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「誕生日の目標」

茶屋ひろし2010.07.22

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五歳の頃に好きだった歌は寺尾聡の「ルビーの指輪」でした。歌詞のストーリーを理解したのはもっとあとで、自分の誕生石をルビーだと歌われていたことに気がついたのは大人になってからでした。「うさぎおいしい」じゃないけれど、幼い頃に覚えた歌は理解に時間がかかるものなのでしょうか。かといって、いまだに、「そうね 誕生石ならルビーなの」と言われてもピンと来ません(言われているわけでもありませんが)。
そんなわけで、七月は私の誕生月ですが、二丁目で飲み始めて数年が経つと、知り合いも増えてきたせいか、今年はやけに七月生まれに出会います。
もともと職場のオーラちゃんと一日違いで、前々回に書いた大トラのトラ子ちゃんも一日違いで、いつも行くバーのママが一日で、先週お祝いした友達がいて、いつも来てくれているお客さんには今日、誕生日だと告げられて、そういえば昔付き合っていたクロも先週で、その日ビデオ屋に現れて「祝ってくれよ」と呪詛のように言われて、べつのゲイバーの周年パーティのお知らせメールが携帯に入るとそれは私の誕生日で、明菜様も先週誕生日を迎えられて・・、ああ、忙しい、なんか気持ち悪い、といった感じです。
ここ三年くらいは一日違いのオーラちゃんとひそかにプレゼント交換を続けていますが、大学生の時の友達とは最近まで、学生時代も含めるともう十年以上、プレゼント交換を続けていました。彼女の誕生月は晩秋です。それよりもっと長いのは高校の時に好きだったクラスメートで、携帯を持つ前はじっさいに会ったり葉書を出したりして、そのあとはメールでお互いの誕生日を祝ってきました。彼とは一週間違いです。
オーラちゃんとの交換祝い(?)が始まった頃から、大学生の時の彼女と高校生の時の彼から、プレゼントやメールが来たり来なくなったり、しはじめました。
会わなくなったり普段の連絡がなくなったりして数年たったことも関係しているのかもしれませんが、いよいよこのふたつの関係は次のステージへ向かうのかしら、などと思っています。
彼と彼女の存在は二十代の時の私にはとても大きなもので、私の体の左半分は彼で右半分は彼女で出来ているわ、と以前ビデオ屋の初代ポチに説明したら、「そういうの、気持ち悪いっす」と今の二代目よりもそっけなく答えました。
私にとって彼と彼女(存在が近すぎてあえて仮名はつけません、二人は互いに面識はありません)は対照的な存在で、彼はずっと中学生でいたい人で、彼女は他人の面倒見がいい人です。彼が夢をあきらめて就職してしばらくして、かなり精神的に落ち込んだ時期がありました。左に彼、右に彼女で、その間に存在していたような私は、彼女の面倒見の良さを彼に与えなければならない、といった様子で、シーソーが左に傾くように、彼女のように彼の面倒を見ようとして、彼に拒絶されました。
当時、そのことをかいつまんで父に言うと、「おまえがその彼女のようになるには百年早い、ゆうことやな」と言って笑われました。
いや、しかし、その通りで、私が実は名ばかりのオカマだからなのかなんなのか、これまでも弱っている男子に拒絶されることはよくありました。
助けてあげたい、だの、なんとかしてあげたい、だの、そういう気持ちがすでに傲慢であることを見抜かれてしまうのか、重いのかうざいのか、とにかく彼の弱っている部分に有効ではない、ということは、最近になって、ようやくわかりかけてきています。加えておそらく、これを機に恋人のような関係になれないかしら、と欲がにじみでてしまうところも避けられてしまう原因かもしれません。
これは、実体はゲイというところでしょうか。相手が弱っている女子だと、いっさいその手の欲望がなくなるので、フラットに適当に、距離も平気で置いて接することが出来て、返って良い状態が生まれたことが何度かあったような気もするからです。
本当に面倒見が良い人、というか、面倒を見るのが好きな人は、件の彼女でも、ゲイバーのママでも、相手の性別がどうであれ、その欲望を後回しに出来る人なのかもしれません。
そんななか、学生時代の別の友人が、東京に遊びに来るついでに、私と会う予定を組み込んでくれました。結婚してダンナと子どもが二人いるともちゃん(本名・・)は、家族でやってきて、妹夫婦の家に泊まるとのことです。その合間を縫って、二丁目で少し飲むことが出来ました。
「茶屋君、ぜんぜん関西に帰ってこーへんし、心配やからこの機会に会っておこうと思って」と笑います。
残念なことに当の私は、先週の扁桃腺をまたこじらせてしまい、あまり酒も飲めず、喉が痛くてほとんどしゃべることもできませんでした。
けれどよくしたもので、いつもの飲み友達(ゲイ)と偶然出会い、二人が意気投合してくれました。二人とも屈託がなくて思ったことをストレートに発言します。しかもそれがキツクなく痛くなく毒もなく、相手を(少なくとも私は)不快にさせることのない裏のなさです。頭がいいというのは、本当はこういうことを言うのだろうな、と思います。
声が出せないことも返って良かったみたいで、二人に散々、「茶屋君は複雑」とか「恋愛に奥手」とか「面倒くさい」と言われたい放題でした。
二人はとくに、弱っている男子にやさしくて、ともちゃんはかつて、飲み友達の彼は現在、二人が男子たちに頼られている現場を幾つも見てきました。しかも、ただ頼られているわけでなくて、その男子たちにちょっと惚れられているんじゃないか、という様子です。
うらやましい、知りたい、その技を知りたい、と密かにずっと思ってきました。
ストレートの意味合いが、私とは違うからではないかと思われます。
私もはっきり言う時がありますが、それはたぶん(今までに何人もの男子たちに言われてきましたが)、一刀両断、という意味で、ともちゃんと彼のストレートは、弱っている男子たちを切るのはもってのほかで、かといってすべてを黙って聞くわけでもなくて、もちろん説教をするわけでもなく、ただ、男子たちの発言でわからないことがあると、すぐに「それはどういうこと?」といちいち聞いていることにあるのでないか、私のように「ふんふん、わかった、だからそれはこうなのよ」と途中で勝手に訳さないで、ちゃんと本人の話として聞いてあげるところに慕われる秘密が隠されているように思います。
って、それって人として当然のことかもしれません・・書いていて気がつきました。
誕生日を迎えるにあたって、今年は、男子への対応において人間になりたい、と思います。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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