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「ブーメラン」

茶屋ひろし2016.01.05

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あけましておめでとうございます。

AEQUITAS(エキタス)の最低賃金を1500円にあげろというデモは衝撃でした。
最低賃金を上げろ、とか言っていいんだ、というのと、その金額の力強さにしびれました。

ウチのアルバイトの人たちは最低賃金の860円(20円上がった大阪)から900円くらいの間で働いてくれています。
うち二人が、この金額だったらこれだけしか働かない、と、働き具合を自分で決めていると聞きました。直接私に言ったのではなく、ほかのスタッフに言っているのを私が聞きました。
なんでそんな聞かれたら不味いことを、それを聞いたスタッフが私に言ってしまったかというと、その自分で決めているという彼と彼女の働き具合に不満が出てきたからです。
「あいつ、あんなこと言うてますよ」という非難でした。

それを聞いたとき、「それはけしからん」というより先に、確かに安いよね・・と気おくれしてしまいました。
怒らない私に告げ口したスタッフは不満げです。「私は時給云々で手を抜いたりしてないのに!」ということです。

いま職場では、ブーメランという言葉がはやっています。
くだんの二人の発言も不用意だけど、そんな、「手を抜かない」宣言なんてしちゃっていいのかしら・・この先自分を追い詰めない? なんて余計な心配をしたくなります。

みんなを正社員にできれば・・と、私もつられて不用意なことをつぶやけば、一連の話を聞いた同い年のアルバイトの女性はあきれます。
「時給とか非正規とかの問題じゃないですよ。仕事なめてるだけですよ」
そうですか、とりあえず時給1500円になってもそこは変わりませんか・・。
「一度上げると下げられへんで。注意せなあかん」と社長は言います。正社員の登用も、時給1500円アップも、そんなことしたら会社が潰れてしまうのが現状です。
エキタスの人たちは、中小企業に税金を回せとありがたい主張をしてくれています。

新人のアルバイトの女の子が、「入ったばかりで申し訳ないんですが、年末年始に二週間ほど休みをください」と言ってきました。どうしたの? と聞くと海外旅行に行くそうです。
どうぞどうぞ楽しんで、なんて言いながら、いいなー、とうらやみました。
ほかのスタッフの人たちが、羨みを通り越して不満を漏らし始めるのを聞かないふりをします。
おかしいのは彼女ではなくて、毎日毎日働いて、一年にたった二週間の休みも許されず、海外に行くこともできない賃金しか支払われない社会のほうです。

ほんと、税金はどこへ消えていくの・・。
取り戻さなくちゃいけない。ミンシュシュギと同じだわ。私たちのお金を私たちのために使わなくちゃいけない。

ということを念頭に置くと、「この金額じゃあ、これ以上働けねえな」という抵抗も飲み込まなくてはいけない気になります。
時給900円前後で生きている30歳前後のスタッフたちです。
だいたいのルールには従ってんじゃん、反発くらいさせてくれよ、と思うと思います。

景気の問題ではなかったのね、といまさらながら思います。税金の使い方の問題でした。ひいてはこの社会のシステムの問題。

それでも日々の仕事の中で、これ以上は働かない、と言う人といっしょにやっていくのは難しいことです。
年の暮れにわざわざ個人面談を始めました。

「この程度の時給で、こんなことを要求するのも申し訳ないんだけど・・」と前置きを欠かしません。
仕事をお願いしたらやってくれるのに、言われないとしないというところがあると思うのね。この一年間、私はあなたにさまざまな仕事をお願いしました。けれど毎回、これをやって、と同じことを頼んでいる私がいるの・・。もうそろそろ、今はこれをやればいいんじゃないかな、とわかっていると思うのよ。遠慮せずに思い切ってやってもらえないかしら。自分で判断して、みずから動いてくれないかしら・・。

勤務4、5年を過ぎた人へ、まわりくどい言い方です。
翌日、もう一人の社員に、「昨日の茶屋さんの話は、私にここを辞めろ、ということだったんですか」と問いただしたそうです。

当たらずとも遠からず・・、今年もよろしくお願いします。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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