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捨ててゆく私 Vol.53「アブノーマル」

茶屋ひろし2007.12.06

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松浦理英子さんの「犬身」という小説を読んでいたら、
ソファのうえで、二十代の青年が犬に手首を甘噛みさせながら恍惚としている。青年はズボンの下で性器を膨張させている。(*本文のままではありません)
というような場面がありました。
読んだとたん、私は恥ずかしさのあまり本を閉じてしまいました。
(これは私のことだ・・!)と思ったからです。(誰にも話したことがなかったのに、なぜバレたんだろう・・)と、ちょっと混乱しました。


そうです。私は小学生の頃から、犬に欲情してきたのです。小説の状況とは少し違って、甘噛みされたらそうなるわけではなく、犬がはしゃいで飛びついてくると勃起するのです(なんか、すみません・・)。でもこの小説の主人公のように、私は犬かもしれない、と思ったことはありません。

今まで犬を飼ったことはありませんが犬は好きで、小学生の頃から高校生くらいまで、犬を飼っている友達の家によく遊びに行っていました。そこの友達と遊ぶより、そこの犬に会うのが目的だったりするので、玄関のチャイムを鳴らして出て来た友達の顔を確認したら、そのあとは、玄関先で犬と戯れてそのまま散歩に連れ出して、一時間後くらいにようやく家にお邪魔するといった具合でした。
「犬身」では、主人公の女性が犬に触れて、あるいは好きな人に犬を可愛がるように触れられて、気持ちいいと感じることは性欲ではない、としているので、その場面以外で(って、それ以外が主流なのですが)、そんな私を小説に重ねることは大きな間違いになります。私の場合は、「あの感覚は性欲っぽいなー」と思うからです。

最近、ゲイの友達の飼っている犬になんどか会って、飛びつかれているうちにわかりましたが、その性欲は、だんだんなくなっていっているようです。そうすると、やはり私の場合は魂の半分が犬だったのではなく、犬を人の代わりにしていたのではなかったか、と思います。この小説の主人公には叱られてしまいそうな結論です。

今までそのことを誰にも言わなかったわけは、なんか恥ずかしいから、でしたが、いったん小説で自分に似た姿を読んでしまうと平気になったようで、翌日職場のオーラちゃんに話しました。オーラちゃんはそれなりに、ギョッとしてくれました。
そのあとは、「異常性愛」をテーマにその日の会話が流れていきました。

映画などで同性愛を取り扱うものの中には、同性愛を異常とみなして、他の異常とされるもの、獣姦、近親姦、小児性愛、スカトロ、SM・・などと並列にされることがよくあります。正常か、異常か、の判断をおいて、ひとつずつそう名づけられているものを見てみれば、一口で異常と決め付けて排除することができないくらい、様々な当事者の物語があるような気がします。

けれどオーラちゃんは、そこに同性愛が並べられることに異議を唱えます。それは、「同性愛は異常じゃない、他は異常だ」という感じなので、私はそれもどうかと思いますが、今挙げた幾つかの「異常性愛」は異性愛者を含み、「同性愛」に異性愛者は含まれないので、そう考えると、並列してしまうことには無理があるような気はします。

会話がややこしくなってきて、まあ、どうでもいいや、となった頃、ギャル男子が二人来店しました。おっさん系のビデオの前で、「見て見て、チョーきもーい!」と指をさして、はしゃいでいます。よくある光景なのですが、私はいつも心の中で、(なにをー!)と憤慨します。

おっさん系のビデオは、五十代以上の男性ばかりが出演しています。しかも見た目はハゲ、デブ、ブス、眼鏡。身内や会社などにいそうな、典型的な日本のおっさんたちがメインです。ジャケットで、彼らは本当に気持ちよさそうに絡み合っています。
三年前にゲイビデオ屋で働くことになった私は、初めてこのおっさんたちの絡みを見て衝撃を受けました。そして、この仕事はこのビデオを売ることだ、と腑に落ちたのです。これが、「同性愛」じゃなくて、なんでしょう。若くて可愛いとか、ガッチリしている肉体派、などのセックスは、この際どうでもよいのです。おっさんたちの絡みは、男同士のセックスが行き着く先を示しているように見えました。

はしゃいでいるギャル男たちも同性愛者ですが、おっさんたちの裸を見た目で気持ち悪いと言う彼らには、「異性愛者の視点」が入っているように思われます。なので、若いゲイ同士のセックスや、若いゲイとおっさんのセックスは、異性愛的なものを含む同性愛行為になる可能性があります。これでは、「異常性愛」の並びに「同性愛」が入ってしまってもおかしくありません。オーラちゃんがまた怒ってしまいます。

どうしたものか、とオーラちゃんを振り返りました。
するとオーラちゃんはギャル男たちを見つめながら、
「店内で、商品に対して大声で文句を言われるのって、営業妨害だよね」
と、ため息をつきました。
たしかに。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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