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LGBTという言葉がニュースに溢れる時代に生きていたら…

アンティル2017.01.25

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先日、LPCコラムサイトの編集者と話していて私はショックを受けた。

「アンティルって時代遅れだよね」

40数年生きてきて初めての言われようだ。

「今のLGBTの流れからするとアンティルって今じゃないよね」

今じゃないって何さ!

「男が嫌いだとか、今時、よく書くよね。どんなセクシャリティでもジェンダーでも共に未来をつくろうっていうのが、今のLGBTの理想。男が嫌いだと書いているこのコラムは時代についていってないよね。っていうか保守だよね、保守」

保守派のLGBT・・・・反論する前にインプットしなくちゃっ! と“今のLGBT”ってどんな感じなのか調べてみた。ありすぎてよくわからないので手当たりしだに見てみたけど・・・・どれもなんだか楽しそう。明るく生きているイケてるマイノリティで溢れている。苦労話が語られているものでさえ、読んでいる私にも爽やかな涙がこぼれそうになる。明るく!自分らしく!誇らしく!
・・・・それなのに私ときたら・・・・

一時は漫画化されるなど、このコラムも色んな方に読んでいただいていたようだが、確かに今読み返すと、このコラムに書いた私の体験は全く“今じゃない”。昭和の臭いがプンプンして“昭和館”という博物館があれば収監されそうじゃないか!観光客もこなそうな小さな町の郷土歴史博物館にある“〇〇村で昔、捕らえた体長2mのツキノワグマの剥製”と私がかぶってイメージできる。剥製のクマは私だ。ガラスケースに入れられたまま爪を剥き出しているクマ。誇りではなく私は埃をかぶっていそうだ。・・・こんなだじゃれも昭和だ。

多様性のある世界は住みやすい。私だってもしLGBTという言葉がニュースに溢れる時代に生きていたら、生きやすかったのだろうか・・・たぶんそうなんだろう。どんな男でも仲良くできるのだろうか??それはわからない・・・というか無理だと思う。私にとって男とは、この社会で女であることの大変さが理解できない人、手を押さえることなく「へーくしょん」と電車の中でくしゃみができる人、町で立ちションできる人、化粧する女ってみっともないといいながらハナクソをほじれる人、電車でビールを飲む人に違和感を覚えない人・・・この社会でいろんな免罪符をもらっていることに気がつかないそんな人・・・そんな男が私はやっぱり嫌いなのだ。

この“嫌い”は怒りを伴っている。怒ることを許すと怒りは止まらない。嫌いになるだけである。しかし、こういう怒りを誰かに向け、歩み寄って解決策見つけることをしないという行為は時代遅れなのかもしれない。前出のLGBTのサイトには怒りなんて微塵もないし、相手を尊重する寛大な心を求められている気になるばかりだ。

「いろいろあってもみんないい」「嫌いだって口にしなけりゃ仲直り」そんな標語もあるんじゃないかとも思える昨今、私は確かに“今じゃない”。“怒り”を持つことがスマートじゃないような、そもそもスマートさがまず求められるようなこの時代の雰囲気の中で私は浮いている。
でも、若いLGBTの皆さん、信じて下さい。私だって昔は怒っていなかった。男への怒りとして男と仲良くしようとしたし、男に同化するために男を肯定しようとがんばったことだってあったのだ。
しかし社会が発行する“男の免罪符”が当たり前の世の中で、当たり前でないよ!おかしいよ!と言葉にしたとたん、目の前の世界はまったく違う風景になり、腑に落ちて、その社会でうずくまる女達の顔が見えてきてしまった。そしてその中に私の顔もあった。私はいくら時代遅れだと言われてもその女達の顔を忘れることはできないし、怒りを捨て見えないふりをして楽に生きるなんてことはしたくない。“おかしいよ!”と言えるこの世界が一番暮らしやすい。怒り上等!魑魅怒呂結構!夜露死苦!!

余談だが最近、手を当てずにくしゃみや咳をする人が気になる。特に自己表現をするようにうるさい音を出す人。「ヘークション!」「ゴホオオオー」。中には自ら汚いものを体内から出すためにやっているのでは?と思うほどの威勢と威厳を持ってその行為をしている人がいる。そしてそれは男に多い。

昔、どこかの番組でくしゃみの実験をしていたのを見たことがある。暗い部屋でくしゃみ時に口からでる液体がどこまで飛散するかの実験だった。その液体は蜘蛛男のように放射線を描いて5メートル先まで液体を飛ばしていた。衝撃だった。エスカレータなんかで後ろでくしゃみされたら私の背中は素性も知らぬ者の唾液にまみれてしまう。私の仲間、よしこおばさんにその話をしたらそいうことをするの99%が男だというデータがあるという(ある日のよしこおばさん調べ)。納得だ。私はこういう人たちに自覚を促すために一人キャンペーンをしている。怒りをもって制するのではなく、享受によって男たちの悪習慣をなくす新たな試みだ。

まず駅などで手を添えずにくしゃみする人を発見したら、立ち止まりその人の顔を見る。そして小走りで逃げる。エスカレーターで同様の人を背後に見かけたら、後ろを振り返らず一段抜かし駆け上がり(下がり)すぐ先にいる人の前に位置換えをする。車内で発見したら即座に口を押さえ、隣の車両もしくは席を変える。もしくはマスクをつける。こういう行動をすると当事者よりその周りの人が「何があったんだ?!」と反応する。その反応により、ようやく当事者は気がつき、はっとする。啓蒙活動成功の瞬間だ。特に男が男に向ける視線に男は弱いようだ。

先日も車内で男がかなり派手なくしゃみをしたので、かばんからすぐマスクを取り出しマスクをしたら、隣の男も即マスクをした。それを見た男は隣の車両に移っていった。恥ずかしいと思ったのだろう。まずまずの成功だった。しかし失敗もある。昨日、地下鉄の長い登りのエスカレーターに乗っていたら、4段下の所にいた男がすごい咳きをした。唾まで吐いている。私は急いで10段先にいる人の前まで駆け上がった。そうしたら、その男も駆け上がってきたのだ。失敗だった!私は逃げる瞬間、その男を睨んでしまったのだ。こうなると明るい啓蒙活動は怒りを伴う争いに変わってしまう。男は私の一段上に立ち、私を睨み続けた。危ない!ここでくしゃみでも飛ばされたら大変なことになる!そう思った私は登りのエスカレータを下った。エスカレーターの上で仁王立ちしている男は確かに私を待ち伏せしている。エスカレーターを最後まで下りきり、私はその男の怒りの顔を見た。これは一触即発!私は駅員を呼んだ。「トラブルの原因は?」と聞かれ、私は「くしゃみです」と答えた。

怒りで解決するとろくなことにはならないということを、身にしみて感じた。
何を書いていたのかわからなくなってしまったが、ともかく時代遅れのこのコラム。ご感想などございましたら是非お聞かせください。
lovepiececlub.column@gmail.com

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アンティル

アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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