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TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 日本を見ながらドイツを振り返る-ドイツと日本の総選挙

中沢あき2021.10.26

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さあ、選挙だ! 選挙! 4年ぶりの衆議院選挙がやってきた!

在外邦人の私は我が町には投票所が設けられる日本領事館がないために郵便投票なのだが、これが毎回焦る。在外から投票するためにはまず、投票用紙申請書を日本の登録先の選挙管理委員会に郵送し、投票用紙を申請しなければならず、なので選挙の時期が近づいてきたらこの申請だけ先にやって投票用紙を取り寄せておき、公示日の翌日すぐに投函できるようにしておく。だって公示日から開票日まで10日くらいしかないのですよ。通常、ドイツから日本に郵便が届くのは1週間かそれ以上とされているので、ギリギリだ。しかもドイツ郵便は当てにならないことで悪名高きサービス事情なので、本当に毎回届いているのか不安になる。とにかく時間との戦いなのだ。

それにしても以前にもまして、選択に迷う選挙だなあと思う。個々の立候補者には印象のよい人がいたとしても、党としてとなると微妙だなと思うが、棄権するわけにはいかないので、それでもここならと思えるところに票を入れるだろう。

ドイツの総選挙も行われてから3週間が経った。各党が連立の交渉中なので次政権はまだ成立しておらず、メルケル政権がまだ続いている状態だ。16年続いたメルケル政権がいよいよ終わる、ということで夏前から選挙活動に各党が勤しんでいたが、「選びたい人がいない」という言葉を友人知人から仕事先で出会った人から、街中でもあちこちで聞くたび、だろうねえ、と私は思った。私自身はドイツの選挙権はないが、この国に住む身としては次の政権がどうなるのかは当然関心があるし、ニュースを見聞きして各党の動きをなんとなく追っていたが、そんな私から見ても、こりゃあ、悩ましいと思える状況だった。

まず、メルケル氏に匹敵するようなカリスマ性や信頼性のある人物が出てこない。メルケル氏の後継と指名されたCDU党首のラシェット氏/ノルトライン=ヴェストファーレン州首相は姉妹党のCSU党首のゼーダー氏/バイエルン州首相を党首に推す声を押しのけて党首になったのに、夏の洪水災害視察の際、スピーチをしている大統領の背後でスタッフと談笑しているのが激写されて人気がガタ落ちた。メルケル氏の次も女性首相に! の期待を受けて登場した緑の党の共同党首であるベアボック氏は、過去の会計不正が暴露されたり、著書の無断引用を指摘されたことについて開き直ったりしたのでこれまた人気がガタ落ちした。

と、オウンゴールで支持率を落とした他の党に代わりに急浮上したのが、メルケル政権ではCSU党と連立を組んでいたSPD党である。メルケル政権の財務相を務めるショルツ氏が党首で、最後の最後で支持率を回復させてそのままゴール! といった感じで選挙では応トップに立った。一応、というのはトップのSPDが25.7%、次点のCDUが24.1%と大差ないからで、その後にも連立で政権入りを狙う緑の党やFDP党がそれぞれ14.8%、11.5%と、結局は票がばらけて連立なしには政権を成立させられない状況になったのだ。多様な声を反映させているという意味では民主的だけれども、一国の政治を動かしていく機能の点においては現実的にはなかなか大変な状況だ。選挙直後はCDU党もまだ連立の可能性を狙って緑の党やFDP党と話し合いをもったが、首相の座を狙って意地を張るラシェットと党内の彼への批判合戦が起きるなど、それは醜い様相になってさらに支持を失っていったので、おそらくここはSPD党が緑の党やFDP党と連立を組むことになるのではというのが大方の味方だ。

とはいえ、このSPD党の党首のショルツ氏もなかなか問題ありだ。メルケル現政権では財務相の彼だが、昨年に不正会計が暴露されて倒産したドイツの決済サービス企業のワイヤーカードの問題について、長年粉飾決済を行なっていたにもかかわらず、このドイツのトップベンチャー企業の不正を金融庁はあえて見逃していたのではないかという疑惑が浮上した際にショルツ財務相の責任も問われていた話がそういえばあったが、それはどこかに消えてしまった。選挙の数日前には、与党野党が揃ってショルツ氏を国会で喚問し、税関などの不正チェックシステムがしっかり機能していないのでは? あえて緩くしているのでは? と追及したニュースが急に出たのだが、それもなぜかうやむやになって消えてしまった。選挙前の党同士のネガキャンは、今回どの党にも見られて見苦しく、そういうスキャンダルがあるたびに、なんだか政治家が必死に自分たちのポジション維持やキャリアのために活動しているようで国民をなおざりにしている感を多くの人は抱いていたのではないだろうか。

だから選挙前のドイツの国民は冷めた目で政治家たちを見つめ、そして迫られる選択に悩んでいたように思う。たまたま私はこの選挙の前に、とあるメディアのために街角インタビューをしていたのだが、そこでの印象もそんな感じだった。特に各党が(洪水被害をきっかけに)大々的に打ち出す環境政策について、街の声は「環境は大事だが、政策案は現実的でない」と冷静だった。

私は今回、ショルツ氏の選挙応援演説を2回も見る機会があった。彼はカリスマ性があって話がうまい。確かに首相候補とされたラシェット氏やベアボック氏に比べて現実的な首相の貫禄ありの印象だ。しかし彼の熱弁する住宅増築による家賃高騰抑制政策や、再生エネルギー生産施設の急速な増設で今後のエネルギーを賄う政策を聞いていると、いや、問題はそこじゃないだろうと突っ込みたくなる点もある。現在もすでにあちこちに住宅は建設されているが家賃が高くて住めないことが問題なので、建てるだけではダメなのだが……。エネルギーも、ロシアからのガス供給問題や、炭力発電に関わる雇用の問題も一緒に解決していかなければ失業者が膨大に出る。彼が何度も「バウ、バウ(建設、建設)!」と叫ぶのを聞きながら、かつての(今も日本で、だけど)土建屋と政治家の繋がった時代を思い出した。昔の古き政治に戻るようなそんなイメージがふわっと浮かんだのだが、気のせいだろうか。

SPD党もCDU党も歴史を持つ、ドイツの大政党である。でも選挙後にわかったのは、特に若い世代の票は今回、緑の党やFDP党へ動いたらしい。「昔の」政治に期待していないのはドイツも同じようだ。そしてそんな悩ましい時代でも、いやだからこそなのかもしれないが、ドイツの投票率は76.6%。高い、と書こうとして気がついた。これは驚くべきことじゃなくて、当たり前じゃなきゃいけないんだよね。さて月末の日本はどうなることやら?

写真:©Aki Nakazawa

次期政権の鍵を握るCDU党のラシェット氏、FDP党のリンドナー氏と緑の党のベアボック氏、そしてSPD党のショルツ氏。メルケル氏の最大の失点は、後継者を育てられなかったことと言われますが、メルケル政権の政策の成果、または結果は次期政権になったときに見えてくるのかもしれません。昨年から続くコロナ政策もそうですが、この選挙をめぐる状況においても、政治家とマスメディアが国民を蚊帳の外に置いているような感じがしてなんだか不気味で落ち着きません。この冬は、いや、どの候補が首相になっても、次の4年間はあまり明るく見えないドイツの政治です。

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