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ステージ・フォーッ! Vol.1 ステージⅣ マル16年。17年目に入りますね。

高橋フミコ2019.03.15

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 お久しぶりと申し上げて「ああ、あいつね」と、そして「あら、まだ生きていた?」と思われた方おいでになります?  かなりコアなラブピースクラブファンとお見受けいたします。と言うのも、今を去ること15年ほど前『半社会的おっぱい』なる表題でコラムを担当しておりました。半分社会的で半分個人的、乳がんになって考えた諸々を思いつくままに綴らせていただいておりました。さて、この度コラム再開となりまして嬉しい限りです。何よりも、ステージⅣで16年生きながらえたことをご報告申し上げ、勝手に寿ぎ、アンド、これからもまだ暫くこの美しき地球に留まり、重ねて、心優しくもクソであるこの人間社会に暮らしていくぞとの決意も新たに、しかし相変わらず徒然ぼちぼちと連載させていただく所存です。どうぞよろしくお願い申し上げそろ。

 表題の「ステージ・フォーッ!」 これは何でしょうか、ご説明しましょう。しかしどこから話しましょうか、ええっと、がんになったことありますか? あなたご自身でなくとも、おそらく身近に見聞されていることでしょう。最近でもアスリートや芸能人、各界著名な方々が、これから闘病頑張りますとか、治療終えて帰ってきましたまたよろしくとか、堂々と公表されて真摯に心境を語っておられます。時代は変わったなと実感いたします。患者本人に病名を告げないなどという、今から考えれば、そりゃあどう考えてもおかしいだろな時代もあったし、大女優が乳がん手術しますと公表し、命より女優生命大丈夫?  などと言われた時代もありましたから。本当にたくさんの方々ががんという病気と、そしてがんというタブーと闘ってこられました。たった今、この時も、辛い治療に直面している方が大勢おられます。

 がんががんであって、なんだか他の病気と違って語られるのは、とにかく治療が辛い、病気を治すために現状よりもっと具合が悪くなる、こんなおかしな話ありますか? という理不尽によるものと思います。抗がん剤、これは一つの暴力です。髪が抜ける、白血球が下がる、手足痺れる、吐き気に襲われる、眠気に襲われる、記憶力なくなる、浮腫む、お肌黒ずむ、バカになる、全く冗談じゃないよ! の連続です。15年前の私なら、医療が進んだのでいわゆる副作用もだいぶ軽減されましたとご紹介したところですが、すみません、どんどん我慢しない人、いえ、できない人になってしまいました。そんなこんな、数種類の抗がん剤を体験してきた上で申し上げますが、本当に副作用は軽減されています。なんだどっちだ、話が違うじゃないか、ですよね。わたしなりに、医療の発展に感謝しつつ、悪心を心に溜めない発散術で一日一日を乗り切っているというわけでございます。

 今からちょうど16年前の2003年3月、手遅れかしらと思いつつようやく受診した乳腺科で、乳がんステージⅣと診断されました。がんの病期はステージという言い方をします。がんの種類によって違いますが、大まかに言うと、初発組織内にとどまっている、周囲の組織に浸潤している、リンパ線に浸潤している、他臓器に転移しているなどの状況でステージが違ってきます。0期からⅣ期まであります。補足しますとステージⅣは末期ではありません。末期とは病状のことで、がんのステージとは意味合いが違います。わたしのように長生きのステージⅣがん患者は増えています。では、何のためにステージ分けするのでしょうか。それぞれに治療方針や経過観察期間が違ってきます。つまりステージⅣでは完治しないことが前提となり、よりよい生活の質を求めていきましょうという治療方針に特化されます。だから徹底的にがん細胞を体から無くしてしまうような治療はしません。かといって、放っておくと増殖したがん細胞が組織を破壊し、あちこちの臓器が機能不全になって死んでしまうので、できる限りそれは避ける。効いている限り抗がん剤は使っていくということになります。最近は研究が進み、分子標的薬とか免疫チェックポイント阻害剤など新しいタイプの薬が登場しています。わたし自身はまだ使用していませんが、連載中に使うことがあったらしっかりご紹介していこうと思います。なんだか、カーマニアの新車紹介みたいで恐縮ですが。

 さて、がんステージの基礎知識はこのくらいにして、表題には思いを込めました。見れば解るよって感じですが、上記のように、がん患者としてこの16年間教育されてきた面もあると思っています。すなわち完治しませんを納得するようにと。冷静で大人らしい、物の道理をわきまえた模範的がん患者であるようにと。しかしながら、ちょっと間違っちゃったとはいえ、がん細胞の増殖は生命活動の一環です。まだまだわからないことがたくさん詰まっています。だから正直、ひょっとしたら治るかもヨンなどと思っています。なーにがステージ・フォーッ! だよ、痛いの痛いの飛んでいけー風に両手で空中散布したいのが本音です。16年も生きながらえて何をかいわんやではありますが、心というのは揺れるのです、人格というものは定まらぬのです、生きているということは不安定な現象なのです。それをそれとして、できるだけ飾らず感じたままを形にして残せたら良いなと思っています。なんだか半分浮世にいるのかいないのか、これがわたしの人生さ、というところでしょうか。

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高橋フミコ

高橋フミコ(たかはし・ふみこ)

60年しし座の生まれ
美大出てパフォーマンスアートなどぼちぼち
2003年乳がんに罹患
同年から約2年半ラブピースクラブWebsiteで『半社会的おっぱい』連載
2006年『ぽっかり穴の空いた胸で考えた』バジリコ(株)より出版(ラブピのコラムが本になりました)
都内で愛猫3匹と集団生活
 
2019年11月21日に永眠されました。
ラブピースクラブの最も長く、深い理解者であり大切な友人でした。
高橋フミコさんのコラムはここに永久保存したく「今のコラムニスト」として表示し続けます。
 

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