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沖縄とファミレスと日本軍「慰安婦」

李信恵2018.09.11

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今年の夏も沖縄に行ってきた。ここ数年、毎年のように1、2度は沖縄を訪れる。半分が遊びと観光で、残りは仕事というか、考えること、知りたいことがあるからだ。去年と今年の夏の終わりは、那覇市内で開催されている写真家の石川真生オンニ(韓国語でお姉さん)の写真展『大琉球写真絵巻』のお手伝いもかねて行って来た。午前中は那覇市内のビーチでぼんやりしていたせいもあって、真っ黒に日焼けし、今年3度目の脱皮もしてきた。焼けすぎや。

この写真展は、薩摩の琉球侵攻から米軍基地問題までの沖縄の歴史上の場面を真生オンニがその友人たちに再現してもらい、撮影した写真(実際の写真も)が並ぶ。昨年のpart4までで120メートル、今年は新たにpart5が加わった。写真だけでも圧倒されるが、毎日午後2時から行われた真生オンニのギャラリートークもすごかった。連日、写真の解説を含めて1時間30分以上。その写真を撮影した背景や意図、エピソードが笑いを交えて語られる。

新作では基地問題や米軍ヘリの不時着炎上事故や、部品落下をテーマにした写真も多数あった。辺野古の埋め立ての問題に関しても。その中で、私が一番心に残った写真は日本軍「慰安婦」にされた女性の写真だった。前回の写真展でも、慰安婦をモチーフにしたものがあったが、今回はより直接的で生々しかった。胸元がはだけながら抵抗する女性、その背後から覆いかぶさる軍人。ベッドの衝立の陰からズボンを下ろしながらその光景をのぞき込む、順番を待つ軍人。部屋の隅にあるゴミ箱からは、コンドームがあふれている。

すごく酷い、残酷な場面を描いていた写真なんだけど。ある日、写真展へ向かう車内でその写真の話をしていると真生オンニが云った。「あの写真のコンドームがピンク色でしょ。当時のコンドームはこんな色じゃなかった。昔、古いガマ(壕)に入った時にコンドームが落ちていたんだけど、(輪)ゴムのような色だったよ」その言葉がすごくリアルだった。数年前、東京にある「アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)」に行ったときにあった、「突撃一番」を思い出した。

もしも男性が、この写真を撮影したなら、自分は直視できなかったかも知れないなと思った。被写体になり、慰安婦を演じた女性も、真生オンニが写すから演じられたんだろうなと思った。被写体になった彼女は、撮影前に恋人にモデルになることを話したという。その際に「覚悟してね」と云ったら、恋人は「僕は大丈夫だけど、君こそ本当に覚悟はできてるの?」と問い返したという。その話も、すごく胸に刺さった。

この写真展に行く前に、Twitterで友人が1カ月にわたって炎上していた。2歳児の子どもがファミリーレストランでぐずった時に、それを騒音として扱われたこと。子どもの声は騒音ではないというつぶやきに関してのことだ。その件に関して、私は「ずっと昔、戦時中に沖縄の防空壕で赤ちゃんが泣いてたら米軍に見つかるからって殺された話を聞いた。子どもの声を騒音と取るかって、社会の成熟度かも。赤ちゃんが泣いて、子どもが騒げる社会が良いなと思う。他人の子どもがうるさかったら、あやすなり、優しくたしなめたらいいやん。大人なんだから」とつぶやいた。
すると、そのつぶやきに対して「うちの前の家に、朝から夜まで騒ぎまくる子ども達がいる。体調が悪い時はもう勘弁してくれよって腹も立つけど、あの子達が騒いで、家でご飯食べてお風呂入って寝て、次の日また騒げる世の中でないとアカンと思う。戦争なんて以ての外」と云う返事があった。本当にそうだと思った。

夏場、いろいろ忙しくて、この話についても別の機会に触れようと思いながら、その機会が伸びてしまった。

けれど、沖縄に来てから。写真展に展示されているこれまでの写真を見ていたら、part2のところにある写真で目が止まった。その写真の解説には「1965年6月、沖縄戦。住民とともにガマ(壕)に隠れていた日本兵に『子どもの泣き声がうるさい。米軍に見つかったらどうする。出て行け!』と、ガマから追い出される一家」とあった。Twitterの私のつぶやきについて「過去の戦時中の極限状態と、ファミレスでの一件は別物」と云う声もあったが、この再現写真と、現代が重なって見えた。

この問題に関して、子育て中、またその経験がある女性からの苦言、例えば「自分だったら子どもがうるさくしたらファミレスから出て行く(った)」も多く見られた。それが、悲しかったというかやるせなかった。お盆の合間の、さほど混んでない新幹線で親子連れにいっぱい会ったけど、子どもが騒ぐたび、ベビーカーに遭遇するたび、何度も母親から「すいません」と云われた(父親はそんなことはほぼ云わない)。この社会では、子どもを連れていると謝ることばかりなんだろうなと思う。この一件があったせいか、今まで以上に声を掛けてみたり、全力で笑顔をふりまいておいた。一緒にいた友人もあやしていたし、そういう社会の方がいいのになと思う。

話は日本軍「慰安婦」の話に戻るが、自分はこの問題についてもっと知りたいし、考えて行きたいと思っている。沖縄に行く理由のひとつに、そのこともある。石川真生オンニの写真展に行って、ちゃんとこの問題を伝える写真があった。写真を見ること、考えることはしんどいけど、今を生きる自分ができることは何だろうといつも思う。

そしてつい先日、9月8日に『白い花を隠す』と云う演劇を観に行った。2000年に開催された「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」(民衆法廷)を扱った報道を巡って、2001年に実際に起こったNHK番組改ざん問題を題材にしたものだった。政治家による圧力を受けて改変された番組、内部告発をする人、両論併記をすれば責任を負わずに済むと笑う人。沈黙を破った女性たちの声を、自分たちが封じ込めてしまうことになる、告発を無効にしたくないと思いながらもずっと沈黙を強いられる人。自分もまたどこかで見たことのある場面が、舞台で演じられていた。(この『白い花を隠す』と云う戯曲を書いたのは、劇作家の石原燃さんで、こちらもまた女性)

また、劇中で「ママのことが好き?」って言葉が何度か出てきた。Twitterでよくある「 あなたは日本が好きですか?」と云う質問みたいだった。だいたいこの質問の後には、「日本に文句があるなら愛する祖国へお帰りなさい」、と続くのがお約束になっている。勝手に「ネトウヨしぐさ」と名付けているが、私は「日本が好き」もしくは「日本が嫌い」と答える代わりに、「お前のような奴とお前みたいな奴を育てたこの社会が嫌い」と返すことにしている。誰かを、何かを大切に思っていても、好きでも嫌いでも、愛していたとしても。いちいち確認させられたり強制的に何かを云わされたりするが嫌なだけのだ。

そして、この劇で「心の中の法廷」と云う言葉に出会えたことも良かった。ここ一ヶ月で起こったこと、体験したことをまとめながら、戦時中と比べて、NHK番組改ざん問題が発生した17年前と比べて。今を生きる私たちはちゃんと自分の意見を云うこと、声を上げることが出来ているんだろうか?誰かの顔色をうかがって、こう云えば無難だからとあいまいな言葉に逃げてないだろうか。そして、沈黙を強いる側にも、強いられる側にもなってないだろうか。

真生オンニはギャラリートークの中で、辺野古の問題についての写真を解説しながら「座り込みに行くことも正しいし、行けなくても自分なりのやり方で闘うことも正しい。活動すること、どれが一番正しいかとは比べられない。私は写真を撮るというやり方で、沖縄のさまざまな問題と闘う」と話していた。私の闘い方は何だろう、とりあえずいろんな話を聞きながら、その声を誰かに届けることから始めたいと思った。自分の心の中では、まだ夏は続いている。

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「#黙らない女たち」出版記念イベントのお知らせです!

「#黙らない女たち」出版記念イベント
https://www.facebook.com/events/1192409194231368/
日時:2018年10月27日(土曜)
18:00 開場/19:00 開演

会場:ロフトプラスワンWEST
入場料:前売1,500円・当日2,000円/学生 1,000円/身障者 1,000円
(飲食代別)※要1オーダー\500以上

<キッズスペース有り:小学生以下無料>
フード出店:studio FATE/豚まん王子
会場では「#黙らない女たち」の販売もあります!

#黙らない女たち<かもがわ出版>出版記念!
黙らへんのは本だけやないで、リアルもやで!
5年に渡るヘイトスピーチとの闘い、そしてこだわって勝ち取った画期的な判決「複合差別認定」

「何故私が・・・」李信恵さんに襲いかかるヘイトスピーチの嵐。それに毅然と立ち向かうべく提訴に踏み切る。しかしそれからも苦闘は続いた・・・。

本イベントでは、李さん、上瀧さんが本には書き切れなかった裁判の表も裏も語り尽くす!
この本、そしてこのイベントが、差別に苦しむ全ての人にとっての支えとなることを願って。

もちろんお楽しみも盛り沢山!シークレットコーナーもフードも全てこだわり抜いたセレクト。

楽しく飲んで笑って、知って考えて時にほろっときて、
そして叫ぼう「差別はあかん!」

※イベントの詳細は決まり次第随時お知らせします!
※チケット販売については、ロフトプラスワンWESTのHPをご覧ください。9/5発売開始です。
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/98483

■著書紹介
「#黙らない女たち」
インターネット上のヘイトスピーチ・複合差別と裁判で闘う
著者:李 信恵・上瀧 浩子
出版社:かもがわ出版
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ta/0969.html

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李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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