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幸せな毒娘 Vol.3 反応性うつ② 逃げ出した先の楽園

JayooByul2022.12.28

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オーストラリアの生活が続いて3年が経った頃、私はお嫁とPTSD (心的外傷後ストレス障害) 診断をしたことがあります。20問で構成されていて80点満点のテストでしたが、38点以上を記録した場合はちゃんとしたPTSDの診断が必要になり、60点以上の場合はとても危ない状況であって、入院治療が必要になる可能性もあるとのことです。私とお嫁は日本と韓国で過ごしていた時期と比べ、どれくらいの差があるかを想定しながら各2回ずつテストを受けました。そしてその結果は驚くべきことでした。

先ず日本と韓国で過ごしていた私の症状を元にテストに答えた時の結果は72点、お嫁はなんと74点でした。日韓では持続的なセクハラや痴漢に遭いながら過ごしていて、自己嫌悪と戦う毎日に疲れ切っていて「私は別にいつ死んでも良い」と思っていましたから、可笑しくもない結果ですね。被害女性の気持ちがちゃんと分かって癒してくれるカウンセラーにもなかなか会えなかったため、アジアで女性として生きながら新しく経験するトラウマは過去の経験に積み重なり、益々うつな状態が酷くなる一方でした。

しかしオーストラリアでの日常を元に点数を出した場合、私の点数は20点、お嫁の点数も50点まで下がっていたのです。精神科で治療を受けたわけでも、何かの薬を飲んだわけではありません。ただしオーストラリアの小さい田舎の町で過ごし続けて3か月が経った頃から、ゆっくり寝れる日が続き始め、このテストを受けた時には毎日見ていた悪夢の頻度が月1程度に減っていました。それによって何かトラウマのトリガーになるようなことが起きるとしても日常への復帰が日々早くなり、悪夢を見た日も夢は夢として認知できるようになり、心臓がドキドキすることも、冷や汗をかくことも無くなりました。もっと時間の経っている今は悪夢を見ることがほとんどないので、寝ることも幸せに思えています。

毎日生きているだけで自分の身を守らなきゃいけないというプレッシャーや危険に晒されないこと―そういった環境的なリスクを取り除くだけでも人生がこんなに楽になるなんて。私の体を私が許可した人にしか触らせない権利、私が許可した人にしか見せない権利、家まで安全に帰る権利、公共施設を盗撮の心配なく気軽に利用する権利―この全てが当たり前にそろった社会に生きるということは、その全てのプレッシャーから逃れられるということは、想像を絶するほど楽で幸せな事なんだと、気づいたのです(男性として生まれたのなら誰もが努力なしで手に入れられた普通の日常だと思うと少し悲しいですけどね)。

反応性うつとはそういうものです。原因さえなければ苦しむこともありません。反応性うつ病になった原因は何か、しっかり向き合ってください。そしてその原因から出来るだけ離れてください。その原因は家族かも知れませんし、真っ赤な他人かも知れません。大事だと思っていた友達や恋人かもしれません。ひょっとしたら「こうでなきゃならない」という社会からの偏見かも知れません。そこで与えられた環境を乗り越えようとする必要はありません。逃げるのです。逃げることも大きな勇気が必要なことですし、逃げた先で改めて頑張ることも立派な努力ですから。

環境が自分を狂わせているのならば、ただただ耐えるよりは環境を変えてみるのも大事です。それは単に海外に移住することだけを指すわけではありません。今住んでいる所から少し遠くへ引っ越したり、トラウマの原因になる加害者と思い切って縁を切ったり、今の職場を辞めたり、とにかく原因になるものから遠ざかることを意味します。抗うつ剤を飲むとしても、腐っているゴミを取り除かない限り、心は腐っていく一方です。そのため、今自分を苦しませている人、または環境とのお別れが最優先にならなければなりません。そうしないと地獄のような不幸は終わらないからです。

もちろん現実的な問題―特に経済的な問題ですぐその場所 (人) から離れることはできないかも知れません。また、虐待者は被害者の心理を巧妙にコントロールしているため、虐待者から離れることが怖いと思うかも知れません。そこで私がお勧めするのは先ず「自分に非がない」ということを知ることです。そして虐待者のパターンを知ることです。加害者について研究されている本を読んだり、時には同じ生存者の経験談を聞くことも役に立ちます。最近はYoutubeでも色んな情報が気軽に手に入るので、専門的な心理知識も学べやすくなりました。一度虐待者の心理状況を把握して置くと、現状は変わらないとしても、貴方の心得が少しずつ変わっていきます。学ぶこと、知ることが貴方の人生を救う力になります。貴方の人生を救えるのは貴方しかいません。

私は多くの日韓の女性と同じく、20年以上反応性うつで病んでいたため、未だに後遺症が残っていて、これからも戦って行かなきゃいけない日が続くと思います。それでも前と比べればとても幸せな人生を生きていますし、将来も幸せに暮らせるという自信があります。「安全な日常」から来る幸せはとても大切で大きいものだと気づいたのです。

本当のことを言うと未だに自分が「欲しいモノ」は見つかっていません。長年に渡った父からの虐待により、何かへの愛着を注ぐことが出来なくなってしまったからです。しかしこのまま「誰かに奪われた人生」を生き続きたくはないので、昔の自分が好きだったものは何だったのか、記憶を辿りながら、少しずつ過去に欲しかったものを買い直してみたり、過去にやりたかったことに挑戦してみたりと、脳を騙す練習をしています。そうすると不思議なことに、当時の鮮やかな感情が戻ってきてるかのような気がしました。

本当の自分を取り戻すことを意識し、毎日ポジティブに生きるために心掛けることは決して簡単なことではありません。もちろんたまには疲れることもあります。でも、最も大事なのは「空虚で無力だった私」が「自分の人生を取り戻すための戦闘力を取り戻したこと」ではないでしょうか。

逃げ出した先に楽園は存在しないと?

いいえ、私には逃げ出した先が天国でした。

女性の皆さんがずっとずっと安全で幸せな「自分らしき人生」が送れますように。

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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