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「ポルノ書店」

茶屋ひろし2014.04.01

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書店で知った著者のツィッターを見ていたら、「民主書店にポルノが増えている」といった内容がありました。「民主書店」とは、共産党系の出版物を扱っている書店のことで、ウチの店を含めて全国にいくつかあります。
「そんなに経営が困難なのか」とその人はつぶやいていました。
文庫のなかでも官能小説の売れ行きが群を抜いている状況を思い浮かべながら、「ウチの話かどうかはわかりませんが」と会議で報告してみると、社長をはじめ社員の皆さんは「それはウチのことやないか」とげらげら笑いました。
困難な経営のようです。
 
先月は官能小説の版元さんが来られて、どこそこの店が閉まることになったため、梅田で取り扱っていただいている書店さんはこちらさんだけになります、つきましてはお客さんが増えると思いますので初回搬入の数を増やしてもらえないでしょうか、と言いました。
新幹線に乗る人たちがよく買うそうです。家には持って帰れないのか、そのまま駅のゴミ箱に捨てる人も多いそうです。
ジュンク&丸善(いつのまにか一緒に)、ブックファースト、紀伊国屋などの大型書店にポルノは置いていません。
社長室でオッケーが出たようです、と文庫を担当しているスタッフの女性は、報告ついでに大きく息を吐きました。彼女は毎朝、官能目当てのお客さんたちと格闘しています。
新刊が出る日は朝から棚の前に人だかりができるので、手早く並べようとしますが、そうすると「邪魔だよ」とその人だかりにはじかれてしまうのです。
 
欲しいのか欲しくないのかどっちなんだよ、と裏でいつも吼えています。
官能小説は万引き防止のために、出口でピーピーと鳴るスリップを特別にはさみます。その作業をそこから離れたところにある作業台の上でしていると、ちょっとその場を離れた隙に、今度はその台の回りに集まってしまうそうです。
ハイエナか、と彼女はうしろで、大きなハンマーを打ち下ろす真似をします。
 
私も二丁目ではエロDVDを売っていたので、その状況はよくわかります。新作の中古をレジでシュリンク(ビニールパック)している時から人は集まり始めて、棚に並べられたとたんに手を伸ばす、という男性たちをよく見てきたからです。それはエロに我を忘れる瞬間です(と思います・・)。
 
振り向けば時代小説の棚がある細い通路で、官能小説の表紙を見たとたんに顔をしかめる女性のお客さんもいるとか。
「私だ って、ウチの旦那の棚に並んでいたら、即効で捨てますけどね」とスタッフの彼女も笑います。
タイトルや表紙の絵柄はどれも似たり寄ったりで、それが500冊以上あるので、発注の際に、何が売れていて何がどうやら、よく混乱するそうです。
 
たしかに置き場所には悩むところです。どこにあっても浮いてしまうからです。ましてや、ウチは教育書も扱っていて、小学校の先生がたくさんやってきます。小さいお子さんを連れた先生たちがそこを通りかかったときは、素通りしてくれますようにと願います。
全体の割合からすると十分の一もないと思いますが、現在、梅田近辺の品揃えでは圧倒的ということで、ポルノが多くなったとつぶやかれても仕方のないことかもしれません。
 

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他の人のツイッターも見ていたら、「キャリアポルノ」という言葉に出会いました。それは書店の一角を占めている自己啓発書のことだそうです。
この呼び名を生み出したのは、May-Roma さんという名前の人で、『キャリアポルノは人生の無駄だ』(谷本真由美 朝日新書 2013)という本も書かれています。
たしかに、秒速で数億稼げるとか、なりたい自分になれるんだよ、とか、そんな夢を見ている間は気持ちがいいのかもしれません。所詮はオナニーってことね、とツイッターを続けていると、今度は「愛国ポルノ」という言葉に出会いました(出所はメイロマさんだったか・・、わかりません)。
たしかに・・! と膝を打ちました。前に『愛国は自己啓発』というタイトルのコラムを書きましたが、そうよポルノだわ、と思い直して、というかどちらもポルノだったら『ポルノはポルノ』になっちゃうじゃない、と可笑しくなりました。
 
愛国本というか、隣国嫌いの本は、まだまだ入荷され続けています。店長は売れたら注文します(私はようしません)。
「韓」の文字の上には、「嫌」「呆」「反」「犯」と付く言葉が止まりません。
店長には呆れられていますが、その手の本が各所にあるのが嫌で、「大東亜戦争」賛美に特攻賛美の本もいっしょにまとめる棚をつくったら、なんだか積極的に売り出しているみたいになったので、問題を提議しているポップもつくって貼って、棚も官能小説よりも目立たないところに設置しました。(もう、売らなきゃいいのに・・)
 
 
それでも「こんな本を置く必要はないと思います」と店長に強く言えないのは、ありえないような大きなおっぱいのイラストがついた官能小説の表紙を、「じゃあ、あれは差別じゃないんですか」と問われたら、言い返せないような気がするからです(言われてませんが)。
ポルノは差別という意味だったのかもしれません。
 
 
※写真は茶屋さんが勤める書店で茶屋さんが書いたポップ。
 
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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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