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捨ててゆく私 VOL.031 ケモノはひとつ

茶屋ひろし2007.07.26

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梅雨明けはまだのようですが、今日はカラリと晴れました。暑くなってくると二丁目にも肌を露出する人が目立ちます。日頃からジムで丹念に鍛え上げているらしい上半身を、白いタンクトップで見せつける人は、前ほど気にならなくなりました。そんなのより労働でついた筋肉のほうが好きとか、冬でもタンクトップって意味がわからないとか、思っていた時期もありましたが、三年も経つと日常の風景になってしまうようです。

それよりも今、気になるのは、五十代以上で普通体型のおじさまたちの見せ方です。まず服の年齢が若い。しかも80年代ふう。いや、そんなことじゃなくて・・。

カウンターで仕事をしていると、少しうつむいて作業をすることが多いので、入ってきたお客さんの姿は、顔よりも、まず腰から下が目に入ります(エロビデオ屋では、「いらっしゃいませー!」と元気よくお客を迎えてはいけません)。

今日は、半ケツが目に入りました。パンツが下がって上から見えているのではありません。ホットパンツというより、ジーンズを下からお尻の真ん中辺りまでカットしたパンツを穿いています。そう、白い少し垂れたお尻の下半分が目に飛び込んできたのです。すね毛は剃ってスニーカーを穿いています。上半身はピタっとした白いTシャツを着ていて・・、そして頭部は「課長」でした。バーコードの黒髪に太い黒ぶちメガネ。首から下がいつものスーツでも、きっと違和感はありません。

なんでしょう、このアンバランス。なんですか、そのパンツ。
前の方の切り込みはもっとすごくて、下に穿いている白いサポーターの膨らみが横から丸見えです。

隊長! このひと見せています! わざとです!
私はいっしゅん遠くを見て、心の中の隊長に報告しました。そして、サポーターでもなんでも下に何か穿いていてくれてよかった、と胸をなでおろしました。
ああ、どうか、彼が、それを見て私がいま欲情している、なんて思っていませんように!

おじさまたちのファッションは過激です。あと、毎回スパッツのような白いジーンズを穿いてきて股間とお尻を見せつける方や、すべてブランド服でキラキラしたものをいっぱいつけてくる方などがいますが、彼らも頭部は課長です。なぜですか。

でもその気持ちもわかるのです。女性志向の強いオカマちゃんは、まず、こんな感じになるのです。たぶん意識しているヴィジュアルは、年齢に関係なく「ぎゃる」と思われます。

昔の私は、そうでした。服はほとんどレディースを着ていました。私は痩せていますが骨格は男です。だからどう着ても体型とミスマッチなのに、喜んで着ていました。あの頃の自分の姿を思い出すと顔から火が出そうです。
今では男子がパンツをとことんずりさげて下着を見せること(ただ、シャツは丈の長いものを着るので、直立している状態では見えないようにしている)は普通になってきましたが、そのころの私はレディースの小さいシャツを着て股下の浅いパンツを穿いていたために、おへそと下着が見えていたという状態でした。下着はメンズで、特に見せようとは思っていませんでしたが、「ぎゃる」になっているつもりだったので、見えてもかまいませんでした(大きな勘違いです)。

当時働いていたノンケバーのマスターに、「俺はオトコの下着など見たくない!」とよく怒られていました。差別だわ! と女でもないのに憤慨していましたが、今から思えば、マスターはおしゃれな人だったので、「男の下着を見たくない」というより、全体的に不恰好だったから注意していたのではないか、と思います。

女装するなら女装する、です。体型に合わない服は、それ自体はどんなに可愛くても着た時点でダサくなります。と思います。東京に来てだんだん私はレディースを着なくなっていきました。モテないというのもあったけれど、これって変だわ、と思い始めたからです。先日ひさしぶりに再会した、私のおしゃれ番長(女ともだち)は、私の格好を見て、「東京の力ってすごいなー」と、一言つぶやきました。

彼女には昔から、いろいろと注意をされてきました。思い出すのは私が、レディース服に舞い上がっていたころ、全身ケモノで、夜遊びに行ったときでした。豹柄のパンツに蛇柄のシャツ、それに牛革のファーのついたジャケット、色はそれぞれシルバー、紫・・、でも頭部はメガネ男子。

彼女はもう、見るのも嫌だという感じで、「せめてケモノはひとつにしなさい」と言いました。私はその発言の意味がわかりませんでした。なんで好きなものばかりを着ているのに制限されるの? と思いました。

でも違いました。意味がわからなかったのは私の姿のほうだったのです。大阪のオバちゃんにもゴージャスな女装にもなっていない。

ところで夜の二丁目では、ノンケのおじさまも女装をして歩いています。先週は、全身ボンテージ、というか、黒いエナメルのロープで裸体を縛り上げてしまったような人を見ました。もちろんTバックで、半ケツどころではありません。乳首がロープの隙間から主張しています。顔には真っ白なメイクがほどこされ、黒髪のウィッグは魔女のように逆立っていました。

元・課長・・! いいえ、ケモノが一匹。もはやファッションの域を超えています。ぐうの音も出ませんでした。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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