ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

チンコな世界。挿入編(1)

北原みのり2004.02.16

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<img src="/kitahara/images/asahi.jpg" align="left" hspace="10" vspace="15" />←これはないだろう。
 
新聞一面の右端上の部分に、ファイザーの広告。
 
 
ファイザーと言えばバイアグラ。インポをEDと名付け、「ED」を世に広めた会社。EDは「治療」「克服」の対象です、恥ずかしがることではなく堂々と語りましょうと、清潔に語る会社。
 
 
そういえば4年前、佐野史郎・石川真希夫妻の全面広告は衝撃的だったな。「勇気がふたりを結ぶ。」というキャッチコピーのもと、夫婦愛とEDを絡ませた広告に、「バイアグラ反対」「これ以上の挿入禁止!」のプラカードをかかげた女たちによるデモが全国で勃発し、多数のフェミ的抗議が新聞社に寄せられたという。(うそ)
 
 
あれから4年後。バイアグラの合法化が信じられないくらいの早さで決まって以来、「バイアグラ」は男の沽券に拘るあほくさい薬、ではなく、入れて欲しい妻・入れたい夫を結ぶ愛のお薬、というイメージで定着しようとしている。インポは差別語の仲間入りをし、EDが正しい言葉、人を傷つけない言葉として浸透している。
 
 
だからなんでしょうか。今回のこの小さな広告は4年前以上に衝撃的でした。もはや「インポ」とは言えない、ポリティカルコレクトワード程の繊細さをアピールするED業界が、こんな広告を? 「夫婦の問題」としてEDを取り上げたその清潔感が、たまらなくあざとい感じがした前回の広告から比べ、4年後のファイザーのこの突き抜け感はいったい何だろう。
 
 
「愛」とか「夫婦」とか「パートナー」とか「病気」とかそんな言葉、ここには一切ない。最近、インポ。それだけのメッセージである。指先を下に向け、「最近・・・」と一息つく青い空間は、楽しげですらある。男のチンコは青空のもと、白昼堂々と勃起率を考えられる。なんて清々しい光景だろう。この世は男のためにある。そんな気分にさせられる、一面広告である。
 
 
実感。この広い世界は、ザ・マーンのためにぃ~。マンコな私には距離感が到底つかめない広告が、しつこいけれど新聞一面に。とは言っても。これは例えば、ナプキンのCMであり得ないほどの大量の青い水をジョボジョボとぶちまけ「夜も安心」とか言うCMを見て、男が「女って大変なんだなぁ」とか言う「他人事」感とは、ちょっと違うように思う。
 
 
距離感をつかめない、と言っても、それは決して悲壮感から言っているわけじゃない。距離感をつかむ必要がない、のならいいのだ。ほんとの「他人事」ならいいのだ。1人で勃起率をはかり、最近はこれくらいだなぁ、と1人じっとチンコを見下ろす。そんな1人遊びのためのED広告だったら、ほんと「他人事」なのだ。あら、楽しそうじゃない? と応援もしたくもなるわ。でも。これは違うだろう。青空の1人チンコの向こうには、口のない無数のマンコがいるのだろうから。
 
 
いったい「チンコ」とは、男にとって何ぞや。何ぞや。何ぞや。ものすごくしつこいが、新聞一面に、チンコ問題を掲げられるこの世界とは何ぞや。マンコ当事者としては想像のできない清々しさと、性器自己肯定感を与えられているチンコ世界は何ぞや。バイブ屋創業8年目。たくさんのディルドを所有してはいるけれど、チンコ持ちではないからか。やはり分からないのである。
 
 
勃起の先に挿入がある。「挿入なんてなくたっていい。抱き合っているだけで女は幸せなんですぅ」と、女性誌のセックス特集のようなことは言いたくないけれど、いったい何のために「挿入」するんでしたっけ。ファイザーのホームページでは、男にとってインポとは『男性としての 自信やプライドにまで大きくかかわっています』とある。「頑固に勃起、元気に持続。そうしないと、男のプライドが傷つくもん」と言うことなのだろうけれど。挿入は男のプライドのために? 持続は男の沽券のために?
 
 
もう、何が何やら。ちょいとしばらく。挿入問題についてしばらく考えてまいりましょう。
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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