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夫婦茶碗の色

中沢あき2018.02.09

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ときどき日本の知人から、ご夫婦でどうぞ、といただくものがある。箸のセットだとか、ぐい飲みだとか。
たとえば夫婦箸。定番の青と赤の組み合せなので、なんとなく我が家では青を夫の前に置き、私が赤を使っている。貰いものではないが、我が家には同じ柄で、ピンクと青の色違いの茶碗が2組ある。これも以前は、青を夫の前に置き、私はピンクを使っていたが、あるとき夫が、僕もピンクがいい、と言い出した。まあ数はあるので別にいいのだが、彼いわく、ピンクの方があったかそうな色だからそっちがいい、のだそうだ。
以来、二人とも同じ色の茶碗を使っている。たしかに男だって好きな色は人ぞれぞれあるしな、と納得したが、そういえばなんで、男は青で、女は赤とかピンクなんだろう?

先日聴いたラジオ番組でこんな話題があった。子供のおもちゃ市場では、ジェンダーマーケティングなる言葉があるのだという。女児向けにはピンク系、男児向けにはブルー系と、色分けをしたおもちゃを作ることで、二倍の売上げを狙うのだそうだ。
たとえば女児と男児の子供がいる家庭では、娘に買ったピンク色の自転車が既にあるのだけど、下の弟にはやっぱり「男の子らしい」ブルーの自転車を買ってあげたい、となると、親は二台買うことになり、消費が伸びる、というわけだ。とはいえ、これは子供向けに限らない。その後もやっぱり、女性向け、男性向けと、カミソリからボールペンに至るまで、このジェンダーの差は大人になっても続くという。

ラジオ番組では、フェミニズムの研究者たちがいかにそのデザインが社会に影響を与えているかを語る一方で、心理学者や人類学者の統計では、大方、生後数週間ですでに男の子は動き回る物体、たとえば車などの機械的なものにより興味を持ち始め、女の子は目の前の人やその人の顔立ち、つまり外見ということにより興味を持つという違いが先天的にある、という二極化した議論を紹介していたのだが、両者が口を揃えるのは、いずれにしても、個人の嗜好で社会的立場が限定されたり、男女の間で差別があってはならない、ということではあった。
上記の心理学者も統計結果をキッパリと話しながらも、でも現代の文化に合わせて人間は後天的に変わることはできるんだから、とも。それにしても、男の子がピンクのぬいぐるみを幼稚園に持っていったら、クラスの半分は彼のことをいじめるでしょうね、なんて、ドイツでもそうなんだなあ。

日本に比べてドイツはこうした個人の立場については大方、寛容だけれども、たしかに町で見かける子供向けのおもちゃや文房具や服は、女児用はピンクだらけ。ラジオ番組でも指摘されていたが、流行はなんといってもアナ雪のキャラですよ。あんなにピンク漬けにされたら、それはそうなっていくよなあ。と思っていたら、長ーく髪を伸ばして愛らしい顔立ちの友人の5歳の娘は、私はお姫様じゃないの!ヒーローになるの!だそうだ。お、いいぞー。

以前日本人とドイツ人の友人夫婦を招いたとき、食卓に赤と青の箸置きをそれぞれ適当に並べておいた。すると彼は赤の箸置きが置いてある方に座ったのだが、彼女は赤は私、とすっと箸置きをすり替えた。すると彼は、ええ、僕も赤がいいよー、と言う。すると彼女は、私も赤の方がいいし、第一赤いのは女性用なの!とピシャリと言うのを聞いて笑ったのだが、やっぱりそういう潜在する文化意識の違いってあるんだなあと自分たちを顧みた。刷り込みってこわい。

私自身は子供の頃から青が好きだったので、服にしても何にしても、選ぶなら青、だった。だから今でも青の箸や茶碗を使うことに抵抗はないし、どっちでもいいのだが、夫婦もので一つ困ることがある。それは、夫婦ものには大きさの違うものがあること。箸とか茶碗とか、片方が明らかに大きいサイズなのだ。我が家の場合、夫の手は私の1.5倍はありそうなデカい手なので、箸はまあいい。でも茶碗は困る。だって、私、夫と変わらないくらい食べるんだから。

ちなみにもっと悔しい夫婦もの。数年前、それは素敵なぐい飲みをいただいた。どこぞの伝統工芸品で、錫でできたモダンな形のぐい飲み。なのに大変惜しいことに、大きさが違う。我が家は私も夫と同じだけ(たまにはそれ以上)飲む。だから同じサイズじゃないと、美味しいお酒が公平に飲めないの。
しかたないので、小さい方のぐい飲みに注いだ酒を大きい方へと移し、公平になるように分け注いでと、とーっても面倒なことをしているんである。え?ケチですか?でもね、海外在住の私にとってはこのぐい飲みを使って飲む日本酒は貴重品なのですよ。ま、私が大きい方を使うという手もあるが、そうすると夫がズルいと言い出すので、こうするしかない。というわけで、残念なことに、この素敵なぐい飲みを使う機会は減ってしまった…。

メーカーさん、女性だって同じだけお酒を飲むんですよ。夫婦だからってサイズを違えるなんて、古くさいことはやめてください。ご飯だって、小食の男もいれば大食いの女もいるんです。
よそう量はそれぞれ自分で決めればよいのです。夫婦ものは素敵だけど、サイズは同じ、色ももっとバラエティがあっていいよね、と思うのであった。

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© Aki Nakazawa
今週からこちらはカーニバル。スーパーに並ぶカーニバル用の衣装にも、やっぱり男児向け、女児向けってあるんですね。これは消防士のセット。写真例に写るのも男の子。女児用で多いのは、ピンクのお姫様ドレスとかかな。もっとも大人たちは、男女構わず、動物の着ぐるみを来ていたりしますが…。

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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