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捨ててゆく私 VOL.023 うらやましい世界

茶屋ひろし2007.05.11

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今日はひさしぶりにハンバーグ定食を食べました。頂き物です。二丁目の近所にある(らしい、行ったことない)老舗のレストランでテイクアウトしたものです。以前も同じ方から頂きました。散髪したばかりの髪型を、お若いですね、と褒めると、
「今年で八十になるんだよ」
と、照れたように言いました。毎週火曜日にビデオを買いに来てくれます。
「本当はオネエなんだけど、エッチのときはタチになるんだよ」
今日はそんなことも言っていました。

かなり昔から色男をやってきたと見えて、ナンパの仕方も手馴れたものでした。
強要しない、待つ、貢ぐ。
携帯番号を私に教えたあと、「夜、仕事終わったら電話ちょうだい。ウチに泊まりに来ればいいから」と言いました。
私から電話することはありませんでしたが、それに対して何を言うわけでもなく、毎週来て、ビデオを買ってくれました。
が、毎週食べ物をくれることは、さすがにひと月を過ぎるとなくなりました。

それがひさしぶりに・・。
「私とまたセックスをしたい気持ちになってきたのかしら」
相方のバイトちゃん(オーラが見えるオーラちゃん)に言うと、
「わ、最低。茶屋ちゃん、モノで気持ちを計るようになったらおしまいだよ」
と非難されました。
それはアッチでしょう、と憤慨してみましたが、オーラちゃんは高慢な私に釘を刺してくれただけかもしれません。
「それにしても、八十でセックスをしたいというのがスゴイねー」
とオーラちゃんの関心は別の方向へ行きました。
スゴイかもしれない。でもあのひと、自分の家に誘う際に「歳をとると一人の夜は長くて退屈でね」と言ったのよ。一人なのよ、八十歳。そこでエッチを選ぶことがなんだかスゴイ。誰かと生活を共にすることを選ばないで、基本的に一人で、時々誰かをナンパしてセックスをする生活を選んだのかしら。詳しくは知らないからわからないけれど、昔、結婚をしていて、もしかして妻と別れた(先立たれた)とか、あるいは子どもがいるかもしれない。結婚をしないでゲイ人生を貫いて来たとしても、パートナーと別れた(先立たれた)という可能性もある。それ以来、パートナーを見つけることをしていないだけかも。

想像が膨らみます。一度家に遊びに行って話を聞いてみたほうがいいかしら。そうするとセックス(どんな?)をすることになるかしら。

誰かとつきあう、というか、生活を共にしていくことと、セックスをすることが、どうセットになるのか私はいまだにわからないままでいます。春先に出会って二、三回セックスをした人と、この先もつきあっていくのかどうか、今がつきあっている状態になるのかどうかを決めないままでいるからかもしれません。

相手は私とセックスをしたい、私はそんなにしたいと思わない、場合。
「誰かとつきあう、というのは自分のことを知っていくということだからね」
とゲイバーのマスターは言います。
「セックス、ってお互いの違うオーラの色が溶け合うことなんだよ!」
とオーラちゃんは言います。
どちらも、なんだかこわい。
ということで、私は日々、スタッフのポチを触ることでいろんなことを誤魔化しているような気がします。それを見かねたスタッフのお姉さんに、
「それで茶屋ちゃんはポチをどうしたいの?」
と聞かれました。「ポチとつきあいたいわけではないんでしょう?」
はい。つきあう覚悟はないかも。セックスをしたいだけかもしれないけれど、そんな気持ちでオーラが溶け合うようなセックスになるかどうか・・(の前に、相手が私としたいと思うかどうか、だわ)。
「燃えるような、めくるめくような、セックスなんて、今までしたことがないわ」
とマスターは言いました。
一方的にファンタジーが強い場合、その強い方には有り得るかもしれませんが、いつだって二人の内どちらかは弱い(というか、強い相手に合わせている)という話。

二丁目をゆくゲイのカップルを見ていると、たまに、双子かしらと思うほどヴィジュアルのよく似た二人を見かけます。衣装も同じで、分裂したような。自分がもう一人いる感じかしら。それは同性どうしだから有り得るような気もします。でも私は、顔がそっくりになってしまった異性どうしの夫婦も知っています。それって、つきあう気持ちもセックスファンタジーも一致したからなのでしょうか。うらやましい世界です。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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