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すっかり秋になりましたね。

・・クレーマー、書きにくいお題だわ・・と、自分でつけておきながらすでに逃げ腰です。
先週、私の働いているビデオ屋でDVDを買ったお客から、再生できないと電話が入りました。後日、送り返されてきたものを店のデッキで確認すると再生ができました。彼は遠くに住んでいて来店できなかったため、いっしょに確認してもらうことはできませんでした。電話で応対します。
どうでしたか、と言われ、画面を見ながら、「うつりますねー」と軽く答えたら、電話口で彼はとつぜんキレました。
「こっちは、うつらない、って言ってんだよ!! うつるとか言ってんじゃねーよ!!」
「こっちが下手に出ればいい気になりやがって!!」
「オマエんとこは不良品を売ってんのかよ!!」
「遊びで商売やってんじゃねーよ!! なに二丁目ノリでやってんだよ!!」
「ウチのデッキは最新なんだよ!! バカにしてんじゃねーぞ!!」
「コラ、聞いてんのかよ、このオカマ!!」

男の怒鳴り声は嫌いです。とりあえず、怒鳴り続けている受話器を、そっとカウンターの上に置いてみました。しばらくしてから、「だいじょうぶですか?」と受話器を手にとって、様子をうかがいました。すると、「うん」と普通の声で返事がありました。

それからは、詳細は省きますが、こちらにもいろいろと説明できる点があり、対処のしようもあって、この件に関しては、一応、終了しました。

私に残ったのは、彼の怒鳴り声の余韻と、その内容でした。
彼を怒鳴らせた原因は、私の軽い対応にあったのでしょう。
こちらに非があるかどうかがわからない状態でも、とりあえず部分的にでも謝っておいて(送っていただきお手数をおかけしました、とか)、最初に結果を言うのではなく、相手の言い分を一通り聞いてから、説明を始める方が良かったのではないか。
というのは、あるバイトちゃんの感想。

「まあ、遠くに住んでいて、ひさしぶりに新宿に出てきて一本ビデオを買って、家に帰って、セットして、テレビの前で、いざ・・、というときに再生できなかったら、そりゃ腹も立つわな」
というのはお局姉さんの感想で、そのへんの機微を配慮せずに対応してしまったのは、たしかに私のミスだわ、と思いました。
それにしても、あの罵倒・・!

怒鳴ってはいましたが、一度も噛まなかったなめらかな口調は、ぜったい部屋でひとり何度も練習したはず、とか、「二丁目ノリ」ってなんだ? とか、「オカマがオカマにオカマ」って言った! とか(翻訳すると、「オネエ嫌いのゲイがオネエのゲイにオネエ」と言った)、あとは、言外に漂っていた「田舎モノだとバカにされているのではないか」という雰囲気に、なんだか今回彼が置かれた状況を、いろいろと想像してしまいました(この物言いが、「二丁目ノリ」なのかもしれません)。
そして昨日、違うお客から別のクレームが入りました。

電話口で、パッケージにうつっていた男の子が画面に登場しない、と言います。商品の内容まで把握していない私は、店内にあった同じ商品のパッケージを手に取り話を聞きます。

それはあるメーカーのベスト版で、パッケージには、これまでそこのメーカーの作品に出演した二十名くらいの男子たちが、証明写真のサイズで升目上に紹介されています。そのDVDに登場しなかったのは、「右下から左へふたつ、そこからひとつあがって右へひとつ」の写真の男子のことだそうです。
(知るか、そんなもん)と思ってしまいましたが、そんなことは言えません。そんな対応をしたとたん、また怒鳴られてしまいます。今度は、そのビデオメーカーに直接問い合わせていただくようにお願いしました。
三十分後に再び電話がかかってきました。

いま、メーカーに問い合わせたら相手にしてくれなかった。ひどい会社だ。そんなところと取引しているのか。この場合、詐欺にあったと警察に被害届けを出せばいいのか。オタクではどういう対応をしてくれるのか。
怒鳴ってはいませんが、なんと言えばいいのか、困ってしまう発言が続きます。
後で、DVDの内容を確認したところ、たしかにその男子は出てきませんでした。
けれど、いっそ、言いたい。

一件目の、不良品か否かについては、そこのメーカーのDVDがすべてDVD-Rで制作されているため、どの再生機でも必ず再生できるわけではないということ。パッケージにそのことを明記して発売しているということ。そういうものも流通しているのが、ゲイアダルトビデオ業界の現状だということ。

二件目。そこのメーカーはそういう会社だということ。けれど他社に比べて格段に安いため、当店ではその雑なところを補ってなお売れ続けているということ。そして売り続けているということ。
そんな「コチラ側の常識」をもちろん言えるはずもなく、二件とも交換や返金をして終わりましたが、こうしたクレームには、そんなDVDも販売している店員としては、なんだか板ばさみにあった気持ちになります。
この業界は、きっと、ながく、制作・販売する側が強気でいられた時代が続いていたのだと思います。それは、購入する側が店側に素性を知られたくないため、クレームを言うことを諦めていたひとのほうが多かったこともあったのではないか、と推測します。

それにしてもあの罵倒・・、あの細かさ・・。
その「一般的な正当性」と、「コチラ側の常識」が呼応して、近頃はクレームによっては、当事者同士の内紛状態になるようです。
って、けっきょく他人事にしてしまいました・・。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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