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神輿男のケツ

田房永子2011.09.22

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 私は子供の頃、全国から観光客がやってくるようなお祭りと神輿で有名な東京の下町に住んでいた。母は祭りや神輿は好きだが、神輿をかつぐ男達のことは嫌 悪していた。フンドシ姿(ケツの肉丸出し)で汗を飛び散らせ高揚し、周りの人たちが自分をカッコイイと思ってると信じて疑わず、「THE 男!!!」な蒸 気した眼で「どうだどうだ!」と得意気な様が、気に入らないようだった。母は、神輿男たちの様子から「俺のマラでヒィヒィいわしたる、どんな生意気女もコ レさえ与えときゃあ大人しくなりやがるんでぇ的、江戸っ子セックス」を連想し「ああいう男の人たちは嫌」と言っていたと思う。その真意とは無関係に、私も いつの間にか「神輿男嫌い」になってしまった。
 先日、出向いた先で祭りをしていて、たくさんの神輿に遭遇した。私はなんとなく、「神輿男」を目に入れないようにしている自分に気付いた。それは、目に も入れたくないほど心底嫌いなのか、「改めて見ると神輿男、意外に良いかも」と思ってしまう事で現在絶縁状態の母との唯一の共感ポイントを倒壊させること に怯えているのか、分からないが、神輿を見るとき、その全体を漠然と視界におさめるようにしている自分に気づいた。
 だが、この日はいつもと違った。前方からこちらへ近づいていくる神輿をボンヤリした視界でとらえている時、ビシーッと一人の男だけにピントが合った。そ れは、神輿男の顔としてポピュラーな“寺島進系”ではない、石川遼君みたいなツルンとした顔でがっしりした体を持つ24~5歳くらいの男子だった。数秒の 間に「わっ! イイ!」と思い、ジーッと見てしまった。
 そして神輿とすれ違った後、自分の顔がグンッ! と音が出る勢いで勝手に後ろに回り、遼君似のケツを自分の眼(まなこ)がギン! と確認していた。遼君 似のケツはダルダルしたすててこ? のような布に包まれており、「なんだ、あの布は(フンドシじゃねえのか チッ)」と思った。そんな自分に超驚いた。
 「カッコイイ男子発見」→「即ケツを確認」→「フンドシじゃないから生ケツが見れなくてガッカリ」なんて行動、今までの自分史にない。明らかに自分の中の中年細胞が活性化している事実を肌で感じ、ショックだった。
 この戸惑いをツイッターに書き込むと、見知らぬ男の人がこう話しかけてきた。
 『男が綺麗な女性見たときスタイル(胸、尻、胴、脚)を見て納得するのと一緒ですね、それは酸いも甘いも知りつくし景色や美術品を眺める心境なのでは? 他意(エロ)はなく純粋に!』。
 私は、遼君似のケツを確認した時の自分が、美術品を眺める時と同じ心境だったとは思えない。もっと粗雑で野蛮。たまたま通りかかった商店街の激安店で人 が群がってるからなんとなく混ざって特に欲しくもないものを買ってしまう時の心境に近かったと思う。つまり「もったいないから見ておく」という感じだっ た。それは、その人と性的な縁はないだろうから、せめてその人の性的な部分(生ケツ)と少しでも関わりを持っておきたい、という、人間として“卑しいラン キング”かなり上位の動作だった。その映像(若いケツ)を目で盗む、短時間で自分の水晶体に写し込む、に近い。ツイッターの人が言っている「美術品を眺め る」とはまるで逆である。
 オッサンが女子高生の生足とか、OLのシャツの隙間から見えるブラジャーを見てしまうのも、それと同じだと思う。「相手と直接的な性的交流が持てない」 と自覚しているからこその行動。その時の「見る」は、とても一方的なものだ。それを「美術品を眺めるのと同じ純粋な行動」なんつって自分で肯定しちゃうな んて、私はしたくない。だって、見られてるほうは私の目つきにそんな印象を持つはずがないもの。
「神輿男のケツ」
女向け商品度★★★☆☆(個人的に)
「女の人の体は美しいじゃないですか。美しいものを見て感動するって、人間として豊かなことでしょう」とか言うオッサンに限って平然とギンギンに勃起してる傾向ある度★★★★★
「酸いも甘いも知りつくし」た中年は、エロを超越して「美」として認識する、なんてこと言う人まったく信用できない度★★★★★

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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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