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私の両親は日本共産党を支持しています。これは父方の祖父が党員だった頃からの流れです。そのためか、党員はいませんが、父方の親戚筋はすべて支持者です。

結婚する前から母もすでに支持をしていたので、父方のすべてが支持者ということが、ふたりの結婚を阻害するものではありませんでした。

二丁目に来て、おもしろいことに、ぽつりぽつりと、親が共産党支持者だったひとに出会うことがあります。話をすると、どこか私の気分と共通していることが多くて、話していると、ホッとするようなため息の出るような、不思議な笑いが起きます。
会話には、小学生の頃に「赤旗」を配った、とか、「赤旗まつり」に参加したなどの共通体験や、「少年少女新聞」や「しんふじん新聞」、「民青」、「日教組」と馴染みの単語が出てきます。
社会を変えるには日本共産党しかない、と念仏のように両親が唱え、読むものもすべてそうで、じっさい実家ではそういう日常が現在も繰り広げられていて、今はそこから離れて暮らしている、という共通の気分を味わうのです。

私の場合は、小学生のころに「消費税反対」の学級新聞をひとりで勝手につくって、中学生のころに「日の丸、君が代反対」の社会科教師を応援して、高校生になってなぜか熱が醒めてしまい、大学に入って親元を離れると、共産党に関して思考停止をしてしまいました。距離を取らなければいけない、とそれだけを思い、どんどん実家の雰囲気から離れていきました。それでも選挙の時期になると、「共産党にいれなければならない」という圧力を感じてしまいます。親の期待に添わなければならない、という意味でしょうか。

共産党の、というより両親の考え方に違和感を覚え始めたのは、やはり、男の子を好きになり始めた時期かもしれません。そしてフェミニズムに触れて、自分の家族のありようを見直し始めたあたりから、少しずつ、その共産党支持者の持つ雰囲気を客観視することができるようになっていったような気がします。

「天皇制に否定的なのに、なぜ婚姻制度を支持するのか」とか、「二度と我が子を戦場に送らない母親の会、って、なぜ母親でいったん括るのか」など、じっさい疑問を口にしたこともありました。

私の父親は、共産党系の小さな出版社兼書店を経営しています。その昔「極東書店」という名前だったころに、当時社員だった父と母は職場結婚をしました。

家の本棚には、父が少しずつ買い揃えたマルクス・エンゲルスや小林多喜二に宮本百合子の全集が並び、もちろん、宮本顕治に不破さん・志位さんの新刊もつねに並んでいます(あとは「やまびこ学級」や「橋のない川」とか)

私が高校生の頃に、もっとも父親がハマっていた読み物は、18世紀のフランスの思想家、ジャン=ジャック・ルソーの「エミール」という本でした。書店の客である、中学や高校の教師たちと勉強会をしたり、「エミールへの旅」と称したヨーロッパ旅行を企画したりしていました。大学教授の書いた関連する書物も出版していました。

私はルソーにまったく興味がなく、今の今まで、どんな思想の持ち主だったのか、全く知らずに生きてきましたが、先日ある本を読んでいたら、「エミール」の一節が出てきました。

「人間の最初の教育は女の世話にかかっている」(岩波文庫、1962)

そして、「ルソーは、母親のエゴイズムを徹底批判し、教育としつけの責任は全面的に母親のものであるとしました。理想の母親像の本質は献身、マゾヒズム、受動性にあり、子育てに専念しないような母親や、母親になることを拒否するような女性はその存在そのものが否定されました」と、文章が続いていました(「母は娘の人生を支配する」、斉藤環、NHKブックス、2008)。

私は、そんな思想のひとだったのか、と驚き、あの頃私は、実家でそんな「エミール」と隣りあわせで生きていたのか、とそのひどさに驚きました。

同時に、何を決めるにしても「お父さんがいい、って言ったらね」とか、「お父さんのおかげで私たちは生きているの」と呪文のように繰り返す母の口癖や、「子どものことは全部お母さんに任せているから」となぜかニコニコしながら話す父の顔を思い出して、そのすべての源がここにあったかと、謎がいっぺんに解けたような気になりました。
これから親と話をするときは、事前にルソーの思想を知っておくと、私の言いたいことも伝わりやすくなるのかもしれません。
連合赤軍における永田洋子の話を思い出します。連合赤軍と共産党はぜんぜん違う、と共産党はいつも主張しますが、共通する部分はここだよ、という気分になります。

共産党支持者の家庭のすべてが、私の家のように差別的な関係を基盤として成り立っているわけではないと思いますが、それがある限り、私は両親の生き方に違和を感じ続けるだろうと思います。

共産党支持からルソーへの傾倒に父が疑問を感じていないことは言うまでもないことですが、母は本当のところはどうなのでしょうか。映画「男はつらいよ」が好きだと周囲に言いながら、その「金曜ロードショー」を見ているときに、たいして笑いもしないし泣くことはありえない様子の母が目に浮かびます。あのテンションの時なら、会話が出来るような気がします。それ以外のときは、父親と共産党を賛美しているテンションが通常だからです。

先日、友達の家で、「しんふじん新聞」を発見しました。私の実家には毎週届けられている新聞です。自治会の人に取ってくれと頼まれて取っているけど読んだことがない、とその友達が言うだけあって、開かれた形跡のない新聞が何号か床に積まれていました。
新婦人ってどんな婦人なんだろうねー、といいながら、ひさしぶりに手に取りましたが、なぜか文字が頭に入ってきません。おー、読めないよー、と思いました。けれど実家に帰ったら、あの家の雰囲気に包まれたら、また読めてしまうのかもしれません。

後に自分にとってデメリットが大きいとわかった環境でも、そこが同時に自分を保護してくれてきた環境でもある場合、そのメリットを捨てて偏りを指摘することは難しいな、と思います。
これは私が選んできた職場環境にもいえることで、次回はその辺りについて書いてみたいと思います。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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