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捨ててゆく私 VOL.05 仲良くなりたい男たち

茶屋ひろし2006.12.27

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ある日、私のバイトしているビデオ屋に、しょぼくれた身なりのおっさんが、酔っ払って入ってきました。午後ですよ、午後。いままでずっと飲んでいたのかしら。しかも平日。
そしたらとつぜん大きな声で、
「ボクはノンケなんですけどぉ、この辺でボクみたいなものが楽しめる、おかまバーはありますかー?」
と聞いてきました。

ボクみたいなもの、って何?
わたしたち、今、初めて出会ったのよ。
あと、オカマじゃない人が、「おかま」って言うと、やっぱりムカつく。
「ノンケですけど・・」って前置きもヘン。
やだ、この人の台詞、ぜんぶおかしいじゃない。
「ありません」
そっけなく答えました。
(ほんとは「知りません」が妥当)
こういうときは、私もつい語気と態度が荒くなるので、こういう見た目のおっさんは、それだけで振り払えます。
おっさんはうなだれて出て行きました。

でも先日来たノンケの男子たちは。
推測するに、あれは現役大学生とその0B。たったの3人だったけれど、みんな体が縦にも横にも大きい。ラグビー部か柔道部だと思いました。夜のゴールデンタイムにヤツラはやってきました。
私の働いている店は入り口も店内も狭いウナギの寝床です。私はいつも入り口のそばにあるレジカウンターの中にいます。ちょうど店内もお客さんでごった返していて、ヤツラは体もでかいし入り口狭いしで、私のいるカウンターの前から奥に進めなかったのでした。
すると、先陣切って入ってきたOBが、後ろの後輩2人に向かって、店内を親指で差して、私の目の前で、にやにやしながら、まわりに聞こえるような声で。
さて、なんと言ったでしょう。
わたくし、息が止まるかとおもいました。
「コイツらみんなホモ」
アンビリーバボー!
(でも確かに、それは、そう)
続けて私に向かって、
「おまえ、ホモ?」
ムカつくわねー、その笑顔。
おまえ、ってなによ!
(でも確かに、それも、そう)
気がつくと私は可愛く(主観)、「うん、ホモ」って答えていました。
すると気を良くした若いおっさんは、
「オレらの中で言ったら誰がモテる?」
と調子をこきました。
回答1、はあ? とシカト。
回答2、あら、それぞれみなさん、おモテになるわよ
回答3、よくわかりません。
回答4、・・
回答例が一気に出てきて困りました。でも怒らせたらやっかいだから、2か。
どんぴしゃり。その答えを聞くと、彼は満足気に出て行ってくれました。
私に残されたものは、怒りと恐怖と、あとは欲情。
ということは、最初のしょぼくれたおっさんには、発情しなかったから怒りだけだったのかしら・・。
「うん、ホモ」なんて、可愛く答えたのは防御だけでもなかったのね。ほんとは、ノンケ男子に好かれたくて、しょうがないんだわ。私は、ゲイをわざわざ見物しに来た彼らより、保守的なのかもしれません。

―― 今年は大好きなLOVE PIECE CLUB で書かせていただけることが決まって、とても幸せでした。北原みのりさんとスタッフの方々、そして読んでくださっている読者の方に、心より感謝しています。来年もどうぞよろしくお願いします。みなさま、良いお年を!

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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