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  • TALK ABOUT THE WORLD ドイツ編 グレタと子どもたちの怒り

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今年のノーベル平和賞はエチオピアのアハメド首相に授与されることが決まり、候補であったグレタ・トゥーンベリではない、というニュースに、やっぱりね、と胸をなでおろした人はどれだけいるだろうか。その中にはトランプ米大統領やプーチン露大統領も含まれているだろう。物知らずの子どもの戯言、と彼女を批判してきた人たちだ。

と、皮肉で始めてみたけれど、実のところ、彼らはグレタが怖いのではないか? 彼女の主張があまりにも真実を突き、その背後には十何億人という子どもたちが存在していること、そして彼らが目を背けている恐ろしい現実を認めたくないのだ。

グレタが始めた運動「Friday for Future」のドイツでの様子はこのコラムでも紹介したが、9月の国連サミットに登壇したグレタの演説が日本のメディアでも大々的に取り上げられると、彼女への注目度は日本でも一気にあがった。しかし彼女の行動にあそこまで批判や否定的な意見が集まるとは意外で、日本の世論や社会もとうとうここまでズレてきたかとかなり落胆した。インターネットでの反応だからそこまで本気に受け取るべきでないのかとも思ったが、マスコミの報道もまた、はなから、とある勇敢な子どもの行動、またはジャンヌ・ダルクのような左翼や過激な活動家のヒロイン、という表現が多くて驚いた。まるでグレタ一人が奮闘しているかのような表現で、いやいや、彼女とともにいる子どもたちの顔がまったく見えていないのだなと感じる。「これからの子どもたちにはこの異常気象や環境が当たり前となっていくのだし、それは受入れるしかない」といったコメントには絶句した。これまで享楽をむさぼってきて環境変化の原因を作り出した世代がそんなことを言うとは、なんと傲慢なことか。その世代である私自身もたいしたことはしてこなかったけど、さすがにそんなことは言えない。

この国連サミットに先駆けて、9月20日には欧州及び他国でもいつもの金曜日デモ「Friday for Future」が大規模に行われた。主催者発表ではその規模、世界の約160カ国で400万人以上が参加したという。ドイツでは各地合わせて150万人が参加したそうだ。その前日、我が家のバスルームの改修工事をやってくれていた職人さんも、明日はデモに行けるかどうか、という話をしていた。彼は自分の子どもと一緒に参加しようと思ったらしい。(残念ながら我が家の工事状況が差し迫っていて、朝から来てもらうことになってしまったが、いいんだ、3月のデモには参加してるから、と。すみません…)

そしてその日、たまたま買い物に出かけた先で私が出会った小さなデモ隊の先頭は、なんと小学生たちだった。聞けばここから電車で30分ほどの別地区の学校の生徒たちだという。付き添う先生や親御さんたちとともにプラカードを掲げて叫ぶのを見て、思わず目頭が熱くなった。

同じく、グレタの演説を聞くたびに私は胸がしめつけられ、泣きそうになる。「私はここにいるべきじゃない。私の子ども時代や夢を盗んだ!」と大人たちを糾弾した彼女の言葉はまさにこの子どもたちの言葉でもある。民主主義が子どもの頃から根づいているのは結構なことだが、彼らをデモに駆り立てるほどの未来を作ってしまっている私たち大人には、彼らをやたらとほめたり、ましてや批判する権利などない。

おりしも先の週末、首都圏を史上最強の台風が襲ったことは海外でも報道されていたが、年々大きくなる気象災害を経験して、何も思わないのだろうか? 台風上陸直前のニュースのコメント欄に書き込まれた「でもこれからはこの規模の台風が普通になっていくんだろうな」との意見に何千という「いいね」がクリックされているのを見て、グレタへの批判には万単位の「いいね」が押されていたことを不思議に思う。彼女の言うとおりに私たちの状況は深刻になっているのに、彼女の意見は真摯に受け止められないのだろうか?

数年前までは私自身も地球温暖化については意見がわかれていることは知っていたし、それほど真剣には受け止めていなかった。が、昨年今年とドイツの夏の猛暑を経験し、たとえその暑さが私の知る日本の夏に比べたらまだまだましだと笑うことはできても、雨が降らない日が何週間も続き、まるで秋の到来のように木々の葉が枯れて落ちていくのを見て、これはさすがにまずいなと、ひたひたと忍び寄る環境の変化にうっすら怖れをいだいた。乾燥した天候はドイツの穀類の収穫量や酪農業に大きな打撃を与えていて、それが今後酷くなれば、私たちの食卓にも大きな影響が出るだろう。加えてドイツを始め欧州でも、この数年、大型の嵐による被害がひどくなってきているのだ。

金融企業のゴールドマン・サックスが最近発表した気候変動による影響についてのレポートは、それが甚大な変化を私たちの生活にもたらすと警告している。そのうちの一つ、世界の人口の半分が2025年には、水の不足や汚染、水力エネルギーの減少など、ストレスにさらされることになるという。あと6年後の話じゃないか! 子どもたちの未来じゃなくて、私たちの近未来である。

身近な生活でできる対策は何か? とか、アマゾンの森林火災はどうやって止められるのか? とか、いろいろ考えるも、もしかしたらもう手遅れかもしれないし、あがきなのかもしれないと絶望もかすかに感じつつ、まずはグレタと子どもたちの訴えに真剣に耳をかしてみたい。少しでもましな未来を迎えることができるなら。

 

 

写真:© Aki Nakazawa
プラカードを掲げて歩いてきた小学生たち。そのうしろには中学生くらいの子どもたちが続きました。プラカードには、「私たちの未来を救え」と書かれています。以前のコラムにも書きましたが「子どもの戯言」はしかし、環境政党である緑の党の大躍進という欧州議会の選挙結果を生み出すという、確実な行動となっているのです。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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