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「積極的受け身」

茶屋ひろし2012.07.10

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原発ゼロをあきらめない、オスプレイいらない怖すぎる、ニコンひどい。
家の雨漏りが気になる、出てきたお腹も気になる、今年の短パンの丈は膝小僧が見えるくらいって誰が決めたの、プラダを着た悪魔かキクチタケオか・・、気になることが多すぎて、とりあえずビデオ屋で若い男子たちの膝裏を眺めています。なんだか、ひさしぶりにそこを見ている気もします。脛毛はぜんぶ剃っている子と、気にしない派に分かれています。
去年辺りから出てきた下腹には、美木良介のロングブレスダイエットで対応しようとしていますが、効果のほどがよくわかりません。大きく息を吸って吐いて、とやっているときだけ平らになっています。
雨漏りは押入れの桟を伝って落ちてきます。外壁のヒビから浸水してくるようで、どこが原因なのかもはやわからないと業者が放り投げた、二軒隣に住んでいる大家さんもビル全体を塗りなおすことはしたくないと言い出し、築四十年なのよ、もう壊したいのよ、でもおじいちゃんが、俺が生きているうちは壊すな、って言うのよ、今年からホームに入ったんだけど、それがあなた、月二十五万もかかるのよ、だから茶屋さんにはいてほしいんだけど、雨漏りする部屋ではあまりにも申し訳ないでしょう・・。
現在空いている他の部屋はすべてすでに漏っている。移ることもできない。それで家賃が二千円値下げされました。お金はないので引越しもすぐにはできません。
大雨のたびに気になります。じっとしていてもしょうがないので、ペットボトルで樋をつくろうかしら、と二リットルのお茶を飲み続けています。
仕事が終わって、ときどき職場の姉さんと食事に行きます。誘うのはいつも私からです。最初はタイミングがわからなくて、断られることもよくありました。そのうち、「今日は食事に行きたいのよオーラ」に気づき始めました。それを姉さんが言葉にすることはありません。私からの誘いを待っているわけです。今ではそれがほぼ的中するようになりました。
その話をゲイバーのママにしたら、「めんどくさいわ」と一蹴されましたが、私はそれにもう慣れてしまっています。
職場のオーラちゃんと、「しかし、なんだろうね、それ」と話し合っていると、「茶屋ちゃんの友達ってそういう人多くない?」と指摘されてしまいました。
たしかに、私が仕事を終える頃にふらりとやってきて、「食べに行く?」と私が言い出すのを待っている人が三人くらいいます。もちろん、ダイレクトに誘って来る人もいますが、こちらは二人くらいです。まあ、数的にはぎりぎり「待ち子」が優勢です。
そのとき誘わなければ、あっさりと別れます。姉さんもそうです。
「自分から誘って断られるのが嫌なのかな」「傷付くのかな」「私が行きたい時に誘う人だから、その私が言わなければ、今日は行きたくないんだ、となるのかな」「ある意味礼儀正しい? 彼らの流儀?」「私は『誘われるいい女』宣言?」「誰もが放っておけないの、よ?」
たしかに、話がだんだん面倒なことになっていきます。
この先も話題になるだろうから、とりあえず名前をつけておこう、ということで、私たちはその態度を「積極的受け身」と名付けました。積極的だけどあくまで受け身、積極的な受け身、メッセージを発しているけど、声にはならない。
二十万人デモとは大違いの方法です。
二十万人(弱か)の人たちが首相官邸前に押しかけて抗議したニュースの空撮写真を見ながら、「Bzのライブって三万人くらい? ドリカムは?」と規模を把握するのに手間取ります。石原慎太郎に票を入れた人が二百六十万人とすると、百万人くらい集まってもいいんじゃないの? と思ってみたりしました(なんの比較)。
食事に誘うわけでもなく、買い物をするわけでもなく、ただだべりに来る友人に、「来春、東電新卒四百人採るんだって」と読んでいた新聞記事をそのまま伝えて、「ていうかあの会社に新しく入ろうと思う人が四百人いるかもしれない、ってところが驚きだよね」と言うと、長年ゲイリブに携わってきた彼は、「私も四十を過ぎて、このごろやっと、世の中にはいろんな人たちがたくさんいるんだ、ということがわかってきましたよ」と苦笑しました。
そうですね、私の職場でも、原発いらないとか言っているのは、八人いて私一人だけですからね。などとクールダウンしてしまいました。オーラちゃんは慎重派です。
だからテレビのニュースで取り上げたら機運もあがって規模も拡大するかもしれないのに、とか、そもそもなんで報道しない、という方法や批判もわかります。
ただ、テレビが本格的に乗り出したら、ブームになって終わりそうで、少し懸念します。これは、あの時は盛り上がったよね、なんだったんだろうね、になってしまってはいけないと思う課題だからです。テレビっ子の私はすぐその流れに乗ってしまいそうです。スギちゃん、もう疲れていませんか。そういえば彼も短パンでした。また、男子の膝裏に目を落としてしまいます。
最近のデモの出来方は、「組織じゃなくて個人が自分で判断して勝手に動いているところが素敵なところ、ってなんとかさんが言っていたわ」と別のゲイバーのママが教えてくれました。
そうですよね、そもそもテレビを見る行為が「積極的受け身」ですからね、と職場の話題と上手くつながった気にもなりました。
積極的に電気を使ってきたが、そのシステムには受け身だった、とも言えそうです。我ながら、恐ろしいことをしていたものです。それに比べたら姉さんの積極的受け身なんて可愛いものです。これからも誘いましょう。
一夜明けた七月一日、新宿でもデモが行なわれ、夕方、私の働いている二丁目を横切りました。ラップに、バンドに、先頭を行くフロートが若い。ずいぶん長いなー、とお店をほったらかしにして、列を眺めていました(八千人だったそうです)。最後のブロックは女性がマイクでコールしていました。
「電気は足りる、子どもを守れ、未来を守れ」
いっしょに頭の中で唱和していると、見回りに社長がやってきて、「原発原発、うるさいね」と不機嫌そうに言いました。一番身近な妖怪です。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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