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「とうほうしんき」と「トンバンシンギ」

おのゆり2016.04.12

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 東方神起は、韓国と日本とで別々の活動をしている。日本では日本語で話し、日本語で歌い、日本の事務所のスタッフとともに仕事をし、日本のアルバムを引っさげて、日本でコンサートツアーをする。日本のやり方にのっとって仕事をしてきた。だから「とうほうしんき」は、韓国出身だけど、ほんとは、いわゆる「韓流」ではなく、J-Popに入る、はず。そして韓国では、日本とは全く別のアルバムを出して、音楽番組に出たり、全く別のコンサートをする。さらには、ワールドツアーと称して、中国やマレーシア、タイ、インドネシア、台湾、香港などでも、韓国バージョンのコンサートを行う。だから、彼らは人一倍忙しいし、そしてファンにとってはありがたいことに、日本の「とうほうしんき」と韓国の「トンバンシンギ」と両方を、本当にいろーんな味を、味わえる。それが東方神起のさらなる魅力にもなっていて、逃れられなくなる理由でもあると思う。

 今でこそ、K-Popはその不動の地位を日本で築いていると思うし、日本だけじゃなく他のアジアの国々や世界中でも人気がある。最近では、K-Popのグループが日本デビューしてすぐに東京ドームをいっぱいにするなんてことも起こってる。だけど、東方神起が日本でデビューした約10年前は、韓流ドラマは人気だったけど、K-Popはそこまでではなかった。だから、例えば、「日本」のアーティストが「全米」デビューを狙うって言ったら、当然、向こうの需要に合わせて、英語で話し英語で歌い、向こうの市場に合わせたプロモーションをする、のと同じように、「韓国」の歌手である彼らが「日本」で活動するには、日本語を勉強し日本語で歌い、日本の市場に合わせる必要があった、ということなんだろう。日本デビューした頃の彼らは、K-Pop色をあまり帯びない、とてもJ-Popな曲を歌い踊っていた。

 言葉もおぼつかないし、おそらくだけど、韓国で自分たちのやっている音楽とは違う、日本向けの歌を歌うことにも違和感というか不満もあったのかも、とも思うし、それに加えて、活動の上での違いやとまどい、日常生活での些細なつまずき。彼らにとって”外国”である日本での活動は、大きなストレスを伴うものだっただろうと思う。彼らは、たまにインタビューなんかで、日本でデビューしてから人気が出て来るまでの時期を振り返って、大変だった、とは言うけれど、どんな風に、どれだけ大変だったかは、具体的にはあまり語らない。

 はっきり言って、東方神起を知ったときは衝撃だったな。こんなにも、歌やダンスが、本気でうまくて、容姿も優れ、色気にあふれているアイドルっているんだ!日本にはいなかったんかじゃないか?少なくともわたしは今まで出会わなかった、って思った。自分がまさか、アイドルのコンサートに東京ドームに通いつめる日が来るとは思わなかった、というファンはわたしだけじゃないと思う。

 そして、東方神起を知ってから、わたしは、韓国に興味を持つようになった。こんなすてきな人たちがいる国は、どんな国なんだって、知りたくなった。どうしたらこんなすごいものが生まれてくるんだ?って本気で思ったし。残念ながら、それまでは韓国を身近に感じる機会も、興味を持つ機会もわたしにはほとんどなくて、占領時代にひどいことして日本はすごく嫌われてるんだろうな、なんて思いを持っていた。東方神起だけじゃなくて、「韓流」が日本に来てから、たくさんの女性たちにとって、韓国の存在はだいぶ変わり、すごく興味がある、もっともっと知りたい、好き、な存在になったと思う。東方神起などのアイドルや韓国ドラマが好きになり、より深く韓国を知るようになり、そして韓国の友だちと個人的な交流を深めたりする人も多いと思う。わたしも今外国にいて、いろいろな国の人々と出会う中、韓国人の友だちとはお互いを特別近く感じられて、助け合ったり、とても仲良くしてもらっている。お隣の国とこんな関係を築けるのはとても楽しくてうれしいことだと思ってる。

 だけど、韓国側から日本を見るのは、どんな思いなんだろうか、ということは、いつも心に引っかかっている。日本から見る韓国と、韓国から見る日本は、だいぶ違うはずである。過去に、日本は韓国を植民地化し、さまざまな苦痛を与えた。ある程度知っているように見えて、実際にどうだったのか、その歴史や占領時代の詳細について、そして韓国の人々のその具体的な経験や感情についてなど、わたしたちは、まだまだ知らないことが沢山あると思う。もっともっと本当の韓国のことを知りたいけれど、加害者側であるわたしはどのようにして知っていくことができるのだろうか。ある韓国人の友人は、私という個人はもちろん普通に友として信頼しているが、単純に日本を好きとか嫌いという物差しで語ることは難しいと、その胸中を少しだけ教えてくれた。このような個人的な日本に対する思いを知ることはわたしにとってとても貴重なことだが、この思いを語る友人は、とても言いにくそうに、わたしに気を遣いながら話しているようだった。被害者側である韓国の人々をこれ以上傷付けることなしに、より深く理解していくことはできるのだろうか。わたしたちが韓国に対して考えていくべき課題はまだまだたくさんある。

 東方神起が日本に来てくれてよかった。こんな日本という国に、わたしたちを癒しに来てくれてありがとう、って思う。日本語を勉強し、日本語で話して、日本語で歌ってくれて、日本のファンを同じように愛してくれて、ありがとう。東方神起の歌を届けるために、辛かった日本での活動をあきらめずにがんばってくれて、本当にありがとう。

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おのゆり(おの・ゆり)

大学院生。
1974年生まれ。東京出身。女性学修士。2012年に渡独し、現在、大学のジェンダースタディーズ博士課程で、フェミニズムや女性運動について研究中。もうそんなに若くもないのに、ひとりドイツで、貧乏学生生活送ってます。トンペン歴8年。 

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