ラブピースクラブはフェミニズムの視点でセックスグッズを売り始めた日本で最初のトーイショップです。

アグリー・ベティ

北原みのり2009.09.09

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「アグリーベティ」があまりにも面白いので、やばい、仕事の締切があるのに・・・と思いながらも中毒症状になっているようで、ついつい観てしまう。睡眠時間を削って観ていて、頭はもうろうとしているのに、すごく幸せ。
 
アグリーベティー。ファッション業界で働くアグリーな女子が主人公。もさもさの眉毛に大量の黒い髪にもっさりとした鼻、突き出た厚い唇、矯正中の歯に、ださい服の23歳がベティだ。
 
ドラマを観るまで偏見があった。だって、「アグリーベティ」だもん。女の主人公がわざわざ醜いのであれば、それは彼女が「洗練」され、「変身」していくため、というドラマの定石があるじゃないですか。それなのに「アグリーベティ」でベティは決して「美人」になったりなどしない。「洗練」されていったりなどしない。痩せたりもしなければ、歯科矯正もいつまでも取れない。なのに、ずっと、彼女は、主人公、である。
 
ベティのお父さんは30年以上前に国境を越えて不法入国したメキシコ人のコック。不法入国の罪を問われて今さらながら強制送還されそうになっている。ベティのお母さんは6年前に亡くなった。ベティのお姉さんは高校卒業と同時に避妊に失敗しシングルマザー、10歳の息子がいる。この息子はファッションオタクで、セクシュアリティはハッキリしていないがゲイっぽい。他の登場人物には、性転換手術をした出版社の社長、殺人の罪に問われているセレブ、ストーカー気質の民生委員、オタクな男子、権力志向の黒人女性(ヴァネッサ・ウィリアムズが演じてる!)、アル中夫から逃げてきたスコットランド人女性、ゲイの秘書、ゲイのふりをするストレートなデザイナー、いい男とのセックスを何よりも大切にしている美人受付嬢などなど・・・。主人公が「ブスな女子」のこのドラマは、出演者の99%というか100%が、マイノリティであったり、”マイノリティ要素”たっぷりなのだ。
 
個性的な主人公たちの人間関係が入り乱れながら、物語りはパロディ調・サスペンス調・コメディ調など、様々なリズムやテイストをまぜながらぐいぐい進行していく。こんなドラマ観たことがない・・・と一言で言ってしまうのはどうかと思うが、少なくとも”こういう”ドラマが日本で成立するのは、まだまだ先、というのは確実に言える。
だって。東京在住の不法滞在者のフィリピン人の子どもがテレビ画面にギリギリ耐えられるほどのブスとして登場する日本のドラマ(しかも主人公で!)・・・・なんて、考えられる? お父さんとお母さんが強制送還される社会派ドラマ以外に成立する? 不法滞在者じゃなくたって、例えば在日朝鮮人のブスな女子が主人公のドラマが、コメディ調で放映されるような下地が、この社会にありますか、だ。(在日男が血みどろで闘うのなら映画になるけれど!)
 
様々なセクシュアリティの人が、色んな立場で、各々の考えで、そこの場にいる、ということが当たり前の前提としてなく、「みんな、なんだかんだいったって同じでしょ」と、ゆるーくひとつにまとまっているような気分にさせられるような社会では、絶対に作られない、きわどいドラマ。だから、面白い。
こういうドラマが作られる時代に、いつかなるのかしら・・・と思いながら、今週末には「天皇制とフェミニズム」というテーマでの座談会がある。この一月、ベティをみながら、天皇制のことを色々と勉強しているけれど、これが精神のバランスを保つのに役立っているのかもな、とか思う。
 
ちなみに、私は、シーズン1のアマンダが大好きだ。シーズン2は、アマンダの魅力が何か変わってしまったようで、残念・・・というような、細かいアグリーベティ話ができる人、メールを請う!!!
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北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めて、女性だけで経営するセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を始める。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)など。佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・最新刊は香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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