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「エコとうっぷん」

茶屋ひろし2010.06.25

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四年間使ってきた洗濯機がおかしくなり始めました。全自動ですが、すすぎと脱水をしてくれなくなりました。洗ってくれるだけです。数ヶ月前までは、それでも、最初からやりなおして、三回に一回は最後までいってくれたものでしたが、ここひと月は、五回も六回もやりなおしてもエラーになります。水をどんだけ使うねん、と思いながら、それでも奇跡的に最後まで行く時があり、そのたびに「クララが立った!」と喜んでいました。けれど燃費が悪くて、洗濯物が溜まり始めました。気がつけば小学高学年の身長くらいに山積みになってしまい、ここ最近の蒸し暑さを考えれば、この洗濯物は私の体臭を放っているはずで、本人にはわからないからいいか、といつまでも平気でいるのもいかがなものか、と思い始めました。

それにしてもシャツにタオルに下着に、私はどれだけ持っているのか、三週間くらいしてようやく靴下の在庫がなくなりました。ほとんど安物ですが、昔から衣類の物持ちだけはいいようです。けれど家電の持ちが悪いのは、購入時に安いものを買ったからだと思われます。
家の前の坂を下ったどんつきにあった家電洋品店で、冷蔵庫や電子レンジといっしょにまとめて買いました。今はローソンに変わっているので泣きつくこともできません。そういえば五千円で買ったDVDデッキは、一年と少しで、すべてのDVDを読み込まなくなりました。ちょうど「チャングム」にはまっていた頃に最期を迎え始めていました。それでも数回に一回は読み込んで再生してくれるので、これまた「クララが立った!」でした。ドラマを見る前に毎回手に汗を握りました。

買い換えることでこれはゴミになるわけで、安物買いはエコじゃないわーと思っていたら、「エコカーっておかしい。環境を考えるんだったら、車に乗らない移動手段を模索すべきなのに、車にエコをつけて売ることがあたりまえになっている。僕たちは企業戦略に騙されている。って、オザケンが書いていたよ」と職場のオーラちゃんが教えてくれました。小沢健二、いつのまにかそういう位置に・・沖縄の海をきれいにするコッコ、宇宙音楽になったウーア、コモリウタをつくったノッコ・・、農業に励む工藤夕貴、数年前にテレビで見たエポさんはギターを片手に自宅で整体の仕事をされていました。

「洗い」から「すすぎ」へ、そして「脱水」なのかしら。でも人は洗濯機ではない・・などとぶつぶつ考えながら、子どもの身長くらいの洗濯物を片付けるために、歩いて三分の(近い)コインランドリーを往復しました。洗濯機を四つも独占して汗をかいたので、そこのコインランドリーを経営している銭湯の前の自販機で水を買ったところで、銭湯閉店の張り紙に気がつきました。あら、なくなっちゃった、と、並びの煙草屋兼本屋で煙草を買おうとしたら、書籍が一切なくなっていて、煙草だけが本棚に陳列されていました。コインランドリーと煙草は生き残り、銭湯と書籍が消えたのか、とやるせなくなりました。

働いているビデオ屋では、スタッフの子がとつぜん消えました。店のレジに「ご迷惑をおかけしました」と置き手紙を残して音信不通になりました。

なんとなく理由はわかっています。詳しくは書けませんが、人間関係で精神が追い詰められてしまったものだと思われます。

前々回に書いた、15年勤務の姉さんが急きょ呼び戻されました。二週間の休暇に終わりました。戻ってきたわけじゃありませんよ、今月一杯です、とぷんぷんしています。

彼は、姿を消す前日までは、それでも笑顔を見せていました。それだけに急にいなくなると心配で、姉さんを始めスタッフたちと彼の安否を相談しました。本当のところはわかりませんが、最大のストレスから逃げたことで楽にはなったんじゃないの、というところで落ち着きました。その「ストレス」は長くやっている人はみんな経験済みのストレスで、これまでも何度か彼にとって大変だった時期はあって、今まではそれでもなんとかやってこれたのに、今回、このような形で辞めることになったのはどうしてかしら、という疑問は本人にしかわからないので据え置きにしたままです。

ストレスの大元を変えることは職場のシステムを変えることに直結するので、現実的には無理です。それが嫌なら辞めるしかない、ということになります。私が勤めた数年間でも、そういう理由で去った人は何人かいます。それはそれでしかたがないことで、年中嫌な気持ちで働く仕事もない、と思います。それは嫌でも他は良いので辞めたくない場合は、それにどう対処していくかを求められます。

その方法は、人によって違います。私はこれで乗り越えたから真似しなさい、では解決しません。その人がけっこう自力で見つけ出さなければいけない方法です。

だけど・・、と姉さんはつぶやきます。(辞めた)あの子もあの子だけど、もう、みんな三十歳を過ぎているんだから、いろんなフォローの仕方もあったろうに・・、と軽く周囲のスタッフたちを批判しました。姉さんの留守をまもれなくてすみません、いたりませんでした、とよくわからない謝罪をしてしまう私です。

彼が精神的に追い詰められている状況はわかっていたので、明日にでも仕事終わりにいっしょにご飯に行こうかと思っていたら、その日にいなくなってしまったんです、一足遅かったようです、とさらに変な言い訳をしながら、そこまで思いつめていたんだったら、二時間くらい食事して話を聞いたくらいでは、気持ちは変わらなかったかもしれないわ(マシになったかもしれないけど、ごちゃごちゃ)、と思いました。

個人主義の資本主義はキツイことも多いわ、と思います。

あまり関係がないかもしれませんが、ビデオ屋ではポイントカードを発行しています(お世話になっています)。店員らしからぬ発想ですが、一つのポイントがつくかつかないかを知るために、買う前に携帯で合計金額を計算している人を何人か見ていると、そのエネルギーを電力に変えることはできないかしら、と思ってしまいます。

そんなことを思い出して、いなくなった彼も、日々のうっぷんを電力に変えて売ることが出来たらすっきりとやっていけたかもしれない、などと妄想してしまいました。そんなのエコじゃねーよ、と彼に叱られそうですが(元気でいてください、また会いましょう)。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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