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「大琉球写真絵巻Part1~4」へ行って

李信恵2017.09.14

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9月7日から、沖縄に行ってきた。2件の反ヘイトスピーチの裁判を始める前から、毎年この時期には沖縄へと通っている。私が沖縄に行くとインターネット上でデマが流れ、「裁判のカンパを使い込んでいる。そのお金でステーキを食べた」などと書かれたりもした。が、ステーキは自腹で食べている。まあ、そんなことはどうでもいい。

今回沖縄に行ったのは、沖縄在住の写真家である石川真生(まお)オンニ(韓国語で姉さん、私は親しみを込めて年上の女性をそう呼ぶ)が、那覇市民ギャラリーで「大琉球写真絵巻Part1~4」と題した写真展を開催していたからだ。真生オンニは今年2月に3度目のがんを告知され、7月3日、12時間に及ぶ悪性腫瘍摘出等の大手術を行った。そして8月の初めに退院し、今回の写真展の開催となった。

会場ではとにかく真生オンニはパワフルで、10時の開場から19時の閉館まで、会場を訪れた人と写真を撮影したり、話し込んだり、連日14時からはギャラリートークを行う(最終日は120分ノンストップだったらしい…。)など、闘病中とは思えないほどだった。

会場内には、約90点の写真をプリントした長さ約120メートルの布が展示されていた。そのひとつひとつが、沖縄の歴史を再現したもので、まるで映画を見ているような気分にもなった。薩摩の侵攻、琉球処分、沖縄戦…。戦後になってからは米軍基地問題、辺野古の座り込み、オスプレイ墜落事故、東村高江で食卓を囲む家族、元米兵による殺人事件、米兵による強姦事件などさまざまなテーマがあった。

なかでも、自分が在日だからかチョゴリを着た女性が登場する写真がすごく気になった。それは、慰安婦問題と人類館事件をモチーフにした写真だった。

人類館事件とは、大阪で過去に起こった差別事件だ。1903年に大阪・天王寺で開かれた第5回内国勧業博覧会の「学術人類館」において、アイヌ・台湾の先住民族・琉球人・朝鮮人・中国人・インド・ジャワ・バルガリー(ベンガル)・トルコ・アフリカなど合計32名の人々が「展示」され、問題となった。

事件そのものはひどい差別なのだけれど、写真の中のマイノリティたちは笑顔で手を繋いでいる。何故かと真生オンニに尋ねたら、「(この写真を)撮影する瞬間に、手を繋いでもらおうって急に思った」と。繋がることが、差別に打ち勝つことってメッセージが伝わってくるようだ。どの写真も、心を揺さぶられた。見るのが辛いモチーフの写真もあった。でも、しっかりと見ないと。沖縄問題に関しては、本土に住む私はマジョリティでもある。マジョリティとして何が出来るかを突き付けられているんだなと思った。そして、多くの写真には沖縄で生きる人たちの笑顔とユーモア、それをみつめる真生オンニのまなざしというか、愛があふれていた。

それから、ちょうど沖縄に滞在していた時には東京でTwitter社への抗議行動が行われていた。それをネットで見て、すごく嬉しかった。私のTwitterにはここ数年、少ない日で数千件、多い日で2万件ぐらいの嫌がらせの通知が来ている。「文字を踏むなんて」と云う反応も多かったみたいだけれど、ずっと踏みにじられていたのは、私たちマイノリティだ。

また、沖縄にいたら自分とか在日の差別から遠くなるけど。これって本土にいる人間が沖縄の差別が見えないことと、似ていることなのかもなあって思ったりもした。踏みにじられているものは、大抵はマジョリティ側からは見えない。

あと、学校で「方言札」を子どもが首から下げられている写真もあった。朝鮮人はその昔、言葉を奪われた。学校で子どもたちも日本語を使わないと、この方言札のように罰を受けた。また、関東大震災の時には多くの朝鮮人が虐殺されたが、「十円五十五銭」がきちんと話せるか否かが朝鮮人を判別する際に問われた。言えなければ暴行、殺害された。「同化」を美徳とする差別の歴史は、根っこで繋がっている。

そして、大阪に帰宅して数日後、「チビチリガマ」が荒らされたというニュースが飛び込んできた。「チビチリガマ」とは今から72年前の4月1日、米軍が沖縄本島に上陸した後、読谷村の住民らが逃げ込んだ自然壕のこと。4月2日、米軍の投降に応じずに83人が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた。半数が未成年だった。

ガマに残されていた遺物も割られ、慰霊の折り鶴が引きちぎられ、ガマの入り口にある「世代を結ぶ平和の像」の石垣が破壊されていたという。

この事件の約2週間前、東京都の小池知事は、関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を慰霊する9月1日の式典への追悼文送付を見送ると明らかにした。これは、朝鮮人大虐殺の歴史の否定につながるものとして、多くの反発の声が上がった。

マイノリティの過去の悲劇をなかったことにしようとする、これら2つの事件はすごく似ている。戦争や差別の過去を見詰めることは、過ちを二度と繰り返さないこと、平和へ向かう第一歩だと思うが、今の日本社会、沖縄はまるでそこから逆行しているかのようだ。

真生オンニの写真展は、来年2月に埼玉に巡回予定だという。那覇の写真展では、来場者から「この写真を、本土の人にこそ見てほしい」っていう声を何度も聞いた。ほんとうにそうだ。そして沖縄出身者の多いこの大阪でも、写真展を開催できればと強く思う。真生オンニや沖縄のパワーがもらえる写真展、絶対開催するで!


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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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