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LPC官能小説第7回「おずおずと入ってくる舌先に、女神を崇めるような躊躇いを感じる…」

鍬津ころ2016.11.22

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 去年のクリスマスは、別れたカレシがフレンチディナーをご馳走してくれた。
 だけど私、ワインに酔っぱらっちゃって、結果は散々。ま、それも別れた原因のひとつだったんだけど。

 だから今年は、ホテルのランチで女子会にしたの。
 3つ星ホテル最上階レストランのジビエコースを予約して、パーティードレスにメイクもヘアも華やかにキめた。女子同士だからって手抜きしたくないし、メンバーは言うなれば、全員ライバルでしょ。

 高い天井にきらめくシャンデリアが素敵。外人も少なくないギャルソンにかしずかれ、木枯らしの底に沈む街並を見下ろす気分は最高。
 本音を言えば、去年よりイケてるカレシの奢りだと、もっと完璧だったんだけど。

 コース途中のグラニテを食べ終わったら、ちょっとお腹が冷えちゃったみたい。
 失礼ながら、次のメインディッシュにそなえて、私は席を立った。

 お手洗いは、エレベーターホールの右手奥、だったはず。ふと目をやったエレベーターの扉が、そのとき、開いた。
 ピカピカに磨かれた靴先が、まず目に入った。
 横ラインの入ったパンツの上に、ナポレオンカラー風のお洒落な制服。特別仕立ての注文品のように、分厚い胸板をしなやかに包んでいる。肩章のゴールドが目立つ、落ち着いたオリーブグリーンが素敵。

 うっとりと目線を上げていった私は、彼の顔を見た瞬間、思わず息を呑んでいた。
 いかつく盛り上がった肩に支えられた太い首。制帽のバイザーの下から覗く、涼しい瞳。逞しさの中に繊細さも感じる顎先の、セクシーな髭……間違いない。
「……まさか、四条丸クン……」
 クリスマスの昼間、あの有名アスリートが、どうしてホテルのベルボーイの制服を着てるわけ!?

 四条丸駆は、口許にかすかな笑みを浮かべて私を見下ろした。
 その後ろでエレベーターのドアが閉まった。他のボックスに乗り込む人も、出て来る人もいなかった。
 レストランのBGMが低く流れてくる意外、空気を揺らすものもない。
 世界で二人きりになったような、不思議な空間。

 彼は、黙ったまま私に手を差し伸べた。
 真っ白い手袋は、たぶん特大サイズ。究竟なラガーマンのゴツい指を、貴公子みたいに優雅に見せている。
 ホテルの制服だとわかっていても、本物の王子様みたい。カッコイイなんて言葉じゃ足りない。雄々しくて、ゴージャス。
 私、熱に浮かされたように彼の手を取った。
 彼の腕が私の腰に回り、胸に引き寄せられる。
 これって……ダンス? 私達、躍ってる?

 現実感がなさすぎて、逆にまともなリアクションができなくなったみたい。
 私、彼のリードに身を預け、お姫様みたいな気分で身体を揺らす。
 肩やうなじを、チュッチュッと吸われる。くすぐったいけど、いい気持ち。
 顔を上げると、ちょっと潤んだような彼の目と目が合った。
「……すごく綺麗だよ。お姫様みたい……」
 胸が一杯、みたいな口調で言われて、パッと頬が火照った。
 私が感じてたのと、同じことを言ってくれた。
 高価なプレゼントはもちろん嬉しいけれど、世界レベルで一級の男性に、こんな直球の褒め言葉をもらうのが、こんなにシビれる体験だとは知らなかった。

 視界がぼやける。
 私、涙ぐんでる。でも、それだけじゃなかった。彼が背をかがめて、私に顔を近づけたの。
 唇が、重なった。
 蕩けるように優しい、甘いキス。
 おずおずと入ってくる舌先に、女神を崇めるような躊躇いを感じる。強引な愛撫も素敵だけど、大聖堂の天使の像の前で受け容れるような敬虔なキスって、素晴らしい。

 私達はもう躍っていない。身体が溶け合うようにぴったり身を寄せ、静かに深いキスを続けていた。
 触れられていないのに、花から蜜があふれるように、アソコから悦びがあふれるの。
 法悦、っていうのかしら。天上の神々から与えられるような、澄み通る快感。

 舌と唇からこぼれる濡れた音と、お互いの熱い吐息の中で、私は声もなく法悦の頂点に達していた……。

 エレベーターがまた開いた。
 今度は、中年の夫婦らしいカップルが出てきて、私の方を不審げに見ながらレストランに入っていく。

 お洒落してもご馳走食べても、どうせ独り身同士のクリスマス。妄想でもしてなきゃ、やってられないっつーの!
 私、心の中で八つ当たりしつつ、やさぐれた気分でレストルームへ向かった。

 鏡の中には、下目蓋がほんのり赤くなった私の顔。
 ゆるく巻いたハーフアップのヘアスタイルと、肩を出したシャンパンゴールドのドレス。メイクだって悪くない……と、思ったら。
 ルージュがすっかり落ちてしまってる!
 食事中だって気を遣ってたのに。

 肩に目をやってさらに驚いた。
 肩甲骨の上に、薄紅色の花びら?
 ううん、違う。これは……キスマーク!?
 あの天国のキスは、妄想じゃなかったってこと!?

 私、しばらく呆然としていた。それから、手早くメイクをなおした。
 クリスマスだもん、奇跡っぽいことが起こっても不思議じゃないでしょ。
 自分自身、一番優雅と思う歩き方で、レストランに戻っていった。
 最高のメインディッシュは、もう堪能しつくした気がしていたけれど。

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鍬津ころ

鍬津ころ(くわつ・ころ)

札幌出身、東京在住。山羊座のO型。アダルト系出版社、編集プロダクション勤務後、フリーの編集者&ライター。2011年『イケない女将修行~板前彼氏の指技vs官能小説家の温泉蜜筆』でネット配信小説デビュー。近著『ラブ・ループ』(徳間文庫)。馬、鹿、ジビエ大好き飲んだくれ系アラフォー女子。タバコの値上がりには500円までつきあう覚悟。 

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