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「こなれた体」

茶屋ひろし2010.05.13

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「こないだここで買ったんだけど、一時間ほど使ったら動かなくなっちゃった」
と、おじさんが巾着袋から電動バイブを取り出して、私に渡そうとします。すんなり受け取りそうになって、使用済み! と手が止まりました。カウンターに白いバイブが落ちます。「ちょっと見てみてよ」とおじさんは平然と言います。、うん・・と、戸惑いながら、洗っては来たのでしょうが、ちょっと茶色いのがついている箇所を発見してしまいます。
なんでこの人は気にしないのだろう、どうして私がどう思うかも気にならないのだろう、おじさんだから? と、リモコン部分だけをいじってみました。
「ほんとだ、動きませんねー」「だろ?」「たぶん電池切れだと思います。備え付けの電池は一時間くらいでなくなるので」と説明して電池を入れ替えて動くことを確かめて、持ち帰っていただきました。
やーびっくりした、とウエットティッシュで手とカウンターを拭きました。
出勤してきたオーラちゃんに報告すると、「わざとじゃない?」と笑います。「いや、あの人は天然だよ」と、ただの鈍感なおじさん説をといてみました。けれどオーラちゃんのいう「わざと」系もわかります。セクハラと呼んでみてもいいと思われますが、この場合だと自分の使用したバイブを店員にわざと触らせて喜ぶタイプのことです。ビデオのパッケージを指差して、「これはなんと言う行為ですか」と質問してくる人もいます。「フェラチオです」と言うと喜ぶのです。あほか、と思いますが、そういう人は少なくありません。
そういうことを積極的にしてくる人が多いのは、ここがアダルトビデオ屋だからか、と思いますが、それもヘンな話だな、と思います。なぜエロが絡むと、コミュニケーションがいびつになるのでしょうか。
時々ゲイバーで会う人で、エロ全開のおじさんがいます。私は彼に不快な思いをしたことがありません(向こうはあるかもしれませんが・・)。エイジさん、53歳、ゲイ、本名で良いそうです。彼に会うといつも、エロは人を心地よくするものだ、という基本に立ち返ることができます。「エロ親父」という言葉にはなぜか不快なイメージを持つことが多いのですが、エイジさんも「エロ親父」なはずなのに不快じゃない、これはなんだろう、と思うのです。
「もう、自分より若い男の子はみんな可愛くてしかたがないんだよね」「どんな子でも?」「そう、タイプもなくなってきちゃった」と話していたのが去年で、先日は「相手が年上でもそうなってきた」と言っていました。範囲が広がっています。相手がゲイの男性というだけで、そのすべてが愛しくなる地点に到達したもようです(どんな地点だ)。
そんなエイジさんは、酔った私によく触られています。顔でも腹でもどこでも、じかに惜しみなく触らせてくれます。なんでしょう、触り心地がいいのです。手のひらが気持ちよくなります。吸い付く、でもないのですが、こなれた粘土を触っている感覚に近く、いつまでも練っていたい気分になります。
無遠慮な私と違って、エイジさんが誰かを触るときは、「いい? じゃあ、失礼しまーす」と相手の了承を得ています。そして触ったあとは必ず相手を褒めまくります。「匂いがいい」とか「ヘソ可愛い」とか、本当に、男子の体はなんでも愛しいという笑顔になります。もちろん嫌がる人には触りません。そういうところを学ばなければ、と思って見ていますが、エイジさんに触られて嫌がる人を見たことがありません。
こなれた粘土だもんなー、触られても気持ちいいんだろうなー、と触るくせにあまり触らせない私は想像します。
どうしたらこんなに触り心地のいい体になるのか、と考えていて、やっぱり気持ちのいいセックスをしているからかしら、と思いました。
「セックスはしているの?」と聞くと、「うん、してるよ。先週の男の子とはできなかったけど」と答えます。毎週かー、とため息が出ます。
こなれた体は、常に人の手が入っているので、独りよがりの体にならずにすむのかもしれません。セックスだけじゃなくて、誰かにマッサージをしてもらうことも、同じような意味を持つような気もします(テキトーです)。
先日、家で炬燵に入ってマンガをよんでいたら、胡坐のあたりから、かすかに異臭がしました。おならをしたわけではありません。なんか臭い、と思いながらも、寝そべると気にならなくなります。でも座るとまたにおいます。だんだんマンガに集中できなくなってきて、足の指をかいでみました。これは知っている臭さだ、と、足の爪にたまる垢のにおいを連想したのです。けれど、足の指からはにおいません。
なんだろう、でも、とりあえず足だけ洗ってみる? と自問自答して風呂場で洗ってみました。炬燵に入ります。またにおいます。やだ、なんか死んでいるのかな、と炬燵布団をめくってみました。誰も死んでいません。そこで、ようやく気づきました。おでき?
キタナイ話ですみませんが、肛門のそばにおできができていたことを忘れていました。痛いなーと思いながら、大きくなっていくのをとめられませんでした。十年くらい前に、臀部におできができたことがあって、その時は町医者に、大きくなるまで待って一気に膿を出そうね、という治療を受けました。じっさいにピンポン玉くらいの大きさになって痛くて歩けなくて、痛み止めを処方されて、友達はドーナツクッションをくれて、やっとお許しが出て、診察台の上で、膿をひねり出されました。生涯に残る痛さでした。その痕跡は、針の先ほどの穴になって残っています(どうでもいいことです)。
その時の経験からか、おできは大きくなるまで触っちゃいけないと思い込んで、忘れていたのです。
案の定、パンツを脱いで確認すると、おできが潰れて白い膿が出ていました。異臭はそのせいでした。もう、臭いとわかっているのに、パンツについたのをかいで、「くっさ!」と叫んでみました。しかしこうなると出し切ったほうがよさそうです。また風呂場に入って、痛さを我慢しながら搾り取りました。
そのあとシャワーで流しながら、ずいぶんセックスしてないわぁ、とすっかり小さくなったおできをつまみました。そういえば、二年前にこの風呂場でセックスした人も、こなれた体でした。他人のアナルに入れたのは、それが初めてだったのですが、ツルン、と入ったので驚きました。それはきっと、人に使いこまれた彼の体のおかげだったように思います(何の話・・)。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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