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おかんとコピ Vol.13 小さな野生

李信恵2020.07.28

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コピが我が家の一員になってから、半年近くが過ぎた。季節はもうすっかり夏、なんでもおもちゃにする天才のコピは、うちわを見るととびかかってくる。なので、ゆっくり涼むこともできない。暑い。コピは驚くほど大きくなり、保護した時から15倍以上の体重になろうとしていた。日本猫にしては、成長のスピードが速い。「いや、そもそもコピは本当に猫なのだろうか。もしかしたら黒猫ではなく、クロヒョウかも」「そんなわけはない」。そんな冗談を友だちと話していた頃、「黒猫?ではなくクロヒョウが住宅街の屋根をウロウロ フランス」https://www.bbc.com/japanese/49765248と云うニュースがあった。えらいでっかい猫やなあと思ったら、クロヒョウだった。クロヒョウも、無事に保護されてよかったね。コピがこんなに大きくなったらどうしようと、ちょっと不安になった。なるか。

それはさておき、この頃のコピは子猫の時から使っていたフリースのブランケットなどをふみふみするしぐさをときどき見せた。また、私の布団の端っこに噛みついたり。最初は、(短い間だったとは思うけど)お母さんのおっぱいを飲んでいた頃をコピが思い出したのかと思った。甘えたいのかな?とも。しかし、これがいわゆる発情期の始まりの「マウンティング」だと、ふと気が付いた。なぜなら、コピは次第に腰をカクカクと動かすような行動をとるようにもなったからだ。布団を取ってみると、生殖器がちょこっと出ていた。脳内では「思春期に少年から大人に変わる」と云う、私の若いころに流行った歌のワンフレーズが流れた。

男の子の猫の発情期は、生後半年ぐらいから(早い子は3か月かららしい)。それぐらいに去勢手術をすることも多いと思うが、コピは片方のタマしかないこともあって秋以降になる予定だった。それまで、ほっておいてもいいのかな。猫に詳しいオンニ(お姉さん)と、たまたま(タマじゃない)飲みに行く機会があったのでそのことを話すと、「当たり前だけど猫も成長するし、それは自然の営みだからね。恥ずかしいことじゃないよ」と云う答えだった。これまで飼っていた犬や猫が、よく考えてみると全部女の子だった。だからびっくりしたのかな。「息子の部屋を掃除していたら、ベッドの下からエロ本が出てきた」みたいな気分にもなった。(ネットが普及した現代では、そんなシチュエーションはないだろうし、そもそも私は息子の部屋には入らない。また、掃除を始め自分のことは自分でやれというタイプ。家事ができる男に!←関係ない)

なんというかコピが親離れしていくような、寂しい気分にもなった。去勢手術をすると、そういった「マウンティング」行動もしなくなるそうだ。交尾したくてもできない状態が続くことは大きなストレスにもなるというし。そんなに早く大人にならないで、とも思う。わがままか。コピが成長するスピードに、私も追いつかなきゃ。コピと出会ってから、私はとても幸せだ。生活のスタイルも、ガラッと変わった。ひたすら可愛くて、毎日が楽しい。けれど、難しいなあと思うこともある。命を預かるってことだから、責任は重大だ。コピが幸せであるためにも、猫の生理や習性やそのほかいろんなことをひたすら学ばなくては。知っているようで知らなかったことが多すぎる。そして、ときどき可愛いだけじゃないことも起きる。でもまあ、それが生き物と暮らすことだしね。

ある日、Twitterでフォロワーさんから作家の向田邦子さんがエッセイなどで猫のことを「小さな野生」と表現していたと教えてもらった。すごくいい言葉だな。そして、私がコピの行動に戸惑ったり悩んだりしていたのは、コピの中にあったそれを垣間見たからなのかも知れないな、と思った。むき出しの生々しさ、でもそれが愛おしい。我が家の小さな野生は、私にいろんなことを教えてくれる。これからもたくさんの驚きが待っているんだろうな、楽しみだ。ずっと一緒にいようね、すくすく育ってね。だけどクロヒョウにはならないでね。

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李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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