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「注意一秒、ニッポン晴れ」

茶屋ひろし2014.06.17

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いつも社長が帰った頃にやって来て、社長はいますか、とアポイントを求める印刷業者の男性がいて、スタッフの男の子からその報告をあとで受けたとき、名刺を見た彼が、「ナントカ会社のチョンです」と読み上げたので、ドキッとして、何も言えなくなってしまいました。
その日はずっとそのことがショックで頭から離れず、夜寝るときも唸っていました。あんないい子があんなことを言った・・、というのと、それをすぐにたしなめられなかった自分に対して、ショックを受けたのです。
今度、同じことを口にしたら言わなきゃね、と、それからはスタッフの彼に対して少し構えている状態が続きました。

 

前から思っていましたが、そういう差別語発言は、いつも不意に起こります。
そんなことを言っちゃダメ、は間髪入れずに言いたいものです。

 

そしてついに、その時がやってきました。うまく言えました。
ところが、「チョンは名前ですよ」と言い返されてしまいました。
えーっと、と言いながら、彼はレジの後ろの引き出しをさぐって、「ほら」とその業者の名刺を見せました。確かに「丁」さんで、読み方が「チョン」と印字されていました。
「それは失礼しました」と謝ると、隣で聞いていた別のスタッフが、「僕ら、そんな差別語は使いませんよ」と笑います。
よかった・・、と私は胸をなでおろしました。ずっと気に病んでいたことは失礼に当たるかと思って、言わないで済ませました。

 

過敏になっているのかしら、と思いましたが、ノイズの中から「オカマ」という言葉を拾ってしまう日常を思えば、それほどでもないような気がしました。

 

今回は誤解でしたが、すぐに「ダメ出し」が出来ないのは情けないことです。
「オカマ」と言われたならともかく、当事者じゃないならなおのこと、踏ん張らないといけないと、それはヘイトスピーチへのカウンター活動が教えてくれています。
やはり、そこで指摘したことによって「この関係」が悪くなることを恐れているんだわ、と思います。今度は、自分が標的にされることを恐れているのかもしれません。

 

それで、嫌われたならしょうがない(『あばよ』)、とは思いますが、書店では、『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健 ダイヤモンド社)という本が売れていて、そのタイトルには、勇んで嫌われなくてもいいんじゃないの、と思います。

 

けれど、販促の小冊子を読んでいたら、そういう内容でもないようで、トラウマが原因で部屋から出られないのではなくて、部屋から出たくないからトラウマを作り出しているのだ、と、トラウマを否定していました。

そうなると、昔、仲間はずれにされたことがあるからそんなのおかしいと言い出せないのではなくて、今、波風を立てたくないから、何かを恐れているということにしているのだ、となって、なんだか言い当てられたような気分になりました。

 

そういえば前の職場で、嬉しそうに、「チョン」という差別語を連呼する同僚がいました。
私はやっぱりその場で対応できなくて、別の人が「気持ち悪い!」と直接怒っていました。
最近ではバーのカウンターでヘイトしている子たちもいるよ、とゲイバーのマスターから聞いたこともあります。たしなめるけど、なんで怒られたのかわからないみたい、とか。
君たちも被差別者なのにね! と舌を噛みそうになります。

 

これはもしかして、「弱い者達が夕暮れ、さらに弱い者をたたく」トレイントレイン連鎖なのか、と思ったこともありましたが、このところ私は、差別するのが快感なだけだわ、と思うようになりました。

 

誰かを差別して排除して傷つけている人って、圧倒的に、楽しそうで気持ちよさそうで喜んでいるように、見えるからです。
それに加担したくないくせに、仲間はずれになるとか、自分がその標的になる、といって恐れるのは、その快楽には太刀打ちできないことを知っているからです。なぜなら、自分も使ったことがあるから。

 

だから、それを「気持ち悪い」と言ったオーラちゃん(前の同僚)は、正しかったと思います。異を唱えるには、あなたを気持ち良くしている言葉が私には気持ち悪い、と言うしかないからです。

 

昔、アダルトチルドレンという言葉が出てきたときに、「アダルトチルドレンじゃない人、なんているの?」と言った友人を思い出しますが、同じように、「承認を求めない人なんていない」「何にも依存しない人なんていない」というふうに繋がってしまって、(彼ら)が差別を撒き散らすのは、(彼ら)が社会の被害者だからではない、と、もう、思うことにします。


ちなみに、林檎姫はコスプレイヤーなので、『NIPPON』という歌詞が気持ち悪いなら、それはそのまま、あなたに見える、今の日本が気持ち悪いだけだと思います。そういう意味では、紙一重で言葉を選んでいるし(偉そう)、むしろ右傾化(NHK)に挑んでいる気がして、曲調も相まって、私には気持ちの良い歌でした。

 

 

 

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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