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韓国のSNSでさまざまなフェミニストたちの活動を見ていると、ときどき「女の敵は女」だと言う男性たちが作り上げた妄想話に、うっかり騙されそうになることがあります。韓国は6B4T運動(*注1)を生み出した国であると同時に、性平等に関するOECDの調査で毎回日本よりも一段階低い評価を記録するほど、悲惨な現実を抱えている国でもあります。そのため、女性たちの価値観がぶつかり合うのも無理はないでしょう。女性嫌悪をまるで息をするように行う男性たちとの恋愛や結婚、さまざまな犯罪を犯した男性芸人を消費する行為、脱コルセットをするか否かをめぐる議論など、現実で「平均」を生きる女性たちと、ネット上でようやく声を上げ始めたフェミニストたちのあいだでは、常にさまざまな対立が生まれざるを得ません。たとえ同じフェミニストであっても、「みんなの人権」を守るべきか、女性の人権を優先すべきかをめぐって、議論は絶えません。フェミニストたちがどれほど男性だけを非難したくても、自らその男性たちの前に立って盾になろうとする女性たちがいる限り、女性同士の葛藤は終わらないでしょう。

しかし、それでも「女の敵は女」ではないことは確かです。それを証明するかのような出来事が、つい最近韓国で起きました。それは、約20万人の登録者を持つユーチューバー、クァック・ヒョルス氏のMeToo動画から始まりました。去年、タクシーの運転手に強姦をされ、いまも治療を受けながら裁判を続けているという告白でした。私も同じ“生存女性”であったため、サムネイルを見ただけでトラウマがよみがえり、悪夢を見るほどでした。とても抑うつ的な気持ちにもなりました。結局、今でもその動画を最後まで見ることはできません。それでも、X(旧Twitter)を通じて大勢の女性たちが投稿したスクリーンショットを目にし、何が起きているのかは十分に理解しています。

「こいつの顔を見ろよ、レイプした男の損だ」
「俺、弁護士やってるけど、これ絶対に慰謝料目当ての冤罪だろ」
「〇〇なのに××××されたのか、笑」

などなど、男たちはコメント欄で人間として信じがたい言葉を次々と書き込んでいました。そして、それに怒りをあらわにする女性たちや、彼女を応援するためにサポート金を送る女性たちもいました。その中には、有名な芸人や、かつてフェミニストたちから批判を受けていた「コルセットを捨てられなかったインフルエンサー」の姿もありました。それはまさに、“女性という国”への男性からの侵略、そして「脱コルセットできない反フェミ女性」、「家父長制に屈してしまった既婚女性」、「6B4Tを訴える過激な女性」など──さまざまな形をとる女性たちによる抵抗と連帯だったのです。

同じ国で生まれ育ったとは思えないほど、人格の差を感じる人々が同じ空間に共存している──。そのような状況を、私は30年以上見続けてきた今もなお、どこか奇妙に感じています。同じ国籍を持ち、同じ言語を話し、同じ義務教育を受けてきた私たちのあいだに、違いがあるとすれば──それは「性別」。ただ、それだけです。なのに、それだけでこんなにも大きな差が生まれてしまうのです。

今、クァック氏のMeToo動画はSNSの力で大きく話題になり、ニュースや記事にまでなりましたが、加害者については何一つ知られた事がありません。タクシードライバーをやっていると言う事実、それだけです。韓国は法律上人権侵害に当たると言い、犯罪者の顔を公開することないし、犯罪者の個人情報をばらす事すら「事実摘示名誉棄損罪」に問われ、被害者にとても不利になっているからです。そのため、「お前のせいでタクシー運転手の男たちの生計が困難になる」といった、彼女に対する度を越えた二次加害が続くことも避けられない状況です。

さらに、加害者はむしろこの裁判を「国民裁判」に回付したいと要請したらしいです。国民裁判とは、国民の意見を法律に反映させることを目的として設けられたシステムで、ランダムに選ばれた20歳以上の男女が裁判に出席し、罪の有無を判断する裁判です。しかし、前述の通り、韓国の男性たちのジェンダー感受性は絶望的です。そのため、国民裁判に参加する人の過半数が男性となる場合、その裁判は明らかに女性被害者に不利に傾きます。一般裁判で性犯罪の無罪率が3.7%だったのに対し、国民裁判では47.8%と、ほぼ半数が無罪判決を受けています。証拠が明白であったとしても、性犯罪に寛大な陪審員たちは「すぐ警察を呼ばなかったから」「クラブで一緒に遊んだから」「被害者が加害者に普段から余地を与えていた(優しくしていた)から」といった理由で無罪判決を下します。幼い被害者が事件を正確に覚えていなかったという理由で無罪になることもありました。こうした状況こそが、性犯罪者たちが国民裁判を好む理由です。

もし裁判で無罪となった場合、ほとんどの男性加害者は被害者を「虚偽告訴罪」として訴え返します。そのため、多くの生存女性たちはすべてを諦め、身を守ることさえ放棄してしまいます。自分の被害を証明するために膨大なお金と時間、精神力を費やさなければならない彼女たちには、虚偽告訴をしていないことを証明する余裕など残されていません。加害者たちは韓国における男性の権力を十分に理解しており、それを悪用しています。韓国の知恵袋には、性犯罪を犯した後に刑を軽くしたり無罪にできる方法を共有する投稿も多く見られます。そしてそれに返答するのは弁護士や前科者の家族などです。ここまで犯罪を犯した男性たちが堂々と生活できるのは、とても異様な光景ではありませんか?

韓国では、未だに非同意性交罪が成立していません。正直なところ、「非同意性交罪」という言葉の意味すら十分に理解できません。相手の同意なしに相手の体に触れない──保育園児でも分かるような、当然で簡単なことを、法律で縛らなければ理解できないほど、男性たちは愚かなのでしょうか。
もしそうなら、なぜ彼らはこの世において権力を持ち、世界を動かす権利を与えられているのでしょうか。

「女の敵は女」という言葉は、私は信じません。男性たちが女性を同じ人間として扱うことを学ばない限り、女の敵は、昔から今に至るまで、そしてこれからも、男性なのです。

*6B4T運動(6B4T movement)
韓国発祥のオンライン上・若年女性を中心としたフェミニズム運動の名称
6B
非婚(結婚しない)
非出産(子どもを産まない)
非恋愛(男性との恋愛をしない)
非性交(男性との性行為をしない)
非消費(女性嫌悪的・性差別的と見なされる商品を買わない)
非助助(「結婚しない者が結婚しない者を助ける」という連帯)
4T
脱コルセット(“女性を締めつけるコルセット=美の規範”などを脱ぐ)
脱宗教(宗教的な枠・儀式・制度からの距離)
脱オタク(オタク文化・アイドル文化・ジェンダー的消費文化からの距離)
脱アイドル(アイドル文化/偶像としての女性像からの脱却)

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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