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「BAREFOOT GEN」

茶屋ひろし2013.09.06

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連日の猛暑のなか、書店では「はだしのゲン」の売れ行きが好調でした。というか、関連本も含めて一時は棚がすっからかんになりました。あわてて全巻セットを二つ注文して、足りないかも、と翌日にさらに三セット注文しました。
ところが、松江市の閲覧停止が撤回になって、動きがぴたりと止みました。
そうでしょうよ、と受け止めました。その時は足りなくて発注したものの、商品が充実した頃にはブームは去っている・・、よくあることです。
ひさしぶりに雨が降って、ひんやりとした夜もやってきました。
きっかけは、「残酷な描写」ではなくて、日本兵がアジアの国々で残虐な行為をした、という史実はない、といった反「自虐史観」だったとか。
どっちにしても浮ついてるわー、という印象を受けました。
何が、注文しすぎた私が・・。いや、それは商売だからしょうがない。失敗していますが。
私は無思想です、と言う店長の下、右も左も、同じ話題なら同じ棚に収めていますが、「慰安婦」関連の棚に、サピオ編集の「慰安婦」本を並べることが、どうしてもできなくて、つい、SAPIO、WiLL、Voice 櫻井よしこ、の方へ持って行ってしまいます。
それで、「どこ行ったん? こっちにも置かなあかんやん」と気付かれて戻されています。
ついでにちらりと雑誌をめくると、産経新聞、しっかりしてよ、読む新聞がなくなるじゃない! といった内容で金美齢さんが怒っています。ひゃー、と閉じてしまいます。
こんなにはっきり何かを区別するようになって、これらをファンタジーではなく現実だと捉える人たちが増えていると思うと、ぞっとします。
幸福の科学や、5次元文庫、そしてウチの看板「赤旗」のように、誰もが一拍置いてしまう、というか、接するなら接する、という溜めのあるジャンルにしなければいけません。立ち止まって考えてみれば、ウヨクとも保守とも言い切れない、でも確実に存在するこのジャンルをなんと呼べばいいのでしょうか。
英霊? 大東亜? ニッポン・・バンザイ?
「万歳」はどうですか。これなら、よしこもビレイも怒らなさそう・・。
「すみません、万歳コーナーはどこですか?」「こちらに万歳関係の本はありますか?」
なんて、なるべくギャグにしてしまいたい気持ちです。
ギャグといえば、エロ本の表紙に登場する壇蜜の格好に、荷出しのときに毎回笑いがうまれています。タートルネックはまだいい(嫌だけど)、けれどこの緑色はなんだ、浅くも深くもなく濁っている、とか、このレオタードは生地が少なすぎてWコージの衣装になっているじゃないか、と同世代のスタッフでわかる話を交えて楽しんでいます。
エロというより、もはやギャグ。そのうち、女性誌では人生相談が始まって、「ソナエ」という終活雑誌の表紙にもなり(葬式や遺言、相続などについて備える雑誌、和服で登場、馬鹿売れ)、ギャグどころかオールジャンルになりました。
先日、アエラで北原さんが取材された記事を読んで、壇蜜のエロがギャグになっているわけがわかりました。(AERA  2013年8月12-19日合併号)
彼女は、「壇蜜」は空っぽで男のファンタジーをすべて反映させることができる、というようなことを言っていて、ということは、男のエロがすべてギャグだっていうことじゃない、と膝を打ちました。
というか、そうだったわ、と思いました。あまりにもギャグばかりなので、うっかりそれが本当のことだと思い始めていたようです。叶姉妹で一度目が覚めたはずなのに、またウトウトしていました。
オセロのように(中島さんのことではありません)、ギャグがすべてマジにひっくり返るまでは平和だと思っていますが、ロシアの同性愛者弾圧のニュースを見ていると、国が決めたら早いかも、と思います。
法律で同性愛(の表明?)が違法になったとたんに、市民によるゲイ狩りが行なわれているようです。ネオナチと呼ばれる男たちが10代の少年をリンチして、その映像をネットで流しているというニュースも知りました。当局は見て見ぬふりで、殺害された人も出てきました。観光客ですら逮捕できる法律も可決されたそうです。
安倍総理がネトウヨに持ち上げられていたニュースを思い出しました。巷では聞くに堪えないヘイトスピーチも止みません。
浮ついてなんかいない。俺たちは真剣なんだ。マジでそう思っているんだ。あいつらがおかしい。あいつらのせいで、俺たちが不幸になる。いや、なっているんだ。あいつらを殺せ!(つい主語を「俺」にしてしまいました・・)
辛淑玉さんは、「承認問題」だと言います。かつての若者にとっては正規雇用が社会に承認されることだった。それが今は、いつまでたっても叶わない。
「『韓国人を殺せ』とは、せめて『私は日本人だ』と承認して欲しい、という願望の表れなのだろう。」 (『その一言が言えない、このニッポン』 七つ森書館 2013)
人を殺さなければ自分が承認されない、承認されていないと感じて自分を殺す場合もあるのでしょう。自分を殺すか相手を殺すしかない世界・・、戦時中のようです。
って、追い詰められた時は、私もそういう気持ちになることもありました。
「はだしのゲン」を、今の子どもたちに見せたくない、という理由は表向きで、本当は自分が見たくないのだろう、と思います。それが反「自虐史観」で、自分が子どもの頃に見たくなかったのに見てしまった過去が、「残虐な描写」なのかもしれません。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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