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捨ててゆく私 VOL.021 恋人はレズビアン

茶屋ひろし2007.04.26

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去年ウチのビデオ屋を辞めた子が二丁目に遊びに来たので、仕事終わりに一緒にご飯を食べに行きました。いま彼は、ホームセンターで働いています。なんとなく話が、職場でのカミングアウトについて、になったので、「どうなの? ホームセンターでは」と聞いてみました。すると、「自分がゲイだとは言ってないですけど、バレバレですね。職場の飲み会で、女の先輩に、おまえホモだろっ! って言われましたよ」と笑います。
「それでなんて返したの?」
「ちがいますよー、って濁しました」
「相手は納得したの?」
「しませんけど、そう言えば、相手もそれ以上言うこともないですから」
「そこで、いっそゲイだと言ってしまおう! とはならないの?」
「あのね、茶屋さん。ノンケ社会では、あえてはっきりさせないくらいの距離感を持っていたほうが、お互いうまく付き合っていけるんですよ」
 諭されてしまいました。

 そういえば私も今までノンケの職場でカミングアウトをしたことがありません。聞かれたら言おうかしら、と思っていたときもありましたが、誰にも聞かれなかったような気がします。

 今日は一緒にお店に入っている子が、通勤電車で聞いたサラリーマンたちの話をしてくれました。その、二十代から三十代の三人のサラリーマンたちの会話によると、どうやら彼らの会社で行われた入社式で、ゲイだとカミングアウトをした新入社員がいたのだそうです。新入社員がすべての社員の前で、ひとりずつ自己紹介と抱負を語るという場面。彼らはそのカミングアウトについて批判的でした。

「あの場でしなくていいと思うんすよ」
「場をぶち壊してまでする必要があったの?」
「ていうか、俺らに関係ないじゃん」
(それで、ぶち壊れたの?)という私の疑問はともかく、又聞きなので正確ではありませんが、サラリーマンたちはそういう会話をしていたそうです。バイトちゃんは彼らの話を聞きながら、彼らにとても共感したそうです。
「ぼくもその通りだと思うの! TPOを選ばないカミングアウトってほんと許せないよね!」
「許せないの? 私はいま、入社式でカミングアウトなんて面白いわ、と思ったけど」
「でもじっさい引いてしまってる人がいるんだよ! それは彼が自分のことしか考えていないってことじゃん。そういうのって、最低!」

 どこで腹を立てているのか、よくわかりません。
 でも、バイトちゃんがやけに怒っているので、なんだか怖くなってそれ以上話を広げることが出来なくなりました。
 そういえば私は、カミングアウトをしたことがないというより、「私はゲイです」とはっきり言えないのでした(ノンケでもないと思っているけど)。でもこういう曖昧な態度は、「私はゲイです」と、入社式までいかなくても親しい人たちにカミングアウトしているゲイの人からは嫌がられるんだろうな、と思います。
「バイセクシュアルなんて逃げよ! 男を好きか、女を好きかしかないんだもの!」
と言われたこともありました。私は自分がバイだとも言っていないけど、と思いつつ、お茶を濁してきました。それに、職場でノンケの人たちに「どうなの?」と聞かれたこともない。なにかがバレバレだったのか、それとも関心を持たれていなかったのかしら。

 ホームセンターの子や、サラリーマンの話に共感するバイトちゃんのように、私は社会での立ち居振る舞いというものを、いまだによくわかっていないのかもしれません。そして、社会で自分を振る舞うには、立ち居地がはっきりしていないことにはどうにもならないのかもしれません。

 先日ひさしぶりに出会った友達とゲイバーに飲みに行きました。彼女は最近、女性の恋人ができて楽しそう。そこはゲイバーなのに、なぜかその日はカウンターがビアンの人たちで埋まっていました。その友達も私と同じように、「私はレズビアンです」とは言わない人です。すぐに周りのビアンたちからツッコまれてしまいました。
「あなたは、レズビアンでしょう?」
彼女はこう答えました。
「私は、恋人がレズビアンです」
なんだよそれー! とブーイングの嵐の中、私は彼女に共感していました。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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