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捨ててゆく私 VOL.016 酒好き

茶屋ひろし2007.03.15

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二丁目はお酒を飲む街です。初めて二丁目に遊びに来た人が、昼間ウロウロしている姿をたまに見かけます。
昼間はあまり遊ぶところがありません。私の働いているビデオ屋に顔を出して、「私はどうすればいいのでしょう」とたずねる人もいます。午後一時くらい。どうしましょう。私は「何がしたいですか」と聞いてみます。すると観光客は首をかしげます。

昼間は、ビデオ屋でビデオの陳列を眺めるか、ゲイ雑誌を立ち読みするか、通りや公園でナンパしたりされたりするか、ハッテン場へ行って暗闇の中でセックスをするか・・。

うーん、目を輝かせて遊びに来た観光客が求めているのは、この場合、「出会い」だろう、ナンパやエッチより、自分と同じゲイとお話をしたいのだろう(その発想もなんだかすごいけど)、でも平日の昼間に、もともと二丁目をウロウロしている男たちの目的はナンパとエッチだからなー。

フリーのコミュニティースペースもある。けどそこは夕方から。ゲイカフェもある。でも一人でコーヒーを飲みたいわけでもないだろうし。

けっきょく私は、「夜八時以降に、出直してみたらいかがでしょう」と薦めることになります。平日でも夜になると人が増えるから、にぎわうから・・。

でも彼がお酒をたしなまない人だったらどうするのだろう。とも思いますが、そこまで心配することもないかと思いなおします。

遅ればせながら私はお酒を喜んで飲む人です。酒場、大好きです。二丁目に来てから、飲みっぱなしで、ほんとうに楽しい(ってなぜか、強く思ってみる)。今年の初めに、急激にそのペースが過密になった時期がありました。自分でもおかしいと思うくらい、仕事が終わってから、二丁目の酒場を次々と巡っていたのです。本来は一晩一軒の人だったのに。しかも、深夜遅く家に帰ってきて、さらに一人で飲む。さすがに体調を崩し始めました。内臓が痛い。

さらに申し遅れましたが、私は今、スピリチュアルカウンセラーと一緒にビデオ屋で仕事をしています。そうです、エハラー、美輪様、オーラです。去年の秋くらいから、一緒にお店に入っている相方が、だんだんいろんなものが「見え」たり「聞こえ」たりし始めたのです。すごーい! 「オーラ」が身近に! 私の守護霊とも会話をしてくれて、その内容は、当たってるー! 言ってないのにー! みたいな、現在引き続き、そういう楽しい職場で私は働いています。

それでちょうど私がお酒漬けになっていた時、そのオーラちゃんが私の体を気遣って、レジカウンターの中で、さっそく霊視をしてくれました。無料です。というか仕事中です。そしたら、「茶屋ちゃんの中に、酒好きのオカマが二人、入ってるよ」と言われました。「えー、入ってる、のー!」私は驚きました。「あ、今僕が見ちゃったから、その二人が僕に攻撃してくる。余計なことを言うな! だって」オーラちゃんは笑いながら、なにかと応戦しています。どうしよう、私はどうしたらいいの? ていうか、追い出したい?

そう思った私は、以前テレビで悪い霊を追い払った美輪様の姿を思い出して、おへそに力を込めて目を閉じて「キエイッ!」と奇声を発してみました。するとどうでしょう。オーラちゃんは、「あ、今、びっくりしたみたいで、一人出た。わ、僕んとこに来た。追い払った。オー、もうあそこにいるよ」と店の出口を指差しました。「コッチ見てるよ」オーラちゃんは楽しそうです。私はまだビビっていて、「もう一人は? まだいる? もう一回したら出るかな。キエイッ!」とやってみました。オーラちゃんは手を叩きました。「すごーい! もういなくなったよ茶屋ちゃん。よかったねー。そして顔色がすごく良くなったね」

そうかしら、でもそう言われてみれば、靄がすーっと晴れたような。
オーラちゃんがそのあといろいろと解説をしてくれました。その二人の酒好きオカマたちは、私が飲み歩いている時に、私についてしまったのだそうです。一人はゲイバーをハシゴして陽気にお酒で騒ぎたいタイプ、もう一人は、家で一人愚痴をブツクサ言いながら晩酌するのが好きな人(生前?)、だったそうです。そのまま死んでしまった彼らは、今も二丁目をうろついて、お酒を飲むのが好きな人にとりついて、一緒に楽しもうとしているのだと。それは、霊というか魂? の状態ではお酒を飲むことが出来ないからだそうです。
「へーそんなのがいるんだー、この街には」
感心すると、オーラちゃんは、
「いるどころじゃないよ。もうウヨウヨ、いっぱいいるよ」
きゃー。
「それでその霊に気付かないままでいたら、どうなっていたの?」
「茶屋ちゃんは体を壊して死んでしまって、あっちの世界に連れて行かれるんだよ」
ひー。
「それはどんな世界なの?」
「永遠にお酒を飲み続けるだけの地獄だよー」
というか、きっと私は、連れて行かれる前に、むしろすすんでその道を選んでしまう方だわ。
そうして死後も二丁目に留まり、道行く男子を物色して、お酒を飲む人にとりつき、永遠に浮かばれないのね。
そんなのがいっぱいいる、って・・。
ということは、この街の昼間も、よく「見た」ら、相当にぎわっていたんだわ。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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