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「ホームパーティー」

茶屋ひろし2010.01.23

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先日、ビデオ屋に入ってきたホスト男子(ジャニーズ系)に、「お兄さんはナニ人ですか?」と聞かれました。職場で相方のオーラちゃんは、時々職質で外国人登録証の提示を求められるそうですが(どの辺りの国の人に見えるかは内緒です)、私は出身国を日本人に聞かれたのが初めてだったので驚いて、「日本人です」と普通に答えてしまいました。出身地も聞かれて、「大阪」なんて、これまたまともに答えている暇があったら、ナニ人に見えたのか聞けばよかった、「宇宙人です」とか煙に巻けばよかった、といろいろ後悔しました。「そうっすか」と彼も普通に答えて出て行きました。というか、キミこそ何者だったのか、という話です。
というわけで、新年を迎えました。あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
大晦日は休日だったので、今年は家でゆっくり紅白でも見ながら年を越そうかと思っていました。が、前日にひさしぶりにゲイバーを四軒ハシゴしたせいで、当日は起きたらとうに日も暮れていて、紅白も中盤でした。スマップ・マイケルとメガ幸子と永ちゃんを見ました。過剰な演出なのに軽い後味は紅白ならではです。そこが嫌いになれません。
二日酔いを越した後のけだるさと空腹で妙に静かな気分です。このまま炬燵の中で芋虫のように丸まって除夜の鐘を聞くのもいいかしら、と思いましたが、友達からの電話で二丁目に出ることにしました。
毎年、二丁目では、カウントダウンをするお店やクラブが何軒もあります。二年前も二丁目で年を越しました。今年はそことは違う店に行きました。賑わっているかと思えば、カウンターこそ埋まっているものの他に人はなく、アダルトでムーディーな雰囲気です。待ち合わせている友達はまだ来ていなくて、一人でカウンターの隅に座ると、偶然、以前知り合った人と隣合わせになりました。会うのは二度目です。前回のときに、「ぼくは尺八(フェラチオ)が巧いんだ」とソフトにアピールされました。42歳、昔はもっとモテただろうな、と思わせる笑顔の、ちょっと太ってしまったプレイボーイです。顔は好きですが、マショコの次はヤリチンかー、とスルーしてしまいました。今夜もプレイボーイは、「これって運命だね」とか、「茶屋君といっしょに年を越せるなんてハッピーだな」と台詞がキマっています。そうね、年越しに少しでも色気があるのはありがたいことだわ、と私はむしろ感謝しました。
待ち合わせた友達(50歳)が到着して、私の隣に座ります。プレイボーイを紹介すると目が光りました。ああ、そうかトラさん(友達)のタイプだわ、と納得します。去年は二人してルパンを追いかけてしまいました。というか、私たちは好きなタイプの顔がかぶるのね、と改めて思いました。思って、もうトラさんには何も言うまい、と心に誓っていると、プレイボーイは携帯を片手に店のテラスへ出て行きました。トラさんがしばらくして後を追います。そのテラスは喫煙スペースになっています。しばらくしてトラさんが戻ってきました。無言です。プレイボーイはまだ電話中です。私も煙草を持ってテラスに出ました。電話は英語でしていました。プレイボーイは電話しながら、「台湾にいるボーイフレンド」と目配せをします。私のことを相手に「ジャパニーズフレンド」と紹介しています。「今年一番に彼(you)と話したくて」と私には日本語で、電話の彼には英語で言います。器用な人です。電話を切ったあと、「遠距離なんだ」と屈託のない笑顔で答えました。「そうなんだ」と私も笑って煙草を消しました。
そうこうしているうちに、前回書いた「フルーチェ」のゲイ男子から電話が来たので、彼の幼馴染の女の子(二人は32歳)と一緒に、別の店で合流することになりました。プレイボーイと別れて、トラさんをつれて二軒目に向かいました。
彼女はさておき、フルーチェも私もトラさんも、それぞれがまったくタイプではありません。色気が完全に消滅しました。あとはお酒とカラオケで新年を祝いました。
話は変わりますが、先日、「ディパーテッド」という2005年のハリウッド映画を見ました。レオナルド・ディカプリオが主演です。ある街のマフィアと警察の攻防戦の話です。マフィアのボスと、マフィアから警察に送り込まれたスパイと、この事件の責任者の警察部長と、警察からマフィアに送り込まれたスパイ(ディカプリオ)の四人が主要人物です。ディカプリオは死なないだろうと思って見ていたら、最後に四人全員が死にました。詳しくは違いますが、けっきょく、四人で殺し合ってしまった感じです。
あら、とずっこけましたが、悪役が悪というより欲に走って、ヒーローがヒーローになり得ず、男同士が殺し合いをするだけの結末は、なんだかリアルで新鮮でした。そして、こんな世界には住みたくないわ、と心から思いました(大きく見れば、すでに住んでいますが)。
迎えた新年は、平常どおりビデオ屋の開店でスタートしました。出勤前にワインを二本買っておきました。仕事中に飲むわけではありません。仕事を終えてから行く予定のホームパーティーに持参するためです。
四年前にお呼ばれしてから、毎年顔を出しています。今年も、「男ができなかったらおいで」と主催者の人に言われていました。
下は20代から上は70代までの二十人位のゲイの人たちが、主催者の人の自宅マンションに集ります。中心となっているのは、主催者の人とそのパートナーの方(60歳と80歳で37年目のゲイカップル)の、長年の厚い交友関係の人たちです。私がいつも行っている四軒くらいのゲイバーのマスターたちも集います。いつも私は端のほうにお邪魔する気分です。
それは、朗らかで穏やかで話が尽きなくて、とても居心地のいい空間です。
老いも若きもクルクル動き、二部屋を行き来しながら、食べて座って飲んで立ち上がり喋りながら片付けていきます。そしてまたお酒が開けられて料理がなくなるとデザートが次から次へと出てきて、そして空き缶を回収して洗い物をして、立って座って食べて飲んで話しています。特定の誰かがそれだけをしているわけではなく、誰もがどれもこなしているところがポイントです。しかもせわしないわけではなく、個々人がそれぞれのリズムで自然にそうなっているという流れです。
私はこのリズムにいつもボーっとしてしまいます。同性愛って平和につながるんだわ、と唐突に思います。もちろん意識してつなげるものだと思いますが、男同士が殺しあわない世界に必要なのは、独占や支配欲ではなくて、ゆるやかにエロを共有するような関係性なのかもしれません。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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