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3人の女戦士に注目!インド映画『バーフバリ 王の凱旋』に見えるフェミニズム・ウェーブ

三木ミサ2018.01.17

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新年一発目にふさわしく、幸先良く、縁起良くやっぱりコレ!『バーフバリ 王の凱旋』!観るだけで今年一年の開運が約束されるんじゃないか、ってくらい景気のいいこのインド映画。
とにかく全編を通してぶっ飛びド迫力のスケールで、そうだ!娯楽映画は「観る」のではなく「体験」するものなのだーーー!!と鑑賞後、拳を突き上げたくなる(いや、実際やっていたかもしれない)「エンタメ超大作」なのである。

日本で初めて一般に広く知られるようになったインド映画といえば、『ムトゥ 踊るマハラジャ(1998年)』。
インド映画特有の、ストーリー度外視で、脈略なく挟まれる、歌あり踊りありのエンターテイメントは、サブカルチャーの文脈でキワモノを嗜むような……そんな受けとめられ方を当時はされていた。

その後、インド映画ムーブメントはやや低迷していたが、近年になるとラージクマール・ヒラニ監督の『きっと、うまくいく(2009)』や『PK(2014)』がヒット。

かつてインド映画に我々が抱いていた荒唐無稽なイメージを覆し、ストーリー重視の新たなインド映画として迎え入れられた。インド国内の目覚ましい経済発展は、インド映画産業にも波及してムトゥ的なローカルな雰囲気も薄まりつつあるのか……などとらえていたのだが、それは、完全に私の認識不足。
インド映画の底力も、幅の広さも、そんなものでは無かったのだ……!

『バーフバリ 王の凱旋』はインド独自のエンタテインメントムービーのノリを踏襲しながら、誰が観ても普遍的に楽しめる内容になっている。
あらすじは、インドの叙事詩「マハーバーラタ」(インド神話をベースにした中国で言う三国志に当たる武勇伝)を下敷きに、架空の古代王国マヒシュマティを舞台とした、伝説の勇者バーフバリの親子三代にわたる愛と復讐の物語。
王位をめぐるバーフバリと従兄弟バラーラデーヴァの覇権争いは、文武両道で民衆からの信奉もアツいバーフバリvs独裁者バラーラデーヴァという、非常にシンプルな勧善懲悪の構図。

そこに、嫁姑の確執や、家臣の忠誠と裏切り、さらには恋愛模様が絡み……と、ストーリー自体はさながらベタな古典劇なのだが、超人的なヒーロー像(幼い頃夢想した完全無欠のタイプ)を迫力の映像と音楽で極めまくった結果、ともすればバカバカしい設定も、有無を言わさぬスペクタクルで終始押し切られてしまうのであるーーなんだかもう、神秘体験。
そう、「映画でしか得られない世界を体験したい」という素朴な初期衝動が娯楽映画の原点だったのでないだろうか……と思わせられる、原初的な映画の力が『バーフバリ 王の凱旋』にはあるのだ。

その完成された世界観は、『300(2006年)』や『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2017年)』などがしばしば引き合いに出されるが、ここでもう一本、匹敵するのではないかと思われる映画を挙げておきたい。
映画史にも名高い『イントレランス(1916年)』だ。莫大な制作費を注いで作成した巨大な舞台装置は、いま観ても色褪せることない驚愕のスペクタクル映画。

まだ、映画そのものが珍しかった時代、『イントレランス』を観た人たちは、映画のなかにある「もうひとつの世界」に出会うような、そんな衝撃を受けたに違いない。
が、これだけ映像が溢れた現代でも、『イントレランス』並みのスペクタクルがまだ在ったことを『バーフバリ 王の凱旋』観せてくれる。

ただの古典劇に収まらないのは、何もCGやVFXの技術を駆使した立体的な映像や、豪華絢爛なセットだけに留まらない。
「マハーバーラタ」では登場しない映画オリジナルの3人の女戦士の存在が、現代的な感覚で観ても違和感なく受け手に落とし込まれる。

3人のヒロインは、とにかく強くてカッコいいのだ。許すという行為は女性の美徳として求められがちだが、彼女たちは敵を決して許さず、復讐の炎をバンバン燃やす。
国母シヴァガミも、アマレンドラ・バーフバリの妻デーヴァセーナも、マヘンドラ・バーフバリの恋人アヴァンティカも。皆誇り高く、強い信念のもとに、敵とみなしたものを完膚なきまで粉砕する武闘派ばかり。決してバーフバリに庇護されるような、花を添えるための存在などではない。

家父長制と女性蔑視が強く残ると言われるインドで、このような女性が肯定的に描かれることには驚いたのだが、公式パンフレットで、アジア映画研究者の松岡環氏が、最近のインド映画ではヒロインが男性と互角の身体能力を持つ作品が目立ち、『バーフバリ 王の凱旋』はインド映画界にも浸透しつつあるフェミニズム・ウェーブを反映していることを解説している。

とは言え、『バーフバリ 王の凱旋』の女性キャラクターは、現代の国際基準に合わせたフェミニズム的なエクスキューズとして登場させたわけではなく、演出としての必然だったのだろう。
彼女たちが、主張も戦いもしない添え物だったら、『バーフバリ 王の凱旋』の数々の名シーンは出てこなかったのだから。

肉体の強さが必ずしも優位性に繋がるわけではない現代を敏感に映し取って、女性の英雄を誕生させた『バーフバリ 王の凱旋』ーーそういえば、そもそもインド神話は女神が多く登場する。それも、戦闘能力がかなり高そうなパワー系の女神も多かったではないか。

権力を乱用して女の身体を撫で回すセクハラ官僚にはバーフバリ式の制裁が待っているーー名シーンにも、是非ご注目!



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三木ミサ(みき・みさ)

神奈川出身。元シノラー。学生時代にフェミニズムに目覚め、男子学生たちがオンナに抱く幻想を打ち砕くべく目の前で放屁をするなどの実践を試みるも、のちに、ジェンダーの問題ではなく、人としてのマナーの問題だったことに気づき反省。フェミニズムをゆるやかに模索する日々。出来れば、猫を産みたい

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