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私はアンティル vol.14 フェミニズムが役に立つとき

アンティル2005.06.29

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クレジット会社からは強制退会を言い渡され、国からは預金を差し押さえされた私は、近頃社会から見張られている気がしてしょうがない。

銀行の窓口でやり取りしているときも、係りの人がPCに何を打っているのか気が気じゃないのだ。クレームを言った時などは特にハラハラもんだ。『この人ちょっとしたこと(本人にとってはちょっとではないのだが)で文句をいうなんて、危険人物かも、チェックしておかなくちゃ、カチャカチャカチャ(PCに入力する音)』なんてチェックされているんじゃないかと私はPCの画面を覗き込んでしまう。私がもめていない唯一で最後の金融機関になるかもしれない都市銀行A。もしここで問題を起こしたら、もう私はお金に関する機関が使えなくなる。そんな思いが私を必要以上に愛想がいいクレーマーにさせる。AだけはAとだけは仲良くしなけらば・・・気持ちをグッと抑えて笑顔笑顔。

しかし先日私はやってしまった。
怒り大爆発だ。

その日私はキャッシュカードの再発行手続きのために、銀行に行った。電話でも済ませる事が出来たのだが、なんとなく電話する気になれず、私はたまたま通りかかった銀行の 支店で用を済ますことにした。

私「紛失の手続きは電話で終わっています。再発行をお願いします。」
私は20代中盤の女の行員に用件を伝えた。しかしその行員が私に手渡したものは、紛失届けだった。
私「あの、この手続きはもう終わっていてカードの再発行がしたいんですけど」
行員「わかってます。でもこれも書いてください。」

説明する気はもうとうないとでも言うように、行員は書類を押し出した。
私はムッとしながらも、『この人は几帳面な人で自分で見たモノしか信じない人なんだ笑顔笑顔』と怒りを抑え手続きを進めることにした。名前に住所に電話番号、はいハンコ。これでよし。行員は書類を見ながらPCに何かを打ち込み始めた。そして今度はさらに耳を疑いたくなるようなことを言い出したのだ。

行員「再発行のための書類をご自宅に送りますので記入して返送して下さい。」

意味がわからない。私はなぜここに来たの? 私は誰?
唖然としている私に行員は言った。

担当者「契約に変更があったのでしょうがないんですよ。」
私「変更って私の?私は何も変更してませんよ?!」
担当者「さっき書いてもらった電話番号と契約当初の番号が違っていたので変更届けを出しました。」
『出したって・・・・』

確かに番号は違っていた。昔使っていた番号で登録していたことをうっかり忘れて違う番号を書いてしまったのだ。しかし、しかし・・・!!! 私の顔はもはや笑顔とはかけ離れた鬼の形相となっていた。

私「番号が違うなら言っくれればいいじゃない。違うから手続きが出来ないというのならわかるよ。でも私の契約を何の断りもな変更するなんてちょっとひどくないですか? 変更を取り消して再発行の手続きをここで出来るようにしてください。」

しかし担当者は黙ったまま答えない。そしてプイッと席を立ったかと思うと、なにやら書類を持ってきてPCの前でまた何やら打ち込み始めたのだ。それから5分後、今度は上司の男と怪訝な顔で話し始めた。

私「ちょっとそこの2人。何やってるんですか? 待たせるんだったら今どういう状態なのか説明くらいしたらどうなの?!」

私の声に驚いて、まわりの人が一斉にこっちを見ている。まるで銀行強盗が「金をよこせ」と言った時のようだった。パテーション越しに沢山の人がこちらを恐る恐るのぞき込んでいる。

上司の男「性別の所が空欄になっているんです。変更を解くための変更をするには全ての記入欄が記されていないといけないんです。ここで記入を加えるとまた変更ということになり・・・・・」
私「私は性別を書かないという選択をした上で御社と契約したんです。そちらのミスで必要となった手続きのためになぜ私が本意ではない性別を書かなければいけないのか理解できません。」

男は頭を下げながらも、システム上しょうがないと私に性別の記入を進めた。

「システムを私に押しつけられても困る。なんで私があなたの所のシステムの犠牲にならなきゃいけないの! どうなっていようと私には何の関係もない! そっちのミスなんだからどうにかしてくれ」

私はとうとう怒りを爆発させてしまった。
しかし私が怒れば怒るほど、「性別くらい書けばいいじゃん。何をそんなに拘っているの?」と冷めた目で行員は私のことを眺めるようになっていった。。
男「あの~何か不都合でもあるんでしょうか~」
私はこれまでにもこのような体験を幾度かしてきた。悔しい思いをしたとき、怒りがおさまらない時、私は「聞いてよ!さっきさぁ・・・」と誰かに話しをしてきた。その度私は「大変なのね。FTMって」「まあまあ落ち着いてよ」と、なだめられ、同情された。最終的には結局私が特別な生き方をしているからこういう目に遭うんだ(ションボリ)”という結末になっていくのだ。だから私は次第に怒りの理由を周りに説明しなくなっていった。

私は10年ほど前、男の部下Sの教育係を1年間勤めることになった。私はこの部下に仕事を教えるたびむかついていた。流行にめざとく教養をさりげなく匂わすインテリなおしゃれさんS。“何を言われても冷静に的確に判断する僕。だって僕は男だもん!” 私はそんなSを叩きつぶしたくなる欲求を抑えられなかった。敵じゃない、一緒に仕事をしていく仲間なんだ。そう心に言い聞かせても気が付くと私はSを潰そうとしていた。なぜだろう。私はSの根拠のない自信、そこから溢れ出す余裕にムカついていたのだと思う。

自信を誇示するザ・男ならここまでむかつかなかったのかもしれない。しかしSは自信を振りまくというより、漂わせる男だったのだ。そのさり気なさが余計に私の怒りをかりたてたのだ。結局私はSを2年間いじめ抜いてしまった。その8年後、Sは出世して独立した。興味本位でSのHPを見てみると、事細かに書かれたSの経歴の中にその2年間だけポッカリと抜けていた。大きな仕事をした月日だったのに。私はSのことを思い出すたび胸が痛み、私はなんて性格が悪いんだろうと自己嫌悪して落ち込んだ。しかし今は違う。

2年前私はフェミの友人と出会い、その人を通し、フェミニズムを知った。そうしたら、私がSに腹がたったのか、私の性格が悪いんじゃなかったんだということがわかったのだ。フェミニズムは私を罪悪感から開放してくれた。

銀行Aとの争いの最中。私は怒りを抑えられずフェミの友人に事の成り行きを電話で話し、愚痴をこぼしていた。性別を書かないことにこだわる私を友人は諫めもせず、慰めもせず、説明も求めず、私の怒りの矛先へ自らの怒りの視線を飛ばし、どう対処すべきか一緒に考えてくれた。性別記載は免れたけど、結局再発行できず、私はクレージーな客になってしまった。しかし私は今回のことでわかったことがある、フェミの友人と私。フェミニズムと私。

私はフェミニズムのことをよく知らない。フェミの歴史もドヴォーキン(と書いて、フェミ友に聞いたら、ドォーキンのことか、と言われた)にも熱くなれないけど、私はどうやらフェミニズムを自分のために使っているようだ。私から見える社会、私が感じる違和感。これまでも私が体の中でもやもや渦巻いていたものが、言葉という形となって私の所に帰ってきた。さてその上で私はどうするのか。社会に見張られているようでハラハラドキドキしている私は、今フェミの友人といる時間が好きでたまらない。

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アンティル(あんてぃる)

ラブローター命のFTM。
数年前「性同一性障害」のことを新聞で読み、「私って、コレかも」と思い、新聞を手に埼玉医大に行くが、「ジェンダー」も「FTM」という言葉も知らず、医者に「もっと勉強してきなさい」と追い返される。「自分のことなのに・・・どうして勉強しなくちゃいけないの?」とモヤモヤした気持ちを抱えながら、FTMのことを勉強。 二丁目は大好きだったが、「女らしくない」自分の居場所はレズビアン仲間たちの中にもないように感じていた。「性同一性障害」と自認し、子宮摘出手術&ホルモン治療を受ける。
エッセーは「これって本当にあったこと?」 とよく聞かれますが、全て・・・実話です!。2005年~ぶんか社の「本当にあった笑える話 ピンキー」で、マンガ家坂井恵理さんがマンガ化! 

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