ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

  • TOP
  • 行田トモ
  • 「多様な美」と、枠の外から眺めるワタシ

「多様な美」と、枠の外から眺めるワタシ

行田トモ2019.12.11

Loading...

みなさま、ご無沙汰しております。行田トモです。

2019年のカレンダーもとうとう最後の一枚となりましたね。しばらくお休みをいただいておりましたが、「こいつぁ寝てる場合じゃねぇ! 」と飛び起きるニュースが舞い込んできました。

ヴィクシーことヴィクトリアズ・シークレットのショーの中止が正式に決まったというではありませんか!! フロントシートは超プレミアム、ランウェイでのパフォーマンスは歌手としてのステータス、豪華な宝石をあしらったファンタジー・ブラを誰が身につけるかは毎年注目の的でした。

フォトエージェンシーに勤めていた頃は、ヴィクシーのショーといえば、アカデミー賞やエミー賞と並んで大忙しの日でした。

看板モデルの引退、売り上げの低下、相次ぐ店舗の閉店と、勢いがなくなっているのは感じていました。プラスサイズモデルの起用という、これまでかたくなに拒んでいた路線の変更にも驚きました。ショーの中止もゴシップ程度にニュースにはなっていましたが、まさか本当になるとは……。

ヴィクシーモデルを入り口に海外エンタメの世界に興味を持った私にとっては、「その時、歴史が動いた」と松平アナのナレーションがはっきりと聞こえた気がしました。

それと時を同じくして、歌手のリアーナによるランジェリーブランド、Savage X Fenty by Rihannaのショーがamazon primeで視聴可能となりました。

早速再生した私は言葉を失いました。

彼女のショーは単なるランウェイパフォーマンスではなく、人種、スタイル、ジェンダー、セクシュアリティなど、あらゆる面での心身の多様性の美しさと尊さを訴えかけると同時に、ショー全体をひとつの芸術に昇華していたのです。

これを見せつけられてしまった後では、たとえプラスサイズモデルが加わったヴィクシーのショーが行われたとしても、心に響かなかったかもしれません。

アシュリー・グラハム(※1)を代表としたプラスサイズモデルの活躍、英女優のジャーミーラ・ジャミルが立ち上げた、女性を体型批判から解放し、ボディ・ポジティブになれるようサポートする活動、「I Weigh」(※2)なども広まり、「理想のモデル体型」というような表現が消える日も近いように感じられます。

心身に自信を持ち、満たされた女性たちが闊歩する世界。

想像するだけで幸せな気持ちになります。

しかし、幸せな気持ちになると同時に、どうしようもない苦しみに襲われるのです。

なぜなら、私は今、人生で最も自分を愛せていないのです。

プロフィールに「うつ病との共生を目指して」と書いていますが、うつ病5年目を終えようという現在、過去最高数の薬、過去最高の体重になってしまいました。

薬に関しては医師としっかり話し合ったうえで服用していますし、そのおかげで動けることも実感しています。

問題は私の肉体、見た目に対する思いなのです。

派遣社員をやめたときの体重(全く健康ではない、つらいときでした)から現在までに14キロ太りました。
しかし、体脂肪はときどき軽肥満レベルになる以外、30歳の女性としては体重もBMIの数値もなんら問題ありません。

風邪もひきにくくなり、やせすぎているよりいい状態だとわかっています。

それでも、試着室でSサイズが入らず、Mと交換してもらうとき。

昨年はゆるめに決めていた服がパツパツになり、あわてて別の服を探すとき。

「お願いだから少し太って……」と母を泣かせた頃の腕を、お腹を、脚を取り戻したくなってしまうのです。

リアーナの信念に感動し、共感しつつも、道を行けば華奢な女の子に目がいってしまい、つい自分と比べて嫌になってしまう。この矛盾はどこからやってくるのか……。

数日間この原稿を寝かせて考え続けた結果、あることに気がつきました。

私は、非常に大切でこの世界になくてはならないものだと思っている「多様性」の中に、私自身を置くことができていなかったのです。このような場でコラムを連載させていただきながらも、どこか第三者目線のままでいたがる自分がいたようです。

理由はすぐにわかりました。

今回の体型問題のように、傷つきたくなかったから。

そして、傷ついている自分をさらけ出したくなかったからです。

敬愛するル・ポールの決め台詞「自分を愛せずにどうして他人を愛せるっていうの!?」をこれほどまで痛感したことはありません。

他者の美しさを見つけることは簡単でも、自分の美しさを見い出し、愛してあげるのはとても難しいのです。
この世の中で起こっている様々な問題から目をそむけないと決意しつつも、いざその当事者となると、やはり苦しくて逃げ出したくなってしまうのです。

「ファッションひとつでそんな大げさな……」と思われる方もいらっしゃるでしょう。どうかだまされたと思って、リアーナのショーを見てください。これまでと世界の見え方が変わります。変わることを願います。

さて、この原稿を書きながらも、「ラブハンドル」とも呼ばれるお腹まわりのお肉をムニムニしてはため息をついています。おそらくこれを筋肉に変えられたら、極端な寒がりが少しはマシになるでしょう。あら、来年の目標がひとつ見つかってしまいました(笑)

そうなんですよね。泣いてても笑ってても同じだけ時間は経ちます。そして新しい年がやってきます。それなら笑って過ごしたい。せっかく街もキラキラし始めたことですし、どうすれば今の自分が最大限にlovelyに思えるかを探究しながら。だって、feminismの「f」はfabulousの「f」ですもの。

そんなこんなで日々あれこれ考えて生きている行田です。一日中ベッドから起きられない日があっても、どうしようもない不安に襲われる日があっても、考えることだけはやめずに生きています。来年も生きていきます。その中で感じたこと、疑問に思ったことをコラムにしてまた皆さんにお届けできれば幸いです。

それでは、皆さん、素敵なHoliday Seasonをお過ごしくださいね。

Loading...

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
立教大学 文学部 文学科 文芸・思想専修卒
在学中に一年間ロンドンに留学。
ストックフォト会社、美術館、出版社事務を経て、現在はうつ病との共生を目指して半療養中。自身の病気と、セクハラ被害を受けたことをきっかけに、女性のwellbeingを模索中。同時にジェンダー、セクシュアリティ、クィア、フェミニズムについて考える日々。
趣味は読書、観劇、『ル・ポールのドラァグ・レース』『Queer Eye』を見ること、海外セレブウォッチ、
ハムスターの世話(でも噛まれて泣いた)
最近のブームは韓国ドラマ&文学、アルゼンチンタンゴ。
笑顔で沼に沈没中。

RANKING人気記事

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOP