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すっかり暑くなりました。男子の短パンの丈が膝上になってからしばらくたちます。すね毛の処理をしている若い人も増えた印象があります。
若い人の年齢がどれくらいかと言うと、40代の私より下のひとたちです。数年前に大阪に帰ってきてから、なんか梅田可愛い子(男子)多いわ、と街中で思うことが多くて、気が付きました。自分の加齢にともない年下が増えたせいでした。ずっとセックスをしていないせいかタイプの幅は広がりませんが(そんなものか)、シュッとしたイケメンだけでも20年分となると結構な人数になり幸せです。

すね毛の話でした。男性ファッション誌でも定期的に「男のメンテナンス」みたいな特集が組まれています。美肌、脱毛、消臭に、プルンとした唇まで、清潔感を保つまでの道のりが具体的に指南されています。
美肌と消臭と唇はスルー出来るのですが、脱毛だけ少しひっかかります。
汚い、見苦しい、暑苦しい・・から、といったところが理由だと思いますが、ほどほどにしといてほしい、という気持ちが出てくるのです。

私はゲイだからか、男の体毛にさほど抵抗感はありません。自分のすね毛や脇毛は伸びすぎたらカットしたり梳いたりします。暑い夏は、露出が増えて、人の目と自分の目が気になるのと、処理したらじっさい涼しい気がするのでします。
抵抗する気持ちは「汚い」という形容詞にあります。

子供の頃から刷り込まれてきたイメージとして、成人男性の裸は汚くて滑稽なもの、という印象があります。
たいがいはマンガかテレビだと思います。私は体毛が薄く色が白いほうで高慢なので、なんとなく自分をその枠から外して生きてきましたが、それでもその汚いイメージから脱毛に奮起することもありました。負けてる。

新宿二丁目でゲイのアダルトビデオを売っていた時、冷やかしで入ってくるノンケの男たちが、ビデオのパッケージを見てげらげら笑ったときに、そうそう、男の裸って男にとって笑いの対象だった、と思い出したくらいです。

教室で、宴会で、飲み屋のカウンターで、突然脱ぎだして、周囲の笑いを取る人たちは一定数いるように思います。特に男しかいない空間でよく体験しました。私はとりあえず拝見しました。
銭湯では誰も笑わないのに不思議です。あそこはみんな脱いでいるのでおバカ感が出ないせいでしょうか。

最近の私は、ようやく銭湯や温泉で、タオルで股間を隠さなくなりました。かといって見せつけるわけでもありません。普通です。
今まで隠していたのは、大小のコンプレックスでした。だんだん、だってしょうがないわ、これが自分なんだから、これまでもこれからも変わるわけじゃないし、と思えるようになって、恥ずかしくなくなってきました。

ただ、汚いものだから、という理由で隠す人もいるだろうなーと思います。
時々、他人の男性器を見ることを嫌悪している人がいることに驚きます。トイレで小をしているときに隣の人のが視界に入るだけで嫌だ、と言った人もいました。上岡龍太郎が昔テレビで、板前がその手で自分のを触っているというだけで寿司屋の握りが食べられない、と言っていたのも衝撃でした。

そこまで嫌わなくても・・と笑えませんでしたが、これもやはり、小さいころから植えつけられたイメージによる弊害かと思われます。
銭湯や温泉では、だいたいのノンケの男たちは他人の体をそんなに見ていないし、気にしていない感じです。それに救われている自分もいます。

森岡正博の『感じない男』(ちくま文庫)を読んだときは、そのあまりにも大きな「男の体を持つ自分への嫌悪」に驚きました。そこでは、女の体に生まれたかった、と対比されます。
なんとなくですが、アイドルにはまる中年男性につながります。実は近くに同世代で二人いて、彼らの話を聞いていると、性的な対象として見ているというより、憧れの気持ちを強く感じるからです。

先日出た本では、江口寿史が「可愛い女の子」を書く理由を、自分が可愛く生まれなかったからだ、と言っていました。可愛く生まれていたら女装していた、とか。(『わたしのかたち』中村佑介、青土社)
小学生の時に、男の裸を、汚くて滑稽なものと印象付けられたのは、『すすめ!! パイレーツ』のせいでもある私には、何かの回答を得た気がしました。
『パイレーツ』は変幻自在なキャラクターがたくさん登場して、おじさんたちが可愛く描かれたりするギャグマンガだったので、面白くて大好きでした。
彼らの憧れる「女の子の可愛さ」といったものがどんなものなのか、よくわかっていませんが、可愛いと思えない自分への裏返しだということはわかりました。

ゲイ男性だと、「男の体は汚い」というそのセルフイメージからいったん脱却しなければ、したいセックスもできませんが(取り入れるとしても)、ノンケ男性は女性にイメージを反転させるだけで、脱却する必要がないのかもしれません。
けれど、自分の体を汚いもの扱いにしたままでよく平気でいられるわ、とは思います。
若い男たちのメンテナンスも、そう考えると奥深い。汚いと思っているからきれいにするのか、汚いと思いたくないから愛でているのか。

これまでは、女性専用車両に集団で乗り込んで「男性差別だ」とほざいているアホなおっさんたちの映像を見ると気持ち悪さしか感じませんでしたが、そんなこと考えていたせいで、おっさんはもっと自分の体に向き合えばいいのに、なんて思ってしまいました。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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