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警察は正義の味方のはずだからと、ずっと思いこもうとしていた。でないと、惨めだから。

李信恵2016.10.18

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沖縄県で87歳の島袋文子さんが訴えられた。文子さんは辺野古メインゲート前抗議テントで座り込みを続けている、辺野古や高江の闘いのシンボルともいえる女性だ。今年5月に挑発的な街宣をテント前で行った反対派は、文子さんにしつこくカメラを向けた。そのため、文子さんは何度も制止するよう求め、手でカメラを払おうとしてそれが当たったという。この事件を聞いてすぐ、岡山で起こったある出来事を思い出した。私は傷害事件の被害者であるはずなのに、相被疑になった。それと同じだと思った。

今年の4月17日は、岡山でヘイトデモと街宣が行われるとのことなので、カウンターの友人たちと出向いた。全国から大集結したカウンターたちのおかげもあって、酷い街宣とデモは当日に行われはしたものの、被害を最小限に収めることが出来た。また、この日は警察がカウンター側だけではなく、交互に向きを変え並んでいたのも印象的だった。

しかし、集会などに参加し、懇親会を終えた夜になってから。帰宅しようと岡山駅に向かうと、駅構内で名古屋からわざわざ差別をするためにはるばる岡山に来た男女2人組とばったり遭遇。「朝鮮人がなんでまだここにいるんだ」と男、防犯ブザーを鳴らし、笑いながら「朝鮮人が暴れています、助けて」と叫ぶ女。友人が近くにいたからよかったけど、これがひとりだったらと後でぞっとした。

女は執拗にカメラを向け、顔の近くまで持って来た。ぶつかりそうで危ないので「止めて」と云ったけど撮られ続けた。レンズを覆い隠そうとしたら、「カメラに触った!」と、私の手を殴った。その後、警察が来たので事情聴取。手首が腫れ上がるぐらいの怪我だったのは、その日に警察でも撮影済み。なかなか腫れが引かないので19日に病院に行ったら、10日の加療が必要とのことだった。

その件につき、20日に岡山中央署に出向いたところ、傷害事件として被害届が受理された。しかし、実際に警察では、まるで自分が加害者のような扱いを受けた。身長や体重などを計られて、写真撮影、そして指紋は10指全部取られた。警察は怖いよね、おいらが持って行った動画を相手側の暴行の証拠にしようとしたから。「あなたが先に触った」「これを認めるのか」、入れ代わり立ち代わりたくさんの刑事が来て、おかしいよね。「何度も来てもらうのは大変なので、今回で終わりにしたいから」とか。

それでも、相手の方がずっとずっと悪いんだからと思って。もしも、そう云った取り調べを拒否して、今回の被害届が受理されない方が嫌だからと思って我慢した。それまでにも大阪ではヘイト街宣の取材中、喫茶店に入ってる所を見知らぬ男に盗撮されてネットにアップされた。「盗撮されている」と知人から連絡があり、そのことですぐさま警察に行っても「下着を撮られたわけじゃないから」と、「相談」としては受け付けてもらえたものの、事件化はしてもらえずに悔しい思いをしたから。けど、取り調べって云うのは屈辱的だ。

昔よく、「在日朝鮮人は、日本人と何かあった時には警察には味方してもらえない」「警察は在日や外国人は監視対象」って話をよく聞いた。それでも自分は、警察は正義の味方のはずだからと、ずっと思いこもうとしていた。でないと、惨めだから。差別される存在に、誰だってなりたくないよね。岡山中央署まで信頼してのこのこ出向いた自分が馬鹿みたいに思えて、すごく落ち込んだりもした。

その後に会った岡山のカウンターや、議員さんがこの話を聞いてびっくりしていた。まあ、後日連絡が検察からもあって、そのことも含め全部報告した。検察は「どっちもどっちにはしません。相手方をどうしたいですか?厳重に注意はします」と。私はいつもながら甘いかもしれないけど「ヘイトスピーチやデモに参加したり、差別をしないと約束し、反省してくれるならそれでいい」と伝えた。

女の方はその後も名古屋のヘイト街宣で、車からコールを行い、デマを垂れ流していたけど。いつか反省してくれたらな、とだけ思う。最後に、検察には「岡山で二度とヘイトスピーチが行われないように対策して欲しい」と伝えた。まあ、ひどい目には何度もあっているけど。ライターなので、全部これはネタやと思うことにしている。そう思わなきゃ、やってられないぜ。

2013年には大阪の鶴橋でヘイト街宣やデモが行われた。取材で向かった現場では、大手メディアの男性たちは簡単に取材や撮影が出来たけど、自分は何度も警察に「邪魔だ」と突き飛ばされた。あとでその話を、その現場にいたという女性記者にすると、「自分もそうです」と答えた。この国の、この社会の一番マッチョな部分は、権力に、警察に、如実に現れるんだなと思う。

10月のはじめ、沖縄に行った。会いたい沖縄の女性がいたこと、土日は高江での抗議行動はなかったけれど、高江で抗議行動をしていた男組のメンバーに会いたいとも思って、名護まではたどり着いた。名護では、知人が宿泊していたカヌチャリゾートに泊まったのだけど、家族連れや新婚旅行でにぎわう豪華な施設の敷地内を、5-6人の隊列で走り回る屈強な体つきの若い男性たちがいた。まあ、機動隊の人たちだとは思うけど、リゾート地には不釣り合いな、不思議な光景だなと思っていた。せっかく鍛えたその体で、彼らが守るものはいったい何なんだろう?と思いながら、その姿をしばらく眺めていた。

あらためて。87歳の女性が訴えられること、ほんま許せないよね。取り調べがあるということ自体、腹立たしいし悔しい。自分のオモニ(母親)と変わらない年代の女性でもあるし、そんな世代を最前線に立たせることが心苦しい。守らなきゃいけないものは、本当はそういう存在なんじゃないの?と思う。

また、大先輩の女性の闘う姿を見て、自分も改めて頑張らなきゃと思う。近いうちに、また沖縄へ向かう予定。家族はすごく心配しているし、先日に名護に行く前も少し不安はあった。けど、女性だからこそ見えることがあるはずだし、書く場所があって取材が出来るなら、それをしっかり伝えないと。

逮捕、されないようにしなきゃね。

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李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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