強さも知られているこの通りのフェス。日本のストリートフェスや縁日が大きな団体やプロに運営されているのとは違って、まさに地域のイベントなのだ。

 通りの両脇の家の窓から窓へ渡されたロープに下げられた色とりどりの旗が風にはためいて光るのを、熱々のたい焼きをほおばっていたおじさんが、いい飾りだねえ、と笑う。いつもにもましてこの通りがカラフルに見えるのは、フェスの飾り付けのせいだけじゃない。そこに集まる人の肌や髪の色から服の色、食べ物の色、そこに集まる全ての様々な色が表わしているのはまさに、世代を超えて、人種を超えて、いろんな文化が混ざり合っているそのシチュエーションだ。
 カラフルなドイツを、というスローガンで異文化共生を目指すこの国の社会の、まさに「お手本」になるようなイベントなのだ。そしてそんな場所が、若者の憧れになっているということもまた、嬉しいことだなと思えるのだった。

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© Aki Nakazawa
色とりどりの可憐な花を編んで作った花輪は、子供にも大人にも人気。5ユーロからの寄付金で参加できます。

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© Aki Nakazawa
マックス君のマテ茶、という看板を掲げるのはこの日だけのマテ茶屋?さん。普通の住宅の1階の台所の窓を開けて台を取り付ければ、販売スタンドに早変わりです。

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© Aki Nakazawa
自分の家の玄関先でラップのライブが始まれば、家の窓は特等席。

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© Aki Nakazawa
家の中からソファや椅子を持ち出して、皆でパーティーをしているようなお祭り。誰が住民で誰が客なのか、もはやわかりません!

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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