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「DRAMA!」

茶屋ひろし2010.12.31

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以前発売された中島みゆきのアルバムタイトルを、タイトルに使ってしまいました。
ハッとするタイトルをつけることが出来る人に憧れます。
やっぱりコンサートに行きたかったなー、と思っていると、ビデオ屋のお客さんが、 「行ったよー。どの歌も良かったけど、『時代』で泣けた。あの歌って、テーマが普遍的じゃない? この年(推定、48)になって聴くと、また格別だったね」と話してくれました。
「家に帰ってもう一度味わってみたいなって、『時代』を歌っている様子をyoutube で検索したら、ほら、あの人、YAMAHAじゃない? そこの社長か会長の告別式の映像が出てきてさ、祭壇に向かってアカペラで歌っているの。それがすごくよくて、また泣いちゃった。見たほうがいいよ」と薦めてくれました。
彼がコンサートに行った日に、私はクラッシックのコンサートに行っていました。前 夜にピアから中島みゆきの当日券のお知らせメールが来ていて、行こうと思えばまだ行けるのかしら、なんて思いつつ、当日の夜はピアノ演奏を聴きながら、今、東京のどこかでみゆきが歌っているんだわ、と思って、というか、東京では一晩にいろんなところで様々なコンサートや舞台が上演されているのね、と気づいて、ピアノの音色
も相まって、なんだか壮大な気分になりました。何度か帰りの飛行機の窓から見たことのある東京の夜景か、テレビで見たことのある夜景なのか、わかりませんが、それを俯瞰しているような気持ちにもなりました。
今年ももうすぐ終わりということで、秋から冬にかけて気になっていたことを、つらつらと思い浮かべて書いてみようかと思います。
11月の始めに中森明菜が体調不良で活動休止のニュースが流れて、そのあと私は入院して、職場のオーラちゃんに、「さすが、ファンだね。呼応している」とからかわれて嬉しくもありました。ファンとしては、ゆっくりやっていってほしい、と思います。
12月の終わりの今は、別の理由で活動休止した宇多田ヒカルのベストアルバムを職場で流しながら、切ないねぇ、と歌詞と歌声に染み入っています。宇多田のウタダは、歌だ! のウタダだと思います。
10月は、ひさしぶりに木皿泉、脚本のドラマが始まって、その『Q10(キュート)』を毎週かかさず見始めました。やっぱ、台詞がいいわ~、と思って、合間に『すいか』、『セクシーボイスアンドロボ』、『野ブタをプロデュース』と、これまでのドラマをすべて見なおしてしまいました。『すいか』以降のドラマは、この『Q10』を含めて、十代に向けた教育ドラマになっているんじゃないかしら、と思います。
『宇宙で私を救えるのは私しかいない!』とか、『人は試すものじゃないよ、育てるものでしょう』とか、『人はね、刺すもんじゃないの。ほんとは抱きしめたいんでしょう? だったら抱きしめるの!』(これは『すいか』か・・)、と箴言があふれています。それらに30代の私も救われています。
今回の『Q10』も、そうした言葉がちりばめられていて(それは見ていただくとして)、ただ、視聴率が良くなかったのか9回で終わりました。最終回は大急ぎの展開になってしまって、それはそれでおもしろかったのですが、最初の頃のゆったりとしたペースも好きだっただけに少し残念でした。
<人と関係をつくり始める年頃に興味があって、それで十代を好んで書いていて、それが恋の形をとることがあるので恋愛の話が多くなってしまうけれど、私は「恋」を書きたいわけではないんだと思う>
というようなことを、80年代の終わりに、漫画家の岡崎京子さんがインタビューで答えていたのを読んで、おそらくたぶん、まったくその通りではないと思いますが、それからずっと、そんな形で記憶していて、事あるごとに思い出します。
木皿泉さんも、いわゆる「恋愛ごと」を中心に据えることは避けているような気がして、けれど、ジェンダーを脱色させたような「恋」はいつも登場するわ、と思って見ていたら、今回はなかなか「恋」の話で、
『話が合うとか、一緒にいて居心地がいいとか、そんなものは恋とは言いません。恋っていうのはね、自分の常識がひっくり返るようなことですよ』
というような啖呵を切る薬師丸ひろ子が出て来るくらい「恋」の話でしたが、主人公 の男子高生が恋をする、可愛い女子高生でロボットの設定が、どうひっくり返っても、ウチのビデオ屋で売っているオナニーグッズに描かれた、ロリータアニメの女の子の世界観と結びつかないように描かれていることに、さすがだわ、とその手腕に感動しました。
それで、『すいか』が向田邦子脚本賞を受賞したことをふいに思い出して、どうして向田邦子だったのかしら、と、放送が終わったあとTUTAYAに行き、今度は向田邦子のドラマを借りて見始めました。冬に正月、この季節にぴったりです。
向田邦子さんの描く世界は父親が一番偉い社会ですが、私はいつも、そのことに反応する前に、ドラマの圧倒的な面白さに打ちのめされて終わります。
それは、ジェンダーの保全に再生産、あるいは、諦観に達観が目的ではなくて、どの作品も、ジェンダーに右往左往する人々が落としどころになっているからかしら、と思います。そういう意味では、時代は進んだとはいえ、視聴者の私も例外ではありません。月並みな言い方ですが、その右往左往が「愛しいこと」として描かれていることが、ジェンダーバイアスを注意深く取り払ってドラマをつくる、木皿泉さんの仕事に繋がるような気もします。その時代、時代で、出来ることをする、という二人の作家に共通する姿勢に憧れます。
先日、飲み屋で隣に座った女の子が、「彼氏と付き合って4年たつし、私ももう29だし、そろそろ結婚したいんだけど、最近彼氏の母親が宗教に入っちゃって、なんかイライラしちゃう。知ってる? 念仏教」と聞くので、「知らなーい」と答えて、家に帰って、借りてきたビデオの『阿修羅のごとく Part?』を見ていたら、『ナンマンダブ ナンマンダブ』と唱える続けるおばあさんたちが20人くらい出てきて驚きまし
た。
* 今年も読んでくださってありがとうございました。来年はちょっと新しいことに挑戦させていただこうかと思っています。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは皆様、良いお年を。  茶屋ひろし                  

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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