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捨ててゆく私 VOL.017 同性愛者として

茶屋ひろし2007.03.22

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もうすぐ統一地方選挙なんですね。先日、二丁目で選挙演説をしている人がいて、知りました。夜、お店に入っていたら、表から拡声器の声が聞こえてきました。「こんばんは、〇〇です」。やわらかい男の声。続けて、「私は同性愛者として・・」と聞こえてきました。

やだ、わたるちゃん? 慌てて表に出てみましたが、店の入り口からは姿を確認できませんでした。友達ではありません、すみません。飲み屋でいろいろと彼について聞きかじっていて、すっかりお友達気分なのです(きもちわるい)。そうでした、石坂わたるさんという、ゲイとして区政に挑戦する人がいるのです。

ビデオ屋の店内で耳をすませていましたが(一人なので離れられない)、演説の内容はよく聞こえませんでした。代わりに、「私は同性愛者として・・」という一言が頭の中でリフレイン。二丁目とはいえ、街頭演説で、こんな台詞を聞くことが出来るなんて。今、素敵なことが起きているんだわ、と思いました。

そういえば私が初めて、人からカミングアウトされたときも、使われた言葉は「同性愛者」でした。

「オレ、実は、同性愛者なんだ・・」

高校二年のときです。同じ学校の男子から告白されました。最近再会したので、そのときの話をしたら、「オレ、そんなふうに言ったっけ?」と、忘れてしまったみたいで照れていました。

「そうよ、あなた、同性愛者、って言ったのよ」と、なぜかもう一度念を押してみた私も、その頃は「ゲイ」という言葉を知らなかったような気がします。

私は、誰かに言う必要があるときは、「オカマです」と言います。でも、もうずいぶん、あえてそう言わなくても(言動があからさまに「オネエ」なので)、自然に人様に認知されてしまう生活を送ってきました。
それでも家族には、三年前、東京に出て来るときに、初めてちゃんと言いました。

「これから私はオカマの街で生きていくの」
ちゃんと、してないです。どうも私は、自分に対して、「ゲイ」や「同性愛者」という言葉を使うことが苦手です。
「それはオマエが、・・ということか?」
父も「・・」と、どの言葉も用いませんでした。そうそう! と私は明るく肯定してその場を流してしまいました。父を筆頭に、私の家の人たちはそれぞれにショックを受けていたようですが、現場では誰も取り乱しませんでした。

「同性愛者」という言葉の響きはとても重いです。けれど、どこからも崩しようのない確かな言葉のような気もします。「ゲイ」は業界用語みたいで、「ホモ」は人に対しても自分に対しても侮蔑語で、「オカマ」はからかいどころが満載、という気がします。でも私は、「同性愛者」という言葉の、崩せない感じがちょっと怖い。

こないだ友人のゲイが、「あいつはノンケぶっているから嫌い」と、共通の知人のゲイのことを言いました。
ノンケぶる・・、どういうことかしら。
ゲイだけどノンケ男子のような振る舞いをしていた方が二丁目ではモテるし(本当)、ノンケ社会でのクローゼットな日常へのシフトがラクだから・・オレ、ノンケぶってます!
というふうに使うのかしら。
ていうかそうなの? 私にはあのひと、ゲイにしか見えないけど・・まあいいか。

「そんな姑息なマネをしないで、どこでも堂々とゲイとして生きるべきだ」。友人は続けてそんなことを言いました。

その知人が、どこでも堂々としていなくてはいけない、ということもないだろうけど、あの素敵な街頭演説を思えば、まだまだこの社会では、「堂々と同性愛者として生きていく」という姿を見せる必要があるのかもしれません。でも誰に見せるか、が問題なのだと思いました。知人にもノンケぶる諸事情がいろいろあるでしょうし、身辺の関係をどうするかは、なにより個人の自由だもの。やはりそうしたプレゼンテーションは、するなら選挙のような場でする方が適しているんだわ。でも、「オカマ」以外の言葉を自分に使えない私は、やはり「オカマの東郷健」さまに一票を投じるのかしら。健さん・・今回も出馬されていない模様。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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