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50歳に向かう人生の中でどう待ち、いつ、何を選択するか…

アンティル2016.03.23

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今の私はあの頃に比べたらとにかく気楽だ。毎日胸を潰し、息苦しく暮らす日々とも無縁だし、「あの人女?男?」と囁かれることも100%ない。私は完全に“ふうつうの世界”潜り込んだ。周りの人々も仕事場以外ではほぼ全員にカミングアウトし、髭を生やした“元オンナ”でも別に何も言われない。見かけの性別は男だ。

しかし、私は男になったのか?そう考えると答えは複雑だ。フェミニズムを知り、この社会が男のための仕組みだということを知るうちに、男嫌いは加速するばかり。鼻も犬並みに男臭に敏感になり、男が近づくと匂いで分かるようになってしまった。今日もスタバで両脇に男が座り、思わず席を変えてしまった。それほど敏感鼻になっている。昔はFTMなら男友達を一人でも多く作らなきゃと思ったこともあったが、今では5人いるかいないか。すっかりそんな気もなくなってしまった。なぜって?だって話すことないんだもん。

自己鍛錬と性別適合手術で、表向き社会から攻撃を受けなくなった私は、自分の中の乙女を解放した。雑貨大好き、ぺネロぺのポーチも使っているし、ロマンティティックな場所も好き。しかし、服はヒラヒラ嫌い。もうちょっと痩せてたら70年代のロンドンのモッズファッションでビシッと決めたい。化粧には興味ないし、肌の艶にも関心がない。
世間様が言う女性的なもの男性的なもの、そんな好みが混在している。そもそも趣味嗜好から性別を判定する方がナンセンスだけど、この観点から見ると私の性別は判明できない。そして、今の自由な自分、自由でいられる自分が好きである。

じゃあ、私は女なのか?心の性別はどっち?うーん本当にわからないというか、わかる必要、決める必要などないと思っている。ただはっきり言えるのは、「男が嫌い」「女が好き」というだけだ。しかし、世間というものは、曖昧なものを嫌いたがる。性別変更してパートナーと結婚できても、同姓婚は許されない。その性別変更だって、生殖器がないこと生殖機能がないことが前提になっている。以前は、性器の形成も変更事項に含まれていたけど、最近ではホルモン療法で肥大したクリトリスならいいらしい。これでも十分曖昧だけど、男は納得するんだね。

社会が男が勝手に性別の境界線を引きたがり、引き方を選ぶこの社会で、男の姿で男を嫌う私が自由に生きていても、女か男かわからない“不安”を社会に与えなきゃ、そこそこ今だって生きやすい。しかし、マイナンバーに性別が記載されていたり、もし私が死んだ時、パートナーに私に関する権利は何もない。いつ、「おまえはどっちだ!」と判断を迫られるかわからない。そんな不安はある。この1年でこれまで入国時、何も言われることのなかった外国で性別の確認で執拗に聞かれたり、からかわれたりすることが多いのも気になる。LGBTという言葉も知られ、身近な問題として持ち上げられているけど、理解は良い方向に進み続けるわけではない。いつ逆を向いて、私たちを攻撃するか、油断なんかできない。

「性別変えたら?」そんな忠告を友人から受けた。その時、私が感じた戸惑いはホルモン療法をするかしないか考えた時と似ていた。ホルモン療法を受けずとも、自分らしさやセクシャリティを社会から奪われることなく人生を切り開いたという自負と、「もうここまでがんばったんだからここは楽な方法でもっと生きやすくなったら?」という天から声の狭間で、私は自分を甘やかす後者を選んだ。結局楽になったし、自分らしさだってより開花した。ならば、「性別変更しちゃう?自分???!」
まったく考えもしなかった選択が頭をよぎった。

しかし心配だ。なにがって、安倍政権。戦争にまっしぐらなこの国で、もし男になったら軍隊に入らされるんじゃないか。それが心配。その次に心配なのは、社会的な枠組みの中で自分が嫌いな「男」に完璧になってしまうことだ。この世で一番嫌いなものが自分の中に入るような感覚とも言うか・・・。でも、そもそも性別の境界線によって分けられる男と女が、世間様が作ったマークのようなもの、スヌーピーかミッキーマウスかくらいの違いなら、性別が男になろうと自分が“男”になるわけじゃないでしょう。私は私。変わらない・・・・。
ホルモン療法のように。性別変更は生きやすくするための道具。そういう考えも頭をよぎる。しかし、なかなか答えは出ない。

ホルモン療法をして、私は今、少々後悔している。カラダが辛いのだ。男性ホルモンという異物を入れたことで私はカラダのバランスを失い、ここ10数年、カラダが楽な時がない。もし私が男という性別を社会から手に入れた時、その異物は私にどんな影響をもたらすのだろうか。そのことを考えると、そう簡単には決められない。同棲婚があるならば、マイナンバーに性別記載がなければ・・・・50歳に向かう人生の中でどう待ち、いつ、何を選択するか。でもこれだけは言える。心に性別なんてないよ。

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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