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「多数決の関係」

茶屋ひろし2010.10.07

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夏の初めに、今年は年賀状を書かなかったことを思い出して、くれた人にだけでも返事を書こうと、暑中見舞いの葉書を幾つか出しました。
しばらくすると、高校の時の同級生と小学校の時の同級生から、それぞれメールが来ました。
どちらも十何年ぶりです。
呼び方は、高校の同級生をタマ(男)、小学校をミケ(女)としておきます。
タマは短期出張で横浜にいる、ミケは連休に遊びに来る、ということで、それぞれと新宿で会うことになりました。
やだ、カミングアウトが続いてしまうわ・・とわくわくしていたら、職場のオーラちゃんが不思議がります。
「ずっと会っていなかった人でしょう?」「そうですよ」「なのにわざわざゲイだって言うの?」「はい。ん?・・変ですか」「よくわからないけど、その後はまたいつ会うかわからない関係なんだよね」「はい」「じゃあ、あえて言う必要もない気がするけど。なんで言うの?」「・・・」
びっくりさせたくて、おもしろいことが起きそうな気がして・・、私の動機は不純です。
そうか、と思い当たります。身近な人とより親密になるために、これからもお互いを理解して長く付き合っていこうと思うから、という、カミングアウトをするときの誠実さと、相手を選ぶ慎重さの話かもしれません。
無責任な「ピンポンダッシュ」のような話ではないわけです。
「最近思うのはさー、とりあえずカミングアウトする人って、言いたいだけなんだよね。相手の気持ちを考えていない感じがする」
オーラちゃんは「ピンポンダッシュ」に批判的です。
「だけ、ってこともないと思うけど・・」と私は少し言い訳をしてみます。
「仕事は何しているの? って聞かれたら、二丁目でビデオを売っている、って答えてしまうし、彼女はいるの? って聞かれたら、ゲイだから彼女はいないけど彼氏もいないよ、って・・こう、スルっと出てきちゃうんだよね」
「それもさー、仕事は雑貨屋、彼女はいない、で、ゲイって言わなくてもスルーできちゃうことじゃん」
「そうね。でもその場の会話で、お互いの仕事の話とか、好きな人の話が出来たほうが楽しいのかな、と思って言っちゃうのかも」
オーラちゃんと話しているうちに、こじつけのようになって来ました。そんなにうまいこと事がすすむのかしら、と言っている私が不安になる始末です。
高校の時のタマちゃんとは夜に三丁目で食事をしました。結婚して八年になる相手のことを「嫁ちゃん」と呼ぶので笑いました。子どもはいなくて猫と三人で暮らしていることは年賀状で知っていました。「結婚してどう?」とおおざっぱに聞くと、「家族がいるということはいいもんやで」と簡潔に答えられて、なぜか負けた気分になりました。
タマちゃんの仕事の話を聞き(エリート!)、「高校のときが一番楽しかった」という懐古を受けて、いつかやってみたいことの話にすりかえてみたりするうちに、食事も終わりに近づいていました。タマちゃんの話ばかり聞いていて、自分の話をしていません。
タマちゃんは、自分の話しかしない、人の話を聞かない人ではなくて、聞かれたことには答えて、相手が言わないことは聞きださない、という人です。
そういえば高校のときもそうだったわ、と思い出しながら、このあとゲイバーで一緒に飲むことを予定していた私はタイムリミットを感じて、「さて、私は何の仕事をしているでしょう」となぞなぞを出してしまいました。不自然きわまりありません。
「そうやなー、新宿で働いている、っちゅうてもなー、見当もつかへんわ」と自然な答えが返って来ます。
「うん、そうやね。あのな、二丁目で働いているねん。ゲイってわかる? それやねん、私。これから私たちはゲイバーに行くねん」と、一気にはしょって言ってしまいました。
「そうなんや~」と酔いも手伝って状況を飲み込めないタマちゃんをつれて、いつも行く店に連れて行きました。
ママに、「こちら高校の同級生のタマちゃん。何年かぶりに会って、さっき、カミングアウトしたの」と紹介すると、「やだ、高校の時にこのオンナがそうだってことに気がつかなかったの? 信じられない」と大きく笑って迎えてくれました。
笑うしかないタマちゃんです。そのあとも、「ゲイっていつも女装しているわけでもないし、茶屋みたいなタイプは珍しいほうで・・、ノンケってわかる?」とママに場をさらっていただきました。「ピンポンダッシュ」な私は、そうやって自分の状況説明を他人に委ねてしまうようです。
酔ってきた私は、高校の時にいっしょによく、カラオケボックスに行っていたことを思い出して、当時歌っていたような歌をタマちゃんと交互に歌って、もう一軒行くことにしました。
今夜は私の家に泊まることになっていたため、終電もすでになく、逃げられないタマちゃんです。
次の店のマスターにも、「茶屋が初めて出会ったゲイなの? 絶対今までまわりにもいたはずだよ。でもこのタイプで気がつかなかったら、そりゃ、周囲のゲイには気がつかないよね」と、ゲイ視点のトークをされていました。
その場のマジョリティ、って怖い。
今にして思えば、ゲイバーは一軒で十分だったような気もします。
ずっとニコニコしていたタマちゃんの心境がどうだったのかはわかりませんが、酔いながら私は、タマちゃんに対して高校のときから性的な興味も恋愛感情も抱いたことはない、ということを説明していました。
タクシーで家に帰って、「なんか着替える?」と着古したTシャツを出したとき、「うん。それで、それ着たまま明日帰るから」と、タマちゃんは初めて自己主張をしました。
そうなの? と不思議に思いましたが、「どうぞ」と答えました。
翌朝、タマちゃんは本当に、そのTシャツのまま、「じゃ」と家を出て行きました。
それはいつか、鳥取土産でもらった目玉親父のTシャツでした。タマちゃんに今度いつ会うのかはわかりませんが、目玉親父にはもう会えない、ということはわかりました。
(・・続きます。すみません)

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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