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今回は「加害者としての私」シリーズのファイナルです。テーマは「書く」です。

このコラムは私の身近にいる人たちを取り上げて書くことが多く、なるべくなら取り上げた人たちには読まれたくありません。自分について書かれた箇所を読んだ人が、「こんなこと言ってない!」とか、「これは私とは違う!」と怒り出したらどうしよう、と思って書いているからです。できるだけ匿名性には配慮しているつもりですが、最近はその配慮も足りなくなっているようで、明らかに本人しか知りえない事実を書いてしまい、そのあとは本人に読まれないことをひたすら祈るという繰り返しです(クロ・・済まない)。

さらに事実だけを書くドキュメントではなく、人の発言や行動を描写するときは必ず創作を加えてキャラクターづくりも勝手にしているので、「こんなこと言ってない!」とか、「これは私と違う!」と言われたら、「その通りです」と言うしかないという困ったことになります。

幸いなことにこれまでそうした苦情を受けることがなかったせいか、そうは思いつつ、いい気になって書いてきましたが、ついに私に書かれて激怒した人が現れてしまいました。問題となったコラムは年末に書いた「レズビアンとゲイ」(2008/12/18)です。彼はそのコラムの後半部分に登場したゲイ男性です。問題となったのは、「げんこつ団」という劇団の芝居を見に行った彼の感想を借りて、私が思ったことを書いた箇所です。

「こういう書かれ方をされると、私がゲイネタだけにこだわっている人になってしまう」
「私はあの舞台について、他にひっかかったネタについても発言していた」
「こういう書かれ方は不愉快だ」
「私のブログ(そこに書かれていた舞台の感想を参考にしました)を、もう一度読み直して、書き直して欲しい」
というようなことを言われました。
あとは、「そもそも舞台を見ていないくせに書くな」とも。

ということで、本人の許可を得て、彼のブログの文章を引用させてもらうことにしました。

「前回公演をみて、その面白さ、動きのキレのよさ、フェミでポストコロニアルでクイアな視線に感動しました/今回は・・・/「数同一性障害」というネタがあり、「足が二本なのにどうしても納得できないんです。手術で三本にしました。自分の気持ちに正直に行きたいんです。足が二本なのはマジョリティの論理に過ぎません」みたいな話が出てきた/あと、ゲイなんだけど秘密にしている人たちとか・・・/公園にすむ妖精みたいな格好のホームレスの人たちとか・・・(Big Issue を掲げている。彼らの姿は職がある人には見えず、近くを通っても酸っぱい匂いがするだけが、失業すると彼らの姿が見えるようになる・・・という設定)/前回女性や家族や米軍基地をネタにしていた時は、面白いだけでなく、メッセージ性にも共感できたけど、今回は、とても面白くはあったけど、前回みたいな共感はもてなかった/性同一性障害やゲイをネタにするのもいいけど、だったら、レズビアンもネタにしてほしい/彼女たちが「隠れてるレズビアン」もネタにしてたら、私の印象はかなりかわったと思う/ホームレスの話も、これでいいんかなー、と思った/作ってる側は、自分も紙一重みたいなことを言いたいっていうのも判るんだけど、やっぱり女性や家族の問題のときのような切実感が出てない気がする/今回は、よくゲイネタとかをやる劇団や芸人みたいな「自分は安全なところにいて笑う人」みたいな感じがした」

ほぼ引用してしまいました。
ということで、確かに私のコラムでの書き方だと、ゲイネタのみにこだわっている人の感想になっていたな、と思います。その点に関して、彼が不愉快に思ったことについては申し訳なく思います。この場に彼の感想を紹介させていただく形で、「げんこつ団」を見た彼の感想はそれだけではなかったことを加筆してお詫び申し上げます。

彼が怒ってからしばらくして、彼と同じ「げんこつ団」の舞台を見たレズビアンの友達とこのことについて話す機会がありました。彼がひっかかった三つのネタ(性同一性障害、ホームレス、ゲイ)の話をすると、彼女は、「わかるわかるー、私もひっかかった」と言いました。「そうなんだー」と素直に耳を傾けかけたときに、彼に「えこひいき!」と言われたことを思い出しました(「レズビアンとゲイ」)。

たしかに・・彼の感想はちゃんと聞こうとしないで、彼女の感想なら聞くという私の態度は贔屓かもしれません。
彼女にゲイネタの部分について聞くと、「クローゼットなゲイとして働いている会社員が登場するんだけど、仕草がオネエで服の着こなしもオネエさんぽくて、しかも今時そんなゲイはいないだろう、というようなオネエだったの」と言いました(いると思うけど・私とか・・)。
わかるようなわからないような、ですが、オカマちゃんとして馬鹿にされるようなステレオタイプのゲイに見えたようです。「でもそれをオカシイと私が思うのは、私がじっさいに色んなゲイの人たちと出会っているからかもしれない」と続けました。
「けれどステレオタイプというなら、国籍差別もあって・・」と、私も前回の公演で見た中国人やアメリカ人のネタの話になりました。確かに、それはすごくステレオタイプな中国人とアメリカ人でした。というふうに、彼女とどんどん「げんこつ団」の他のネタについて話していくうちに、ぜんぶステレオタイプじゃないか、ということに気がつきました。
例えば、これが中国人、とか、これが家族の食卓(斉藤由貴!)、といったメディアに流通している最大公約数の記号だけを使った設定です。そしてそれがステレオタイプなだけに、いびつでナンセンスな展開になっていく・・。

そして問題は、見ている人がどこで笑っているか、なのだと思いました。あのステレオタイプの展開は笑えて、こっちのステレオタイプの展開は笑えない、とか、そういうことを否が応でも体験してしまう芝居なのです。けれどその芝居を作っている人たちは、すべてのステレオタイプをわざとフラットに演じているのだと思います。それがブラックユーモアになる仕掛け・・というか、「げんこつ団」ってすごいな、と改めて思いました。
レズネタをやったらどうか、という話では、彼女は「私もずっとそれを待っている」と言いました。それは他のネタと同じように、という意味合いで、彼の言っていた感想と近い気がしました。すると別の友達が、「でも、演じている人たちがすべて女だから、ヤオイ的に見たら、すでにすべてがレズ行為よね」と笑いました。舞台上でセクハラをしている男性も胸を触られている女性も、どちらも女性が演じているので、レズビアンとしてはそういう楽しみ方もある舞台だそうです。

レズネタについては、ステレオタイプのレズってあるのかしら、と思うので、ゲイほどメディアの中で取り上げられてこなかったという意味において(取り上げられてきたゲイの描かれ方の善悪はさておき、というか、そんなにオネエでもない色んなゲイがいることを普通に認知されている時代になっていたら、ネタとして必要じゃなくなってしまうかも・・逆説的ですが)、前回のコラムで書いたとおり、現段階でゲイネタと同じような形でレズネタを芝居に取り入れることは難しいように思います。
そういうふうに私が感じるのは、怒った彼とレズビアンの友達と私の、「げんこつ団」の芝居に期待する部分の、それぞれの違いかと思われます。
彼は私に感想を話す前に、彼女たちと感想を言い合えたら良かったね、とも思いました。きっと「加害者としての私」は、ステレオタイプなゲイの描かれ方に疑問を感じた彼にあまり共感をしなかった上に、文章の中で、「ゲイの問題にだけこだわっているゲイ」という、ある意味ステレオタイプなゲイとして描いてしまった、という二重の罪を犯したのかもしれません。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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