ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

おかんとコピ Vol.2 200グラムの命

李信恵2019.07.15

Loading...

翌朝、歯医者さんを予約していたので、それが終わってから動物病院に向かった。その時点では、里親を探そうと思っていた。年下の友人からは、貰い手を探しますねとの連絡が来ていた。歯医者さんでも、「昨夜、子猫を拾ったんだけど、先生飼わない?」というような話をしていた。自宅にいったん戻ると、大きめのバッグの中にバスタオルを敷き詰めて、その中に子猫を入れた。そして、自転車の前かごに載せて動物病院へ向かった。動物病院へは歯医者の直前に電話して、「子猫を保護しました。目やにとかいっぱいで、検査などしてもらいたいのですが。いくらぐらいかかりますか?」と尋ねた。直球か。受付の人は「5000円ぐらいあれば大丈夫じゃないですかね、連れてきてくださいね」と答えた。良かった。数万円はかかるんじゃないかとドキドキしていたけど、まあそれくらいなら大丈夫だ。


その動物病院は、私が子どもの時からあって、いまの院長先生は二代目だ。3年前まで飼っていた愛娘犬のキムチは、18年間ここでお世話になった。キムチが亡くなってから、二度と来ることはないと思っていたのに、子猫のためにまた訪れることになるとは。すごく評判がいい病院で、いつも混んでいる。獣医さんは数人いて、今回初めて見てもらったのは女の先生だった。2時間ほど待ったあと、やっと順番がやってきた。子猫をバッグから出し、診察台に載せると、「結膜炎かな?目がまだ開いてないからわからないけど、もしかしたらこの子は眼球がないかも。まず、目の検査をしますね」。いきなりビビらせないで。

CTで検査すると、「あ、良かった。眼球はこれですね。ひとまず確認できました。けど、小さいうちにこんなふうにひどい炎症を起こしてしまうと、角膜が形成されるかどうか。目が見えないということも。しばらく目薬を差して様子を見ましょう」とのことだった。ちょっとショックだった。さらに、捨てられていた時の状況などを説明すると、「おかしいですね。猫は一度にたくさん子猫を産むから、捨てるなら数匹まとめてと云うことが多いんです。両前足が関節から外向きで、変形している可能性も。そのせいでこの子一匹だけが(ブリーダーかなにかに)捨てられたのかも知れませんね」。目の次は足か!いったいどうなるんだ。


 

その後、水分を補給してもらって、栄養剤を注射された。ノミはいないようだけど、念のため櫛ですくようにと云われた。子猫の体重は200グラムもなかった。小さすぎて体温の調節がまだできないので、洗ったりしないようにとのこと。200グラムと云えば大きめのじゃが芋1個分ぐらいの重さだ。またじゃが芋か!へその緒が取れたばかりなので、生後10日過ぎ、2週間は経ってなさそうだと聞いた。「この子、男の子か女の子か分かります?」と聞かれたので、「多分男の子かと思いますが、どうですか?」「はい、正解。男の子です。小さい時は分かりにくいんですけどね」と話しながら、濡れたティッシュで股を拭いた。すると、おしっこがいっぱい出た。「子猫は親猫がなめることでおしっこを出すけど、親猫がいないのでこうやって刺激してあげて下さいね」と云われた。子猫用のミルクを購入して、シリンジを貰った。ミルクは2、3時間ごとのペースでとも聞いた。ひええ、人間の赤ちゃんと変わらん。でも、なんとかなるだろう。

自宅に戻ってミルクを飲んだら、落ち着いたようで子猫はグーグー寝た。シリンジの先のゴムを思いっきり吸うので、こんなに奥まで飲み込んで大丈夫なのかと心配になったけど、食欲があってよかった。小さくて、ふわふわしてとても可愛い。もしも昨夜、泣き声に気がつかなかったら、ゴミとして収集車に回収されていたと思うと急に怖くなった。子猫を保護した直後、Facebookにその時のことを投稿したら、友人から「ゴミ収集車の中に捨てられてた子がいます。泣き声が聞こえて尻尾を見つけた人がいてその方から連絡があり連れて帰りました!」とのコメントがあった。その子は友人の家に迎え入れられて、無事にすくすく育った。もう12歳になるという。可愛い写真も見せてもらった。保護した子猫も、早く目や足が治って、良い飼い主が見つかるといいなと思っていた。

そういえば動物病院で会計をする時、「子猫の名前は何ですか?」と聞かれ、「保護しているだけなので、名前は付けていません」と答えた。診察券の名前の欄は空白で、カルテには「子猫ちゃん」と書かれていた。出会って2日目、子猫の名前はまだない。

Loading...

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP