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「おーい、とめとけー」

茶屋ひろし2012.06.14

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大飯原発、止めといてー。安易な再稼動の前に考えなくちゃいけないことがたくさんあるはず、一緒に考えるからさー、と脳内でじたばたしています。
首相が最終決断できるって、なによ。無力感にも襲われます。
路線を変更しなくてはいけないことはたしかなのに、野田内閣、経団連、電力会社は事故前のやり方を進めています。
「集団自殺」しないために「国民の生活を守るため」に「脱原発依存」だったんじゃないの? なのに、動きはどんどん逆戻りしていきます。
これらの言動の矛盾はわかりやすすぎませんか。電力不足も、計画停電も、石油高騰もそれらの虚実がばれているのに、福一は収束していないし、事故調査は散々だし、料金値上げも疑問視されているのに・・、化けの皮がはがれたことに気がつかないまま右往左往している妖怪たちを見ている気分です。
巷のニュースが伝えることは、刺青がどうしただの、口元チェックだの、飲酒は家でだの、河本のオカンバッシングなど、他の政治家たちの言動もあきらかにおかしくてどうでもいいことばかりです。
停電になったら命を落とす人がいる、とか、本当に受給を必要としている人のために、とか、「弱者」の使われ方もムカつきます。
前に、杖をついて歩きづらそうにやってくるお客さんがいました。年は七十代かそれ以上かわかりません。彼は、いつも雑誌を一冊買ってくれるのですが、どうも始終、不機嫌です。口をへの字に結び、眉間に皺を寄せています。カウンターに雑誌を放り投げるように置きます。乱暴です。けれど、こんなに身体が痛くて動きにくいのは、お前のせいだ、とでも言うように私を睨みます。こういう人に、同じテンションで接すると、状況が悪化するので、私はシンプルに応対します。むかつかない、笑わない、ないがしろにしない。商品を手提げに入れて持たせます。持っていた傘が床に落ちたら拾って渡します。
しかしなんでこんなに不機嫌なんだろう、とは思っていました。
ところがある日、ひさしぶりに姿を現した彼は別人のように変わっていました。目を細めてにこにこして、「すみません」を連発して、居丈高がへりくだりに、というくらいの変わりようでした。頭でも打ったのか、と思いました。それも、なにか今までの行動を反省して、というようなことではなく、実際に転んでぶつけたか、という気がしました。
この人から思考がなくなったように思いました。まだ不機嫌だったときのほうが、人間だったような気がしたのです(失礼ですが)。
「人って、変わるのね」と職場のオーラちゃんにそのエピソードを語ると、「じゃあ、チップさんも変わるかもね」と返されて、それは、今までのやり方が通用しなくなったから変えた、意志の疎通があったという意味じゃなくて・・、と言いよどみました。今にして思えば、何かのショックで連続性が断ち切られたら変わる、という意味でした。
「昨日チップさんが来たよ。それでまた人がぶつかったの。そしたらあの人、我慢したんだよ。ぐっとこらえて、その場を離れたの。おー、伝わった、と思って、帰り際に、先ほどはこらえていただいてありがとうございました、ってお礼を言ったんだ。こちらの気持ちを考慮していただいたかと嬉しく思いました、って。そしたら、いつもは同じことを何回も言うのに、『おう、店の中で騒いじゃ、まずいからな』って一言、言い残してさらりと帰ったの」
オーラちゃんが報告してくれました。
伝わった? 変わった? もう大丈夫?
簡単にはそう思えなくて、そのエピソードに距離を取ります。
あの人、気分次第だからなー、今日は我慢しても明日はわからないんじゃないの?
これまでのことを俯瞰してしまいます。
そうこうしているうちに、チップさんは距離を縮めてきました。
ある昼下がりに、ゴミを出そうと表に出たら、チップさんが目の前に現れました。
とっさに私は笑顔で、「こんにちはー」と言ってしまいました。
「買い取り、いい?」とDVDの入ったビニール袋を持ち上げたチップさんを、「どうぞー」と軽く引き入れてしまったのです。
どうした、私? また始まってしまったか。リセットされてないよ、まだ。
混乱しながらも普通に対応して、以前のようにお菓子とチップをもらってしまいました。
癒着の日々が再開されてしまった、可愛がられて死ぬよりは嫌われて死んだ方がまし・・、ぶつくさ思っていると、オーラちゃんに、意識しすぎ、と笑われました。
一度来ると、毎日来るチップさんです。あまり干渉しすぎないように、手元の作業を続けながら、チップさんが店内にいる時間を過ごします。二日目、三日目・・と、チップさんは人にぶつからないように、当たっても怒鳴らないように気をつかっていることが確認される日々が続きました。それは初めて出会った頃の動きです。リセットされたというより、初期化されたみたいです(ん、同じ意味ですか?)。
「今のところ、大丈夫です」とオーラちゃんに報告します。「ぼくのとき(時間帯)も平気」とオーラちゃんも答えます。
まさか変わったか・・、と思いながらある夜、自転車で帰宅していると、コンビニの前で警察官に囲まれているチップさんを見かけてしまいました。
ウチの店ではしなくなったけど・・、と変わっていないチップさんを可笑しく思いながら通り過ぎました。
日本ではもう原発やめたけど・・、まずはそこからだ、と思います。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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