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「フリースタイル」

茶屋ひろし2010.04.02

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普段乗ることのない電車にひさしぶりに乗って席に座ったら、向かいの席にビデオ屋のお客が座っていました。目が合って互いに凝視してしまってから、目を伏せました。気づかれたかしら(当然・・)、と思いつつそのまま寝たふりをしました。それにしても周囲に溶け込んでいるわね、と時折、薄目で彼の佇まいを観察します。
ただのおじさんです。お客さんでなければ、パッと見ただけでは彼がゲイかどうかなんてわからないね、と思いました。
次に、東京駅に着いて、待ち合わせ場所で人を待っているあいだに、行きかう人を何気なく見ていました。春モノのコートになってきているのねー、などと季節を感じていると、(あ、ゲイだわ、ゲイがいる)とふいに発見してしまいます。それはゲイ用語で言うところのイカニモ系で、短髪、髭が丁寧に整えられていて、服とカバンと靴のチョイスに隙がなくて、どこかに「可愛いアイテム」が入っているタイプの人です。年齢や体型は関係ありません。
あの人はどうかしら、彼女連れか・・じゃあ違うかも、あ、でも、女友達っぽいわ、てことはゲイかな、と「ゲイダー(脳内ゲイ探知機)」はやみません。
最初のおじさんは事前に情報がない限り私のゲイダーでは察知できませんが、イカニモ系とオネエはわかりやすいようです。オネエさんは一般的にも見た目からゲイだとわかりやすいと思いますが、イカニモ系の人は当事者でないとわかりにくいかもしれません。ということは、一口にゲイといっても、大雑把で見た目だけの話ですが、「ただのオッサン」と「イカニモ」と「オネエ」の三種類に分けることができるのかもしれません。さらにそれらがリンクしている人もいます。
先日ビデオ屋で、ビデオを一本買ってくれた30歳くらいの坊主頭の男子が、「つかぬことをお伺いしますが、~ってご存知ですか?」と聞いてきました。「知りません」とよくわからない英単語に首をふります。「ほら、アレですよ。男の人同士が裸で・・」と手をひらひらさせながら説明するので、「ハッテン場の名前ですか」と言うと、「そうそう!」と手を叩いてなんだか大げさです。「ひどいんですよ、まったく。昨日あたしが行ったら、受け付けで断られたんですよ。『あなたは無理です』って。そんな言い方はないんじゃないの、って腹を立てて出てきたんですけど・・、そこであなたにお伺いしたいことは、あたしのどこが無理だったのか、ってことなんです」。
そう言うと彼は二歩下がり、両手を広げて全身を披露しました。・・特に思うところはありません。
以前にも紹介しましたが、ハッテン場によっては年齢・体型・顔などで客を選ぶ店もあります。ということが答えなのですが、まさか「あなたが『アグリっ娘』だからよ」とは言えません。「そういうことはよくわかりません」と答えました。
彼は短髪ですが仕草がとてもオネエです。バッグを肘にかけてお尻を振って歩きます。サングラスは額にかけて、ストールを必ず垂らしています。二丁目では絶滅危惧種と揶揄されてしまうタイプなのですが、見ていて面白いので、そのスタイルで生き延びて欲しいわ、と個人的には思っています。
「そうですか、そうよね。ごめんなさいね、つまらないことをお聞きしてしまって。お邪魔しましたー」とお尻を振って出て行きました。
その言葉遣いは、文法が間違っているとは思いませんが、文脈は間違えているような気がします。なぜ友人でもないショップの店員にいきなりそういう質問ができるのか、というより、全体的に自分の言動が相手にどういう印象を与えているかについての考察に欠けている、ということかもしれません。
たまに、オネエ言葉で話しているのに話のまったく面白くないゲイに出会うことがあります。坂本ちゃん(古い)現象と呼んでいます。オネエ言葉を使うだけでキャラ立ちしたと思い込んでしまうのでしょうか。たしかに使用すると自分をアゲた気になりやすい言葉ですが、最後に自分をサゲるところまで持っていかないと実用したことにはならない言葉のような気もします(いつものように自分のことは棚上げです)。
「アグリっ娘」ちゃんは、ハッテン場に行くために(モテるために)頭を坊主にしたところまでは良かったけれど、まだまだ二丁目の憂き目に会いそうね、と思います。
そんななか、友人からの誘いである打ち上げに参加しました。20人くらいの飲み会でした。その集まり自体には関わってはいなかったので部外者でしたが、女装の方が中心の打ち上げだと聞いて、面白いかも、とお邪魔しました。
向かいに女装されている方が三人官女のように座っていました。右端の着物の方が中心人物で、ずっと話しておられます。
「女装子(じょそこ)とか趣味女(しゅみじょ)といった言い方を私たちは使いません。これらの言葉はゲイの人たちが侮蔑的に使い始めた言葉なんです。それはつまり、ゲイの人たちのなかに女装蔑視があるということです」
話しながらチラチラとコチラをご覧になるので、思わず目を伏せてしまいます。知りませんでした、すみません、と心の中で小さくなりながら、あとのお二人の女装を拝見していました。左端の方はドレスのような服で、真ん中の方はシスターです。お二人とも壮年で、なんだか無言の無表情です。普段していないメイクやコスプレのために動きがぎこちなくなっているのかしら、と思いました。
飲み放題コースになっているようですが、なかなか飲み物がやってきません。先に枝豆の大皿が三つやってきました。大テーブルに均等に置かれます。とたんに、そのお二人が枝豆を次から次へと食べ始めました。飲み物来てないのに・・そんなに食べるの? というペースで殻が空き皿に並んでいきます。着物の方のトークにも圧倒されますが、お二人の無言の行動にも圧倒されました。
参ったわ、自由ってそういうことなのね・・と、うつむいているうちに、女装の方が自分たちのことを何て呼んでいるのか聞きそびれてしまいました。
*『アグリっ娘』は、漫画家の小日向氏の造語です。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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