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女性器の存在の教え方

田房永子2015.10.05

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 3歳半になった子どもが、自分の性器を指さして「おしり~」と言った。

 あ、こういう日が来た、と思った私の脳に戸惑いが生じ、おしり・・・? そこはおしりじゃない・・・と思いながらも、口から何も言葉を発することができず、固まってしまった。
 確かに、お尻の割れ目と地続きになっているから、そのまま総称として「おしり」と呼んでしまう感覚は分かる。しかし、確実にお尻ではない。ちゃんと、排泄器官や生殖器としての女性器がついている。男よりも区別がつけづらい箇所だからこそ、ちゃんと教えなければいけない気がする。
 私はこれまでも、「生まれたばかりの女の赤ちゃんの性器の扱いがないがしろにされている」ことへの憤りを漫画などで発表してきた。(「ママだって、人間」河出書房新社・刊、このコラムでは「まんこの洗い方」という2012年8月の記事に書いた)
 そんな私でも娘の「おしり」の間違えを即座に訂正できなかった。う・・・うぐ・・・と息が詰まってしまった。

 男の子なら「おしりじゃなくておちんちんでしょ」って言える気がする。
 だけど言えない。それは、「おちんちん」のような全国共通で3歳児が呼んでもおかしくないほほえましくカジュアルな名称が、女性器にはないからである。

 思えば私も子どもの頃はずっと、「おちんちんがないもの=女性器」と認識していた。「女には、赤ちゃんが出てくる穴がある」という情報は、小学校の時にどこかで得た。それで、友達と話している時、「赤ちゃんが出てくる穴があるんだよね」って言ったら、みんな「はあ?」となって、「何言ってんの、やだ。エイコちゃん、赤ちゃん生まれてくるんじゃないの」と笑われたのを覚えている。
 女が赤ちゃんを産むというのは知ってるのに、どこから生まれてくるのか分からない、赤ちゃんがお腹にできたら、出てくる穴が出現する、みたいな認識だった。ちんちんにはちんちんという名前があるのに、女のは「おしっこが出るところ」とか呼んでた気がする。なんかおかしいと思う。
 体を知る、特に性器に関しての知識は、自尊心の栄養に直結してると思う。私はちゃんと、小さい頃から、自分の体にはどういった機能があって、どういった目的でついているかということを、そして、それが大人から狙われやすいという危険性も、ちゃんと教えるべきだと思う。

 だけど、そう思ってる私でも、言えないのである。だって、全国で統一された呼び名がないんだもん。
 深く考えることでもないか、と思って放置することもできるが、私はやっぱりどうしても、女性器がついてるのにないことにされる自分が受けてきた教育は繰り返したくない、と思う。それで、たいがい男の子は「おちんちん」だから、それと同じにして「おまんまん」でいいと思った。今度子どもが言ってきたら、「おまんまんっていうんだよ」と訂正しようと決めた。
 そしてそのあと、子どもが性器を指さし「おしり~」と言う場面が2回ほどあった。2回とも私は「・・・・・・」と無言でスルーした。

 なぜ、言えないのか。そこには私自身の不安があった。
「おまんまん」とかって勝手に私が命名しちゃって、それを子どもが外で言ったりして、「おまんまん」という言葉を他の女の子が覚えてしまったら、その子のママが困るんじゃないか? という、不安。風紀が乱れるんじゃないか?的な、風紀を乱すのが自分なんじゃないのか?的な不安です。意味が分からない。
 しかし、思い切って昨日、言ってみた。お風呂場で「おしり~」と笑う娘に、「おしりじゃないんだよ、おまんまんなんだよ。女の子にはおまんまんがついてるんだよ」と言ってみた。
 娘は数秒沈黙し、「・・・・・・おまんまん~?」と、教育テレビみたいに聞き返してきた。「うん」と私が言って、その会話は終わった。

「はっきり定まった名称がない」というのは、生まれたての時だけではなく、こんなに苦労があるんだと分かった。


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田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。

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