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先日、海外から友達がやって来た。日本で会うのは初めてだ。その友達と数人の日本人女子との会話はお酒に煽られ、新たな議題へと移っていった。


議題:“アンティルの存在における違和感”
「私の国にはアンティルのような男はいない」
横にいる日本人も答える
「日本にもいない」
結局、私は世界的に珍しい“男”であると結論付けられた。

この場にいる人達すべてが、私が女として生まれてきたことを知らない。
海外から来た友人とは、深く話せるほどの言語を持たず、最小限の会話と、態度でしかコミュニケーションをとっていなかった。それでも彼女は私を「めずらしい男」と言う。彼女は私の第一印象を「この人何者?」だったと告白して国に帰っていった。彼女が帰った後、私は考えた。
“男と女の違いを感じるポイントとは?”

これまで、何度か女子から“普通の男”と違うと言われたことがある。でもそれは、私の考え方や、話し方、コミュニケーションの取り方といった、言葉から感じる違和感だった。しかし、今回は言葉からではない、言葉以外のものが、その友人の“違和感センサー”を鳴らしたのだ。それは何? 微かに残る女性ホルモン? 顔?
男と女の違いは、社会が作り上げた“男像”“女像”の違いだと私は思っていた。
ジェンダーってやつだ。しかし、ジェンダーで、私の友人の発言を裏付けることができない。もしかしたら、女には“女”を嗅ぎ取る同類探査機があるのではないだろうか? それは女にしかない機能。いざという時に自分たちを守る、見方を嗅ぎ分ける機能。遠い未来、女達の頭の中に“同類センサー”が見つかる日が来るかもしれない。

私なりにたどり着いた真理が、数年後、正しかったと証明される、と、いった経験を何度か体験している。例えばそれは中学生の夏。私は歯が動くという事実を発見した。右上の歯の数本が束になり、前歯に向かって移動しようとしていることに気がついたのだ。その結果、行き場のない前歯が、ずれるように上へと反っていき、その危機感から私は歯医者に訴えた。それは夏の日の午後。

「先生、あの右上の歯が左方面に動いていて前歯が出てきちゃっているんです」
そして医者は言った。
「歯は動きません。気のせいです。」
私の真理は医者に否定された。しかし、それが事実であると35年後に証明されたのだ。

何かのきっかけで、私は歯を欠けさせてしまった。虫歯になっていた歯だったために、医者は私の欠けた歯をさらに短くし、差し歯にしようと提案した。しかし通院がめんどくさく、歯医者から足が遠のき、再び歯医者に行ったのが1年後。医者に前回の治療の続きを頼むと、医者がこう言った。
「このままでは差し歯はできません。無くなった下の歯をかばおうと上の歯が伸びてしまい、差し歯を入れる長さがありません。」
歯が伸びる・・・・・私は目を輝かせて質問した。
「先生! 歯は、歯は、伸びたり動いたりするんですか?!」
医者は、深く息を吸い答えた。
「歯は動くんです。」
35年ぶりに私の真理は真実と証明された。実は私にはこのような経験が多々ある。
私は30代の頃まで、“何かが自分に憑く”という感覚を自覚することができた。
そんな時に、私はある方法を使ってそれを取ることにしていた。その方法は誰かが教えてくれたものではなく、自分で自然に覚えた対処法だった。今ここで、その方法を披露するのは、効果が薄まるような気がするのでできないが、それなりの効果を発揮していると感じる簡単なオリジナル対処法である。先週、辛酸なめこさんの本を読んで驚いた。そこには霊を取り除く方法として、私がやっていたような方法がよいと書いてあった。霊という不確かな存在に対する、自然発生的でかつ、ごくプライベートというか、個人的儀式というか、そういう密室的なものなのに対し、同じ目的で同じような“儀式”をする人がいるということにどんな説明をつければいいのだろう。

最後に将来証明されるだろう有望な現象を一つご紹介しよう。それは膣と口、膣を濡らす液体と唾になんらかの深いつながりがあるということだ。

5年前、その真理は突然、私の前に現れた。いつものようにAVを観ていると、膣ではなく、口に変化が現れたのだ。膣が濡れる感覚とまったく同じように、溢れる唾。興奮が最高に達する頃、私は自分の唾で窒息しそうになった。その日からだ。私は性的刺激を味わうと、口が濡れるようになったのだ。しかもその濡れ方、液体の粘度、早さは、膣液と同じなのだ。今、だれも、何も証明されてはいないが、膣と口、膣液と唾、興奮と粘液についての新解釈がきっといつかなされるだろう。
「口も性的興奮で濡れるんです。それは唾ではなく、新たな液体なのです!」
そんな発表を産婦人科で聞くことができる日は、そう遠くないはずだ。

カラダは何でも教えてくれる。しかし、私はこうとも考える。これまでもっとも嫌だと思ってきた普遍的思考。それは、例えば“男と女”の違いなど人間が作った役割の上の妄想で、身体的な違い以外、生まれもって持っている“男的なもの”“女的なもの”などたいしてあるわけがないというような考え。しかし、オンナのカラダに存在する男と女を区別する“同類センサー”を肯定すれば、このような考え方に反するのではないだろうか?
そう書いている時見上げた窓の向こうにカラスが見えた。

「そうか!これはダーウィンの進化論だ」
「何万年の時の経過を待たずにしても、生まれもってない機能であっても、オンナはその一生の中で、何万年分の進化をとげて同類センサーを作るのだ!」
その瞬間、ガラパゴスに横たわるトカゲの群れがオンナ達の姿に変わって見えた。危険を回避するためにガラパゴスの生き物たちのように世界で孤立したオンナの進化。生まれ落ち、男からの危険を察知し、その危険度に会わせて進化する同類センサーは、オンナなら誰にも持つ可能性がある身体機能なのだ。オンナが生き抜くためには危険を感じ、仲間の存在を教えてくれる力が必要だ。その力が私達にはあるではないだろうか。

これが証明されるのは何十年後なのだろうか? もし解明される時が来たら、オンナのその進化の原理にダーウィンの進化論ならぬアンティルの進化論と名付けてほしいものだ。

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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